離婚・婚姻の専門解説婚姻の法文解説
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2018年3月7日
婚姻の法文解説
婚約
(1)婚約の成立 婚約は、男女間に将来結婚しようという合意があれば、成立します。事実上の夫婦共同生活の存在を必要としない点で、内縁と区別されます。 結納や婚約指輪の交換などの儀式は、当事者間の婚姻の意思を、外形的に示すものとし…
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2018年2月28日
婚姻の法文解説
内縁の特別法上の判例
内縁が、特別法上ではどのように扱われているか、各種判例を検討しましょう。 死亡退職金の支給などを定めた学校法人の規定に関して、死亡した職員の内縁の妻に、受給権を認めています(最高裁判所判決昭和60年)。 一方、恩給法の遺族扶助…
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2018年2月27日
婚姻の法文解説
内縁配偶者死亡の損害賠償請求
内縁の配偶者が事故で死亡した場合、生存内縁配偶者の、損害賠償請求が問題になります。各種判例を、ご紹介いたします。 内縁の夫が事故で死亡した場合、生存している内縁の妻は、扶養利益の侵害として、財産的損害の賠償を請求できます(大阪地方裁…
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2018年2月26日
婚姻の法文解説
内縁配偶者死亡の不動産承継
また、内縁の夫婦が、その共有する不動産を、居住または共同事業のために、共同で使用していたときは、次のように判示しています。 すなわち、特段の事情の無い限り、両者の間において、その一方が死亡した後は、他方が、右不動産を、単独で使用する…
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2018年2月25日
婚姻の法文解説
内縁の妻の財産取得
内縁配偶者には、配偶者相続権が認められていません。その結果、内縁の夫が、自己を被保険者とする生命保険契約をするにあたり、保険金受取人を「相続人」としていた場合には、内縁の妻は、これに当たりませんから、生命保険金を受け取ることができません(…
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2018年2月24日
婚姻の法文解説
内縁の子
内縁夫婦の子は、婚外子(嫡出でない子)となります。判例は、内縁成立から200日後、解消から300日以内に出生した子について、第772条を類推適用します(内縁の夫の子、との推定)。 しかしながら、その推定は、裁判認知などで、内縁の夫が…
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2018年2月23日
婚姻の法文解説
婚姻法の内縁への類推適用
内縁には、夫婦共同生活の実体が存在することより、共同生活にかかわる婚姻法の種々の規定が、類推適用されます。次のような規定が、該当します。 同居協力扶助義務(第752条)婚姻費用分担請求権(第760条)日常家事債務の連帯責任(第761…
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2018年2月22日
婚姻の法文解説
近親婚違反の内縁
婚姻適齢、未成年者の場合の父母の同意、再婚禁止期間に関する規定に違反した場合でも、内縁の成立は、認められています。 近親婚違反については、遺族年金の受給権に関して、被保険者と直系姻族の関係にある者が、被保険者と内縁関係にあったとして…
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2018年2月21日
婚姻の法文解説
内縁の成立
内縁とは、婚姻の意思を持って夫婦共同生活を営み、社会的にも夫婦として認められているにもかかわらず、婚姻の届出をしていない夫婦関係です。 法律上は、夫婦として認められない事実上の夫婦関係をいいますから、内縁が成立するためには、婚姻の意…
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2018年2月13日
婚姻の法文解説
重婚的内縁の妻の年金受給権
年金・死亡退職金関係の立法においても、重婚的内縁の妻に受給権が認められる場合が、多々あります。 地方公務員の死亡退職金(最高裁判所判決昭和58年)厚生年金保険の遺族年金(東京地方裁判所判決昭和63年)私学教職員共済法の遺族共済年金(…
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2018年2月12日
婚姻の法文解説
重婚的内縁の夫死亡の損害賠償
重婚的内縁の夫が、事故死をした場合の損害賠償が、内縁の妻に認められるかは、客観的な法律婚の破綻が、基準になることが多いようです。 内縁の妻が、当初相手方に法律上の妻がいることを知らなかったが、当該内縁の成立によって夫が帰郷しなくなり…
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2018年2月11日
婚姻の法文解説
重婚的内縁の贈与・遺贈
重婚的内縁の場合も、当該関係が内縁と認定されれば、法的保護に値する関係ですから、内縁当事者間でなされた贈与・遺贈は、公序良俗に反さず有効となります(東京地方裁判所判例昭和41年)。 他方、贈与・遺贈の目的が、受贈者・受遺者の将来の生…
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2018年2月10日
婚姻の法文解説
重婚的内縁の婚姻費用分担・不当破棄
重婚的内縁存続中の生活費に関して、法律上の妻が別居中の夫に対して、婚姻費用分担請求をした場合に、夫は、同居する事実上の妻の生活費を、優先的に留保することができない、とする審判例が多いようです。 高等裁判所段階の判断でも、次のようなの…
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2018年2月9日
婚姻の法文解説
重婚的内縁の法的保護
重婚的内縁とは、内縁当事者の一方または双方に、法律上の配偶者のいる内縁関係です。内縁である以上、夫婦共同生活としての実体が不可欠です。その論理的な帰結として、法律上の夫婦関係は破綻し、形骸化していることになります。 なお、現実には、…
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2018年2月3日
婚姻の法文解説
婚姻適齢
民法第731条男は、18歳に、女は、16歳にならなければ、婚姻をすることができない 本条は、精神的、肉体的に未熟な婚姻を阻止し、早すぎる婚姻から生じる弊害を防止するために、最低年齢を定めたものです。旧法では、男性は17歳、女性は15…
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2018年1月27日
婚姻の法文解説
重婚の禁止
民法第732条配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない 本条は、同一人物に同時に、法的婚姻が重なってはならないという、一夫一婦制の宣言です。この場合の婚姻とは、婚姻届を出した法律上の婚姻のみをいいます。 事実上の婚姻関…
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2018年1月19日
婚姻の法文解説
再婚禁止期間
民法第733条1.女は、前婚の解消又は取消しの日から、6ヶ月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。2.女が、前婚の解消又は取消しの前から、懐胎していた場合には、その出産の日から、前項の規定を適用しない 本条は、女性に再婚…
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2018年1月13日
婚姻の法文解説
養子と養方傍系血族の婚姻
自然血族の三親等内の傍系血族、すなわち兄弟姉妹間、おじおば・おいめい間の婚姻は、禁止されます。兄弟姉妹の場合、全血であると半血であるとを、問いません。 養子と養方の傍系血族との間の婚姻は、禁止されていません。すなわち、養子と、養親の…
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2018年1月12日
婚姻の法文解説
直系血族間の婚姻禁止
民法第734条1.直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない2.第817条の9の規定により、親族関係が終了した後も、前項と同様とする 一定の近親間の婚姻を…
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2018年1月6日
婚姻の法文解説
直系姻族間の婚姻の禁止
民法第735条直系姻族の間では、婚姻をすることができない。第728条又は第817条の9の規定により、姻族関係が終了した後も、同様とする 本条は、直系姻族間(自己の配偶者の親とか、婚姻前の配偶者の子)と、かって直系姻族であった者の間で…
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2017年12月29日
婚姻の法文解説
未成年者の婚姻についての父母の同意
民法第373条1.未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない2.父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足りる。父母の一方が知れないとき、死亡したとき、又はその意思を表示することができないときも、同様とする …
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2017年12月22日
婚姻の法文解説
成年被後見人の婚姻
民法第738条成年被後見人が婚姻をするには、その成年後見人の同意を要しない 本条は、平成12年4月1日に施行された成年後見制度により、従来の「禁治産者が婚姻をするには、その後見人の同意を要しない」との、文言が廃止され、禁治産者を成年…
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2017年12月14日
婚姻の法文解説
養親子等の間の婚姻の禁止
民法第736条養子若しくはその配偶者、又は養子の直系卑属若しくはその配偶者と、養親又はその直系尊属との間では、第729条の規定により親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない 本条は、養子縁組によって、法定の直系血族または直…
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2017年12月7日
婚姻の法文解説
婚姻の届出探究
民法第739条によって、婚姻は、届出をすることで効力を生じます。本条にいう届出とは、当事者間での合意が成立したことを、戸籍吏に示し、これによって婚姻を成立させる行為です。 届出は、戸籍吏に受理されれば完了し、戸籍簿に記入されなくても…
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2017年12月6日
婚姻の法文解説
婚姻届の代筆・口頭届出
民法第739条1.婚姻は、戸籍法(昭和22年法律第224号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる2.前項の届出は、当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない …
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2017年11月30日
婚姻の法文解説
婚姻要件不備の届出書受理
婚姻届書は、要件具備を確認したうえでなければ、受理し得ない届書ですが、誤って受理した場合でも、婚姻意思がある限り、無効とはなりません。 民法第739条2項の届出方式に違反する場合は、効力は妨げられません(第742条2項)。実質的要件…
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2017年11月28日
婚姻の法文解説
婚姻届出の受理要件
民法第740条婚姻の届出は、その婚姻が第731条から第737条まで及び前条第2項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない 婚姻の届出は、受理された時に効力を発します(第739条)。その際に…
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2017年11月21日
婚姻の法文解説
外国に在る日本人間の婚姻の方式
民法第741条外国に在る日本人間で婚姻をしようとするときは、その国に駐在する日本の大使、公使又は領事にその届出をすることができる。この場合においては、前二条の規定を準用する 本条は、外国にいる日本人間で、婚姻を行う方式について規定し…
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2017年11月17日
婚姻の法文解説
婚姻意思の存在時期
婚姻意思がないときは、婚姻は無効ですが、婚姻意思は届出との関係でいつ存在すればよいのでしょうか。 判例は、事実上の夫婦関係にある者や、将来婚姻することを目的に、性的交渉を続けてきた者が、婚姻意思を有し、その意思に基づいて婚姻届出を作…
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2017年11月8日
婚姻の法文解説
婚姻意思のない婚姻の無効
民法第742条婚姻は、次に掲げる場合に限り、無効とする。1.人違いその他の事由によって、当事者間に婚姻をする意思がないとき2.当事者が婚姻の届出をしないとき。ただし、その届出が第739条第2項に定める方式を欠くだけであるときは、婚姻は、そ…
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2017年11月2日
婚姻の法文解説
婚姻の取消し
民法第743条婚姻は、次条から第747条までの規定によらなければ、取り消すことができない 本条は、婚姻の取消しについて、第744条以下の規定のみによるべきものとし、民法総則の意思表示の取消しに関する規定の適用を、排除したものです。 …
結婚後の財産は夫婦の共有
離婚する際には、夫婦のあいだの財産を分けることになります。これを、財産分与といいます。分ける対象となるのは、夫婦の共有財産です。
結婚生活をはじめた日以降に夫婦が協力して得た財産は、どれも共有財産とみなされます。どちらに名義があるか、どちらが経済的に貢献したかは関係ありません。離婚の原因をつくった有責配偶者であっても財産分与を請求することはできます。
収入を得ていたのが夫のみで、妻が専業主婦の場合も、財産は夫婦二人のものです。妻は家事・育児を受け持つことで夫の稼ぎに協力してきたからです。
当然、離婚するときには、妻にも財産を手にする権利があるので、共有財産がどこにどのくらいあるかを、明確にしておくことが大切です。
財産分与は金銭問題を清算
協議離婚の場合、財産をどう分けるかは、夫婦の自由です。
一方、調停や裁判では、「その財産を築くのに、お互いがどのくらい貢献したのか」という目安で分けられます。貢献度は、夫婦とも原則として二分の1というのが現在の主流です。これを「清算的財産分与」といいます。
離婚後、夫婦の一方に経済的な不安がある場合、もう一方が援助するかたちの財産分与を「扶養的財産分与」といいます。この場合、たとえば「離婚後3年間、婚姻費用相当額の支払いを続ける」といった決定が下されます。
しかし、「扶養的財産分与」は、「清算的財産分与が多くない」「病気を抱えている妻が簡単に就職できない」「夫の収入が多い」「離婚原因が夫の方にある」などの、複数の事情が考慮されてはじめて認められるものであり、実際にはほとんど認められません。
また、未払いの婚姻費用がある場合も、財産分与で調整されます。
浮気した妻が財産分与請求
浮気が原因で離婚しても、妻にも二分の1の財産分与を請求する権利があります。ただし、財産分与と慰謝料とは別の問題として考えられます。
浮気の件で夫が慰謝料を請求すれば、その支払いが別途命じられます。結果的に慰謝料と財産分与が相殺されることもありますが、あくまでも慰謝料と財産分与は別ということです。
離婚の財産分与の割合決定
財産のリストアップ
財産分与を行うときは、まず結婚後につくった夫婦の共有財産をすべてリストアップします。このとき、プラスの財産だけではなく、マイナスの財産も把握します。次に、リストアップした財産をもとに、財産の総額を割り出します。
たとえば、収入を調べるとき、サラリーマンの場合は源泉徴収票、自営業の場合は確定申告時の資料をもとに計算します。
預貯金は、すべての預金通帳の額を足し合わせます。不動産は、役所の発行する評価証明額によるとか、不動産業者の査定の方法があります。住宅ローンは、金融機関から送られてくる返済予定表で残高を把握しておきます。
財産の総額がわかったら、プラスの財産からマイナスの財産を差し引きます。これが財産分与の対象となる財産ということです。
二分の1ずつ分けるのが原則
財産分与の割合は夫婦の話し合いで自由に決めることができます。ただし、原則として二分の1ずつ分けるのが基準となっています。
話し合いでまとまらないときは、家庭裁判所に調停の申立てを行います。調停が不成立になった場合、離婚裁判で解決を目指します。調停や裁判では、収入のない専業主婦の場合も、共有財産の二分の1を受け取ることが認められるというのが、現在の家庭裁判所の考えです。
分与の割合が決まったら、財産の分け方を決めます。すべての財産が現金ではなく、なかには土地のように分けにくいものもあります。これは売却して現金を分けるのか、代わりに別の財産を充てるのかなどを決めることになります。
夫が多額の借金を作っていた
配偶者がギャンブルなどで多額の借金を抱えてしまったとき、それも夫婦の共有財産ということになると、財産分与の対象となる財産が大きく目減りしてしまいます。こうした借金は、原則として夫婦の共有財産とはならず、借金をつくった本人が負担することになります。
離婚の慰謝料の決定
慰謝料の金額には決まりがありません。協議離婚では、夫婦の話し合い次第で自由に決めることができます。つまり、「その金額でお互いの気がすめばそれでいい」とされています。
調停や裁判でも自由な金額を請求できます。ですが、現実として高額の決定はほぼ出ません。なぜなら、慰謝料の額の判断材料として重視されるのは、原告がどれだけ心を傷つけられたかではなく、被告にどれだけの非があるかについてだからです。
相手の非を証明しなければならない(立証責任がある)のは、慰謝料を請求する側です。証明が不十分であると慰謝料を減額されるか、場合によっては請求そのものが棄却されます。
また、うまく証明できたとしても自分にも何らかの非があるとされれば、やはり慰謝料は減額されてしまいます。これを過失相殺といいます。
離婚は多くの場合、双方に何らかの非があり、相手だけに非があると証明することは簡単ではありません。たとえば、DVがあったときには相手の非が明白でしょうが、離婚理由の多くは一方だけに責任を押し付けることができない場合が多々あります。
公正証書の作成
協議離婚の話し合いでは、慰謝料の金額だけでなく、支払い方法や支払い期限についても決めます。話し合いで取り決めた内容については、文書に残しておきましょう。
公証役場で強制執行認諾の約款がついた公正証書を作成しておけば、支払いが滞ったときに強制執行の手続きを取ることができます。
慰謝料の目安額
司法統計をみると、慰謝料を200ないし300万円以下とする離婚がもっとも多くなっています。テレビなどで芸能人の高額慰謝料の話題も出ますが、それはその人の財産が多いためです。慰謝料には、あまり大きな期待を抱かない方がよいでしょう。
慰謝料の原因となる理由と目安額は、概ね次のようなものです。
理由 | 目安額 |
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浮気 | 100〜500万円 |
DV | 50〜500万円 |
悪意の遺棄 | 50〜300万円 |
性行為の拒否 | 100〜300万円 |
不倫相手への慰謝料請求
離婚の慰謝料は「相手が離婚理由となる行為をしたこと」「そのせいで夫婦の関係が破綻したこと」への精神苦痛に対して支払われます。
この請求の対象は、離婚原因を作った人だけでなく、その人に離婚理由を作らせた人にも及びます。たとえば、配偶者の不倫相手に対しても、慰謝料の請求が可能となります。過去の裁判でもそのような相手への慰謝料請求を認めています。
ただし、その不倫相手に「自分がやっていることは離婚理由になりうる」という認識がなければいけません。要は、「わかっていてやった」ということです。
不倫相手の場合は、既婚者と知ったうえで性的関係を持つことが「わかっていてやった」にあたります。既婚者と知らなかったなら、慰謝料請求の対象となりません。つまり、浮気相手に慰謝料を求めるときは浮気相手が既婚者と知っていたかどうかまで証明する必要があります。
不倫は精神的苦痛をもたらす行為ですから、離婚する・しないにかかわらず慰謝料を請求できます。しかし、一般的には、離婚した方が精神的苦痛が大きいとみなされるため、高額の慰謝料は見込めないでしょう。なお、浮気相手にある程度の資産がなければ、確実に支払いを確保することはむずかしいでしょう。
配偶者親族への慰謝料請求
不倫相手以外にも離婚原因を作った第三者として考えられるのは配偶者の親族です。嫁・姑の問題など、配偶者の親族との対立が夫婦関係の破綻を招いたとして、配偶者の親族に対して慰謝料の請求を訴えることもあります。
しかし、現実に慰謝料の請求が認められることは非常に稀です。単に性格が合わない、いつもケンカしているという理由だけではむずかしく、よほどの理由がないと認められません。配偶者の親族の暴力など明確な不法行為がある場合は、その事実を証明する必要があります。
慰謝料とは
慰謝料とは、相手がした行為によって精神的苦痛を受けた場合に「感情を慰める」ために支払ってもらえるものです。損害賠償の一種といえるものです。
損害賠償は、身体や財産に損害を受けたり、将来の利益を失ったりした場合に、金銭で埋め合わせをすることです。慰謝料は、そのうち精神的苦痛に対して支払うものです。
離婚の際に必ず支払われると誤解しているひともいますが、どんな場合にでも請求できるものではありません。浮気や暴力などの不法行為に対しては請求できますが、単に性格が合わないといった理由では請求できません。「夫から妻に支払われる」というのも誤解です。離婚原因を作ったのが妻であれば、妻から夫に支払うことも当然あります。
離婚の慰謝料には以下の2つの要素がありますが、裁判ではこの2つを明確に区別せずに、扱うことが多いようです。
- 離婚理由となる行為を、相手がしたことによる精神的苦痛(離婚原因慰謝料)
- 夫婦関係が1の行為によって破綻することになった精神的苦痛(離婚自体慰謝料)
慰謝料請求を放棄しない
離婚を話し合っているとき、とにかく離婚したいという一心から「離婚してくれるなら慰謝料なんかいらない」と相手に告げてしまうことはよくあります。
離婚前に「慰謝料はいらない」という文書を作ってしまうと、相手がそれをタテに、慰謝料請求を認めようとしないこともあります。相手が一筆を求めてきたとしても、不用意にサインすることは絶対に避けるようにしましょう。
一時の感情で、のちの生活に大切なお金をないがしろにするのは、後悔のもとになります。つらい思いをした分、慰謝料を請求するのは当然の権利ですから、放棄してはいけません。
協議離婚後にも請求可能
慰謝料は、離婚の調停や裁判のなかで請求できます。夫婦の話し合いで合意できなかった場合は、家庭裁判所に離婚調停を申立て、調停のなかで話し合いを進めていきます。
調停で慰謝料の支払いが決まると取り決めが守られなかった場合に、強制執行の手続きをとることはできます。調停が不成立で終わった場合は、裁判を起こして請求することになります。
また、協議離婚をした場合も、放棄する意思を文書で示していなければ、あとから慰謝料について家庭裁判所に調停を申立てるか、慰謝料請求の裁判を起こすことができます。
離婚の原因と慰謝料の請求
慰謝料を請求できる離婚原因
- 浮気(不倫行為)
この場合、配偶者と不倫関係をもった相手方にも請求できる可能性が高いです。 - 悪意の遺棄(同居義務違反)
家を出て、一人で暮らすなど、家族の面倒をみないことなどです。 - 暴力
- 生活費を渡さない
最低限の生活を営むための費用を渡さない場合も該当します。 - 性行為の拒否
- ギャンブルによる浪費
- アルコール依存
慰謝料を請求できない離婚原因
- 性格の不一致
- 重い精神病
- 原因が双方にある
- 相手親族との不仲
- 相手に離婚の原因がない
- 宗教上の対立
- すでに夫婦関係が破綻している
慰謝料一括受領のおすすめ
慰謝料はなるべく分割払いにしないで、一括で受領してください。
多くの離婚において、相手の「支払おう」という気持ちは離婚後はどんどん失われていく傾向が強いです。確実に受け取りたいなら、一括払いを指定した方がよいでしょう。やむなく分割払いにせざるをえないなら、初回の支払い額をできるだけ高く設定することが大切です。
婚姻費用の請求は離婚調停とは別
婚姻費用の分担について、話し合いがまとまらなかったり、相手が話し合いに応じなかったりした場合は、家庭裁判所に「婚姻費用の分担請求調停」を申立てます。
まだ離婚調停をする・しないを決めていない段階でも婚姻費用の支払いについてだけでも、請求することができます。離婚調停を起こすことが決まっている場合は、同時に申立てることもできます。
生活費が滞っていて、婚姻費用がないとすぐにでも生活が成り立たないという場合は、調停の申立てと同時に、上申書(裁判所に依頼や報告事項を伝えるための書類)を提出しましょう。調停委員会が緊急性を認めれば、支払いの勧告または命令が下されます。
これは調停前の処分といい、強制力はありません。
しかし、従わなければ10万円以下の金銭罰が課せられるので、一定の効果があります。
収入状況を添えての申立て
婚姻費用調停は、離婚調停と同じように、原則として相手の住所地を受け持つ家庭裁判所に申立てます。ただし、夫婦が合意すれば、別の家庭裁判所でも構いません。
申立書のほか、自分の収入状況がわかる書類として源泉徴収票、給与明細といった書類が必要です。これは相手方にも写しが渡ります。
書類のなかに知られたくない情報がある場合、たとえば「現住所を知られたくないのに源泉徴収票に書かれている」場合は、提出前にその部分を黒く塗りつぶします。もしくは、「非開示の希望に関する申出書」に、その書類を貼り付けて提出します。ただし、必ず希望が通るわけではないので注意が必要です。
婚姻費用の額の変更
婚姻費用分担請求の調停では、裁判官が「婚姻費用の算定表」をもとに夫婦それぞれの資産と収入、支出の状況、子どもがいる場合はその年齢を考慮しながら分担額を決定します。
一度分担額が決まったあとで「収入が減った」「子どもが進学した」など、生活の状況が変わった場合は、額の変更を求める調停を申立てることもできます。
また、婚姻費用分担請求の調停が不成立で終わると、自動的に裁判官による審判に移行します。
審判とは、家庭裁判所で取り扱う事件について、当事者の合意では解決できない場合に裁判官が判断を下すものです。提出資料や家裁調査官の調査結果などにもとづいて判断されます。
審判では、裁判官がこれまでの調停でわかった事情を考慮しながら決定を下します。その決定に不服なら二週間以内に申立てれば審判は確定せず、高等裁判所で改めて判断し直されます。
審判による判断を待っていれば、生活費の余裕がない場合は「婚姻費用を仮払いの仮処分」もあわせて申立てます。ここで緊急性が認められると審判前の保全処分といい、婚姻費用として仮に一定額を支払うように、という命令が出ます。
婚姻費用分担請求調停に必要なもの
- 申立書
裁判所のホームページから書式をダウンロードできます。写し1通も提出します。 - 夫婦の戸籍謄本
役所で直接入手するほか、本籍地の役所に郵送で取り寄せることもできます。 - 申立人の収入状況がわかる書類
源泉徴収票、給与明細、確定申告書の写しなど、収入を証明するものです。 - 収入印紙、郵便切手
収入印紙代は1,200円分、連絡用の郵便切手代は家庭裁判所に確認します。
なお、申立書の記入のポイントとして、次のような点に気をつけてください。
- 相手方に支払ってほしい金額を書きます
- 同居と別居を繰り返しているときは、一番最後の別居の日を書きます
- 夫婦がはじめて同居した日を書きます
- 増額の請求をしたいときは、その額を書きます
- これまでの支払い状況も書きます
備考
婚姻費用の支払い義務は、請求した時点から発生するものとされています。過去の分まで遡ることは難しいので、早めに調停を起こすべきです。
離婚とお金の問題
離婚をするときに起こる大きな問題のひとつがお金についての問題です。離婚後の生活を考えるうえで、お金の問題は避けて通れません。
たとえば、これまで収入がなかった専業主婦は新たな生活のために仕事が必要になるかもしれません。仕事と収入がある会社員の夫でも子どもを引き取るのであれば、一人で仕事と子育ての両立をしなければなりません。
お金の問題について、十分に話し合わないまま、離婚してしまうと後悔するケースが少なくありません。離婚後に「やっぱり納得できない」「もらえるお金はもらうべきだった」などと思っても、離婚後だと相手が応じないことがほとんどです。
そのため離婚前に「どのお金の問題について、どのように分ける(受け渡しする)のか」をしっかり決めておく必要があります。
どんなお金の問題があるか
離婚にともなうお金の問題は、大きく分けて次の4つがあります。
- 「婚姻費用」は、結婚生活をおくるうえでかかる生活費のことです。離婚するまでの期間に生活費の面倒をみる義務がある方が生活費を渡さない場合、その生活費を請求できます。婚姻費用は、同居別居に関係なく請求できるお金です。
- 「慰謝料」は、相手の行為によって受けた精神的・肉体的苦痛に対する損害賠償金です。浮気はDVなど離婚の原因をつくった相手に請求できます。逆にいえば、明らかに相手に離婚の原因があるという場合でない限り、「相手との結婚生活で心身ともに疲れた」などの理由で請求することはできません。
- 「財産分与」は、夫婦が婚姻中に協力してつくった財産を分けることです。慰謝料とは違い、離婚の原因に関係なく、夫婦それぞれに請求する権利があります。専業主婦で収入がなかった場合も請求ができます。財産分与は、離婚成立後2年経過すると請求する権利がなくなるので、注意が必要です。
老後の生活にかかわる「年金分割」もおさえておきたいところです。これは離婚の際に、将来受け取る予定の厚生年金の権利を分割できるという制度です。条件を満たしている場合は、手続きをとっておくとよいでしょう。 - 「養育費」は、未成熟子が成長するために必要な生活費や養育費や医療費などのお金です。子どもを引き取った親が子どもと離れて暮らす親に請求します。
婚姻費用
結婚生活をおくるとき、日常の生活費、医療費、交際費など、必ずかかる生活費のことを法律では「婚姻費用」と呼んでいます。夫婦には、婚姻費用を分かち合う義務があり、結婚している限りその義務が続きます。夫婦関係が悪化したからといって、義務を怠ることは許されません。また、関係の修復や離婚に向けて別居しているあいだも婚姻費用は分担しなければなりません。
別居している側が無収入ならもちろんのこと、相手の収入より少ない場合や収入が多くても子どもを引き取っているなど、相手よりも扶養の必要性が高い場合には、婚姻費用を請求することができます。相手が支払いに応じない場合は、家庭裁判所に「婚姻費用分担請求の調停申立て」を行うことで、婚姻費用を求めていくこともできます。
調停では、お互いの資産、収入、支出、子どもの有無や年齢などが考慮されます。調停が不成立になった場合は、審判によって結論が示されます。
婚姻費用の請求が認められるのは、多くの場合請求した時点からです。それ以前にさかのぼって請求することは難しいので、別居を開始したときに話し合っておくべきでしょう。
浮気した側の生活費
自分が浮気をした結果、別居に至った場合も、婚姻費用を請求できるのでしょうか。法律上はまだ夫婦ですから、原因をつくった側でも婚姻費用の請求はできます。しかしそれは、別居原因の内容次第です。
たとえば、相手が家庭をまったくかえりみなかったことが浮気のきっかけになったのであれば別居の原因の一端は相手にもあるので、婚姻費用の請求はある程度認められます。しかし、自分の身勝手な理由で浮気したのであれば大きく減額されたり、請求自体が認められなかったりすることがあります。
なお、子どもを養育する義務はどんな状況でも続きます。どちらに別居の原因があるのかにかかわらず、離れて暮らす親が子どもの養育費を支払わなければなりません。
離婚請求を認めるか、認めないか
ひと通りの審理が終わると、以下の点を考慮しつつ、担当裁判官の判断で判決が下されます。
- 原告と被告では、いずれの主張に合理性があるか。
- 証拠のうち、事実として認められるのはどれか。
- 認められた事実のうち、重要なものはどれか。
たとえば、「浮気をした事実」と「浮気後、誠実に対応している事実」の両方が事実と認められた場合、前者が重視れます。
判決言い渡し日に原告の離婚請求を認めるか、棄却されるかが言い渡され、裁判が終了します。その日は出廷しなくてもよく、判決書が双方に送られます。
なお、原告が訴えを取り下げた場合や被告が原告の訴えを全面的に受け入れた場合(認諾)、両者が和解した場合も裁判は終了します。
判決に不服なら上級裁判所で再審理
判決で離婚請求が認められても、調停とは異なり、すぐに離婚は確定しません。判決に不服がある場合、上級裁判所に訴えれば(上訴)、判決の確定は先延ばしされ、裁判が続きます。
家庭裁判所の判決後、まず高等裁判所へ上訴(控訴)し、高等裁判所の判決にも不服があるときは、最高裁判所へ上訴(上告)することができます。ただし、最高裁判所は、法律の解釈をする場なので、浮気などの事実などを巡って争うことができるのは、高等裁判所までです。
控訴するのは、裁判で敗訴した側だけとも限りません。離婚請求が認められた側も財産分与や慰謝料、親権、養育費などの請求についての判決に不服の場合は、その部分について控訴することになります。離婚だけ先に成立させたい場合は、裁判を継続しながらも協議離婚の形式をとって離婚届を提出することはできます。
控訴する場合、判決書が送達された日から二週間以内に控訴状を提出し、50日以内に控訴理由をまとめた「控訴理由書」を提出します。
控訴・上告が行われなければ、その期間が終わった時点で判決が確定します。判決が離婚の請求を認めるものであれば、その時点で離婚も確定します。
離婚の判決確定後の手続き
10日以内に離婚届の提出が必要
離婚を認める判決が確定したら、確定日を含む10日以内に離婚届を提出する必要があります。これは、戸籍に離婚の成立を記載するための手続きであり、行わないと戸籍法違反になるので注意が必要です。
離婚届は、通常離婚を請求した側が提出します。協議離婚のときとは異なり、相手の署名押印や承認は必要ありません。
離婚届とともに「判決書謄本」「判決確定証明書」を市区町村役場に提出します。
裁判途中の和解
裁判所からの和解の勧告
本人尋問など、原告と被告の当人が顔をそろえる日には、裁判所から和解を勧められます。ここでいう和解とは、「お互い仲良くしなさい」という意味ではなく、「判決を待たずにこのぐらいで手を打ってはどうか」ということです。
和解の話し合いは、法廷ではなく別室で行われます。裁判官などが間に入りながら、原告と被告が話し合いを進めます。日本では、離婚裁判を起こした夫婦の4割以上が和解を受け入れています。和解にもそれなりにメリットがあるからです。
ひとつには、条件を自由に設定できる点、和解ではどんな条件で手を打つかを自由に決められます。当初の訴えになかった条件も、ある程度は指定できます。一方、判決は訴状に書かれた件に関してしか、決定を下せません。
もうひとつは、現実的な条件で決着がつく点です。裁判を通じて相手も自分も「折り合いのつけどころ」がわかってきているからです。
和解か判決かを考える
和解では、判決を待つよりも早くに離婚が成立します。和解が成立した時点で、和解調書が作成され離婚が確定します。
また、和解の場合、判決よりも一般的に慰謝料や養育費などの支払いが取り決めた通りに守られる可能性が高くなるといわれています。納得していないことを命令されるのではなく、自分で納得して合意するからです。
裁判官の和解勧告は、強制ではありませんから、納得がいかなければ応じる必要はありません。しかし、これ以上裁判を続けてもメリットがない、勝訴しても相手の控訴で裁判が泥沼化するおそれがある場合などは、和解に応じた方がよいとも考えられます。
和解の申し入れは、裁判の継続中ならばいつでも可能です。相手の出方をみながら判決と和解と、どちらか得かをじっくり考えてもよいでしょう。
認諾離婚
和解以外の手段として、被告側が認諾する認諾離婚という選択もあります。これは訴状に書かれた内容を被告が全面的に受け入れるもので、いわば被告の全面降伏です。その時点で離婚が確定します。
ただし、認諾ができるのは、訴えに親権問題が含まれていない場合だけです。そのため、年に十数例しかない極めて稀なケースとなっています。
書面で互いの言い分を交換
家庭裁判所に訴状を提出すると、原告と被告には第一回の口頭弁論(裁判)の期日を記した呼出状が届きます。第一回の口頭弁論は、訴状を出した1〜2か月後に原告の都合に合わせて開かれます。
第一回で行われるのは、訴えた内容に関して原告と被告、それぞれの主張を確認する作業です。原告側が訴状を被告側が答弁書をそれぞれ陳述します。
陳述とは、内容を声に出して読むことですが、実際の裁判では事前に相手方に訴状や答弁書が渡っているので、内容を確認し合うだけで終わります。
代理人(弁護士)がいれば、本人が出席する必要はありません。その後、次回の口頭弁論までにやっておくべきことが告げられます。「訴状や答弁書に反論する書類を作りなさい」「反論するための証拠を、書類にして提出しなさい」といったことです。
書類の提出期限と次回の期日を決めれば、だいたいは終了です。概ね10分で終了します。
2回目以降の口頭弁論は、一か月程度の間隔をおいて行われます。しばらくは、準備書面(相手に反論する文書)の陳述が繰り返されるだけです。こちらも代理人の出席で済みます。
なお、口頭弁論が行われているあいだに、被告側から逆に「離婚を求め、慰謝料〇〇万円の支払いを請求する」といった裁判(反訴)を起こすことがあります。家庭裁判所では、原告の起こした裁判(本訴)と反訴を同時に審議します。
ちなみに、口頭弁論とは、原告側と被告側がそれぞれ自分の主張とそれを裏付ける証拠を提出し、自分の主張が正しいという証明を試みることです。裁判官の目の前で行います。
本人が法廷で証言
準備書面を通じて、原告と被告それぞれの主張が整理され、証拠の提出が終わった段階で、本人尋問が行われます。
なお、離婚裁判ではあまりないことですが、証人尋問(原告・被告以外への尋問)も場合によっては行われます。たとえば、配偶者親族との不仲が離婚理由で、その親族が証人になる、といったケースです。
裁判は原則として公開されます。夫婦のプライバシーが公になることを覚悟しなければなりません。15歳以上の子どもの親権を争う場合は、裁判所は子ども本人の考えや意思を聞くことになりますが、このときには公開法廷ではなく、面接によって行われます。
本人尋問が終わると、相手の証言の矛盾点や反論を記した最終準備書面がやり取りされます。最後に判決が下され、裁判が終了します。
2回目以降の口頭弁論
2回目以降の口頭弁論は、月に1回程度行われます。
書面上で言い分を争い、主張が食い違っている点を明らかにします。
原告から証拠を提出し、主張の裏付けとします。
被告から証拠を提出し、原告の主張に反論します。
必要に応じて、証人尋問が行われます。
裁判官から和解の提案を受けます。
離婚裁判の尋問
本人尋問の対策
本人尋問では、原告も被告も当人が質問が受けることになります。誰でも緊張するのは当然の場ですので、事前の対策が必要です。
本人尋問は、結婚生活や離婚にいたる経緯、自分がどうしたいかをまとめた書類(陳述書)を事前に双方が提出し、それをもとに行われます。
具体的には、陳述書に書かれた内容について、「事実と認めるか、認めないか」を答える形になります。まずは自分側の弁護士からの質問に答え、その後、相手側の弁護士からの質問に答えます。最後に、裁判官からの質問に答えます。
準備としては、双方の陳述書が揃った段階で、弁護士に想定問題集を作成してもらいましょう。自分側の弁護士がどんな質問をし、相手側がどんな切り口で質問してくるかを想定しておけば、本番で焦らなくて済みます。
尋問のリハーサル
想定問題集を読んで覚えるだけでは失敗します。弁護士に本番のつもりで尋問をしてもらえるようにしましょう。実際と同じように声に出して答える練習を重ねておくことです。
相手側から想定外の質問をされた場合に、どうするかもしっかり打ち合わせしておくべきです。焦って陳述書と矛盾する証言をしてしまうと、主張の信用性が失われてしまいます。
そういうときは、こちらの弁護士が助け舟を出してくれますから、落ち着いてそれを待ちましょう。助けを出してもらいたいときのサインを事前に決めておくのもよいでしょう。
なお、尋問とは、原告・被告の代理人、および裁判官が原告・被告・証人に尋問をして、答えさせることです。 不適切な質問には、答えなくてよい場合があります。
離婚裁判提訴
調停で解決できない場合は、裁判所に訴状を出し、離婚裁判を起こすことになります。調停を経ずに裁判を起こすことはできません。
離婚裁判を起こすメリットは、判決により必ず決着がつくことにあります。ただし、自分の希望通りの結論が出なくてもしたがわなくてはなりません。裁判を起こすにあたっては、民法に定める4つの離婚理由のどれかを満たさなければなりません。離婚の訴えを起こした方を「原告」といい、起こされた方を「被告」といいます。
民法第770条
1. 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1. 配偶者に不貞な行為があったとき。
2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3. 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
4. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2. 裁判所は、前項第1号から第3号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
離婚裁判では、「離婚するかどうか」だけでなく、子どもの親権や養育費、財産の分け方、年金の分け方、慰謝料など離婚と同時に決めたいことについても一緒に申し立てることができます。
訴状の提出先は、夫婦のどちらかの住所地を受け持つ家庭裁判所です。調停を取り扱った家庭裁判所に取り扱ってもらえることもあります。訴状とともに、「離婚調停不成立調書」、夫婦の戸籍謄本、証拠となる書類のほか、必要な費用を添えます。
離婚裁判の開始
訴状を出すと、概ね1ないし2か月以内に原告と被告の双方に第一回口頭弁論の期日が通知されます。
被告人には訴状の副本(コピー)があわせて送られます。被告は「訴状の内容を認めるか認めないか」「認めない場合、理由はなぜか」を書いた答弁書を、家庭裁判所と原告に送り返します。
第一回の期日は、被告の都合を聞かずに設定されているため、答弁書の送付のみで家庭裁判所に出廷したのと同じように扱ってもらえます。
弁護士への依頼
訴状・答弁書は、自分でも作成できますが、証拠の書類など一緒に提出するものが多く、法律にしたがって準備する必要があります。弁護士に作成を依頼するのが一般的です。
裁判に入ってからも、法律に詳しい助言者がいなければ何もできません。原告は、離婚理由が事実だと証明する必要があり、被告もそれに反論する証拠を出していくことになります。
こうした証拠の使い方にも法律の知識やテクニックが求められます。弁護士に依頼せず進めると、依頼した場合と比較して、圧倒的に不利な状況に追い込まれます。
弁護士に依頼すれば、訴訟代理人として、手続きを代行してもらえるだけでなく、本人尋問(訴えが本当かどうかを確かめるための質疑応答)と和解の話合いのとき以外は、本人が家庭裁判所に出向かなくても弁護士に進めてもらえます。
裁判を有利に進めるためにも早い段階から、弁護士に依頼し、よく話し合っておきましょう。
なお、訴訟代理人とは、訴訟の当事者(原告や被告)のために、その本人の名前を使って訴訟に関するさまざまな事を代行する人です。弁護士でなければなりません。
弁護士費用がすぐに用意できないときは、法テラスを利用してください。法テラスでは、弁護士費用をすぐに支払う余裕がない人を対象に、費用を立て替える制度がありますので利用を検討しましょう。立て替えた費用は、原則として月額5000円〜1万円ずつ返済します。
申立書による調停の依頼
離婚において、相手方が話し合いを拒否している場合、または話し合いがまとまらない場合は、調停に進みます。離婚調停の申立てができるのは、当事者である夫か妻だけです。第三者からはできません。
申立ては相手の住所にある家庭裁判所に行います。その家裁が遠くにあり、通いやすい別の家裁で調停を行いたい場合は、相手の合意をとれば別の家裁で対応してもらえます。
申立書の用紙は家裁で受け取るほか、「裁判所」のホームページからダウンロードできます。必要書類を記入した申立書とともに夫婦の戸籍謄本、年金分割のための情報通知書などの必要書類を提出します。なお、申立書は調停相手にも送るので写しが1通必要です。
住所地を知られたくない場合
申立書には住所を書かなければなりません。ですが、DVの被害を受けて避難している場合など現住所を知られたくない場合は、相手に知られても構わない住所地(実家の住所など)を書いてもかまいません。その場合、現住所は家裁が作成する「連絡先などの届出書」に記載されます。
このほか、調停の進め方で「どうしても相手と顔を合わせたくない」「自分が先に帰宅できるようにしてほしい」など、相手とのデリケートな問題があるときは、申立ての際に相談することができます。
あるいは「進行に関する照会回答書」に記載すれば配慮してもらえる場合があります。この書類はもともと申立てた人が都合のとれない日など控えておくためであり、相手には見られません。
陳述書の添付
申立書と一緒に自分の言い分を陳述書にして、提出することもできます。事前に陳述書を提出しておくことにより、調停委員が事前に内容を理解した状態で調停がはじまることになり、話し合いがスムーズに進むというメリットがあります。
自分の主張を明確に伝えることができるので、調停という特殊な場で言いたいことを上手に伝える自信がない人は、陳述書を添えるとよいでしょう。署名にまとめる過程で、考えが整理される効果もあります。
陳述書には結婚までの経緯や離婚に至った経緯、離婚協議の状況、経済状況、健康状態、自分の考え、希望などを記載します。
陳述書の書き方に決まりはありませんが、これまでの事実を時系列にそってわかりやすく簡潔に書いていくのが基本です。自分に不利になることは書かないのはもちろん、相手への悪口や愚痴を書き連ねるのは調停委員にマイナスイメージを与えるので、よい書き方とはいえません。
調停の進行ペース
申立てを行なって、裁判所によっても異なりますが、2週間後くらいに1回目の調停の期日の書かれた呼び出し状が家庭裁判所から届きます。
初回の調停は、通常は申立てから1か月ないし1か月半後です。混み具合で、2~3ヶ月後になることもあります。2回目以降は、月に1回程度のペースで行われます。
調停は平日に行われ、原則として本人の出席が求められます。都合が悪ければ期日変更を申請できますが、きいてもらえるとは限りません。仕事がある場合は、調停のために月1ペースで休むことを、職場に伝えておいた方がよいでしょう。調停は、裁判官と民間人である調停員の2名からなる調停委員会によって進められます。家庭裁判所では、夫婦の一方が調停室で話しているあいだ、もう一方は待合室で待機しているため、お互い顔は合わせません。
調停の成立と不成立
調停の結果、離婚の合意がなされれば裁判所が「調停調書」を作成します。調停最終日に裁判官が読み上げるので、内容を確認しましょう。
このとき、誤りがあれば訂正してもらえますが、これまでの調停と違う内容の変更や追加はできません。いったん「これでOK」で確認したら、以後の訂正はできません。
双方が確認を行なった時点で、離婚が成立します。あとで離婚届を出す義務がありますが、戸籍を処理する手続きに過ぎません。
どちらかが出席を拒否した場合や、「これ以上調停を続けても無意味」と調停委員会が判断した場合は、「調停不成立」とされ、調停が終了します。この判断に対して、不服申立てはできません。
不成立のあとの選択肢
調停不成立になった場合、その後の対応は次の4つから選ぶことになります。
- もう一度夫婦で協議する
- 離婚裁判を起こす
- 離婚をあきらめる
- 再度調停を申立てる
夫婦での協議は難しく、かといって「まだ裁判には持ち込みたくない」と考えている場合は、いったん調停を取り下げ、機会をみてもう一度申立てるのもひとつの方法です。調停委員が変われば、新たな妥協点が見出せるかもしれません。
調停の取り下げはいつでもでき、一方的に行えます。なお、調停を申し立てられた側には、取り下げる権利はありません。
相手へ離婚の意思を伝える
協議離婚の最初にしなければならないのは「離婚したい」という意思と理由を、きちんと相手に伝えることです。冷静に話し合うことが大切ですので、感情をぶつけないようにしましょう。
まずは次の2点を伝えることです。
- どういう理由で離婚を決意したのか。
- その理由のせいで、どんな悪いことが起きたのか。
結婚にともなう義務に違反しているケースは、1のみでも構いませんが、そうでないなら2が重要になります。
1の理由が、「性格の不一致」なら、2はたとえば「あなたに合わせていたら、自分の時間がまったく取れなくなった」など具体的なできごとを伝えましょう。
相手が納得しないなら、そろえておいた証拠を出しましょう。そのうえで話し合いを申し出ます。相手が話し合いを拒否した場合は、調停の申請に進みましょう。
決めるべき事項を書き出す
相手が話し合いを了承したなら、以下の2点を決めていきます。
- 決まっていないと、離婚届が出せないもの
- 離婚届には不要でも、曖昧にしておくと後々のトラブルにつながるもの
実際には、条件をお互いに譲歩しつつ離婚の合意に向かうケースが多いようです。
取り決めた内容が曖昧だと、将来相手が取り決めを守らず強制執行をしたいと考えたとき、逃げる口実を与えてしまいます。たとえば「慰謝料を払う」とは決めたが、「いつまで」とは言っていない、といった具合です。
強制執行とは、支払いを約束した側が取り決めどおりにお金を支払わない場合に、国が強制的に財産を使えないようにして支払いを行わせることです。
具体的によい方法は、取り決めの段階から5W1Hを意識するとよいでしょう。何について、誰が、誰に、いつまでに、どこで、どういう方法で行うのかを決めておきます。一度ですべてを話し合おうとせず、時間をかけて進めていくことが肝心です。
離婚協議書
話し合いを終えたら、取り決めた内容は必ず離婚協議書として残しましょう。口約束だけで済ませた場合、あとになってから約束が守られないなどのトラブルのおそれがあります。
離婚協議書に決められた様式はありません。縦書き、横書きの決まりもなく、用紙のサイズも自由であり、箇条書きでも構いません。
記載する内容も自由ですが、親権者、養育費、面会交流、財産分与、慰謝料などについての決定事項を具体的に書きます。
たとえば養育費については、支払う人の名前、受け取る人の名前、毎月の支払い金額、支払い期間、支払い方法などを記入します。
離婚協議書は、同じものを2通作成し(コピーも可)、二人の自筆署名と押印をして、それぞれが1通ずつ保管しておきます。
公正証書
二人のあいだで決定事項を記載しただけでは、取り決めを書き留めただけの私的書類にすぎず、法的な効力は弱いといえます。仮に取り決めを破られたとしたら、強制執行ができません。そこで、離婚協議書をもとにして、新たに公正証書を作り、そのなかに強制執行認諾の約款を付け加えます。
強制執行認諾とは、「ここに書かれた取り決めを破ったら強制執行を受けても文句は言いません」と約束させた一文です。この文言を、公正証書に書き入れておけば強制執行が可能になります。
公正証書は、二人で公証役場に行って、公証人に作成してもらいます。協議の内容を口頭で伝えることもできますが、時間もかかりますし伝えもれの危険性もあります。離婚協議書を持参し、「強制執行認諾約款付きで」と依頼するとよいでしょう。
公証人は、取り決めの内容をもとに公正証書の原本を作成し、夫婦それぞれが内容を確認したうえで署名押印します。公正証書は、原本と、原本の写しである正本、謄本が作成され、原本は公証役場が保管します。交付された公正証書は、お金を受け取る側が正本、支払う側が謄本を1通ずつ保管します。
公正証書に期待しすぎない
しかし残念ながら、公正証書の強制力は完ぺきとはいえません。強制執行の対象となるのは、養育費や慰謝料などの金銭についてだけです。また、強制執行を行うには公正証書のほかにも公的な書類が必要となり、手間も費用もかかります。
そういう点を考えると、「離婚しても互いの信頼関係は失わず、約束が破られないようにしておく」というのがもっとも安心できる協議の姿かもしれません。
相手の経歴詐称
近年は、マッチングアプリや婚活サイトで出会った相手と結婚する人も増えており、結婚後に相手の経歴詐称が発覚するトラブルも起きています。
たとえば、「有名大学卒と言っていたのに実は入学していなかった」とか「一部上場企業勤務と言っていたのに子会社勤務だった」などがあります。
このような場合に、離婚が認められるか否かですが、裁判では経歴詐称をしただけで、離婚が認められるわけではありません。そのため、自分にとって経歴が重要であることを結婚前に伝えていた事実や経歴詐称によってどれだけ苦痛を受けたかを具体的な証拠とともに挙げることが重要です。
なお、経歴詐称が発覚してから長い時間が経過すると、離婚理由として主張するのが難しくなるので、早めに別居などの決断をする必要があります。
経歴詐称を理由に離婚するための証拠
結婚前のやり取り
結婚前に経歴が重要であることを相手に伝えていた証拠を示します。
証拠となるものとして、次のようなものがあります。
- マッチングアプリ・結婚相談所への登録履歴
- 相手とのメールの文面
- SNSのコメント など
経歴詐称による苦痛
実生活や将来設計への影響や精神的苦痛を受けたことを示します。証拠となるものとして、次のようなものがあります。
- 日記やメモ
- 相手が職場で解雇された記録
- 心療内科などの通院記録 など
信頼できない言動
経歴詐称以外にも信頼できない言動があった証拠を挙げます。証拠となるものとして次のようなものがあります。
- 日記やメモ
- 配偶者とのメールの文面
- SNSのコメント など
子育てをめぐる問題
子どもに関わる離婚原因には、子どもへの教育方針の相違のほか、夫婦ともに仕事を抱えているのに、自分だけ一方的に家事、育児の負担を押し付けられている「ワンオペ育児」などがあります。
裁判で離婚と親権を認めてもらうには、子育ての問題が生じていた証拠を示すのが一般的です。ただし、どれだけ子どもに無関心であったり、教育方針が合わないと感じられたりする配偶者でも、面会交流は確保する必要があります。面会交流に理解ある姿勢を示すことが肝心です。
扶養者(収入の高い方)から子どもを看護する相手に対して離婚を請求する場合は、子育ての問題が生じていた証拠に加え、離婚後も子どもに対する責任を果たす姿勢を示すことが重要です。
子育ての問題で離婚するときの対応
- 扶養者(収入の高い方)から主に子どもを監護する相手に対して離婚を請求する場合
子育ての問題が生じていた証拠に加え、養育費を支払う意思を示すなど、責任を果たす姿勢を示すことが重要です。子どもの特性(障がい、精神的問題など)によっては、特に子どもの住居や教育について、誠意ある対応が求められます。 - 被扶養者(収入の低い方)で、子どもを監護する側から離婚を請求する場合
母子手帳、育児日記、配偶者とのメール、SNSのやり取りなど、問題が生じていた証拠を示せば、離婚が認められる可能性は高くなります。面会交流に理解ある姿勢を示すことで、離婚と親権の主張を認められやすくすることも重要です。
配偶者の認知症
熟年夫婦は、配偶者のいずれかが認知症を患う可能性が高くなります。認知症の症状が長期間にわたり、今後も治る見込みがない場合は、離婚の理由として認められることがあります。
ただし、配偶者の離婚後の生活にも一定の配慮を求められることになります。そのため、認知症を患っている証拠や、それによって家庭生活に支障が生じている証拠、これまで治療や介護に協力してきた証拠を集めるだけでなく、配偶者の離婚後の生活についての具体的な対策を考えておくことが重要です。
配偶者に判断能力がない場合は協議離婚はできないので、成年後見人を選任したうえで裁判による離婚を求めることになります。
相手が認知症の場合の離婚の方法
1. 離婚に向けた証拠を集める
病気の証拠として、診断書・処方薬の説明書・医療費領収書などがあります。
家庭生活に支障が生じている証拠として、日記・会話の録音、警察から取り寄せた記録(警察のお世話になったことがあれば)などがあります。
これまで病気の治療や介護に協力してきた証拠として、日記、入院・入所時の身元保証書があります。
病気以前に離婚原因があった場合の証拠として、不倫の写真、貸金の記録、DVの記録などがあります。
2. 配偶者の離婚後の生活に関する具体策を考える
財産分与・離婚後数年間の生活費の提供・配偶者の親族への引き受け要請・入所施設の確保などが必要です。
相手方のパーソナリティ障害
パーソナリティ障害とは精神疾患のひとつであり、考え方や感情、対人関係といった機能が偏ることで問題が起きます。「性格が悪い」といったものとは異なり、治療が必要な病気です。
男性・女性を問わず、最近、離婚の原因として増えているのがパーソナリティ障害による家庭の不和です。
配偶者がパーソナリティ障害の場合は、相手の言動とそれにより生活にどのような支障が出たのかを具体的なエピソードを挙げて丁寧に主張することが必要です。また、その事実を裏付ける証拠を集めておくことが望ましいといえます。
単なる性格の不一致よりも深刻な生活上の支障をともなうことが多いため、裁判でも比較的離婚が認められやすくなります。
パーソナリティ障害の特徴
- 奇妙で風変わりな特徴を示す場合があります。
・不信感や猜疑心が強い
・会話が風変わりで感情の幅が狭い
・非社交的で他者への関心が乏しい - 感情的で移り気な特徴を示す場合があります。
・感情や対人関係が不安定
・反社会的で衝動的に行動する
・ごうまん、尊大な態度をみせる
・派手な外見や演技的行動で他人の注目を集める
・自己評価に強くこだわる - 不安定で内向的な特徴として次のようなものがあります。
・他者に過度に依存する
・融通性がなくこだわりが強い
・孤独に耐えられない
・不安や緊張が生じやすい
配偶者のパーソナリティ障害で離婚する証拠例
- わめき声や罵声の音声データ
- 度重なる虚言を記した日記
- 自傷行為を行ったときの診断書
自分の浮気での申し出
浮気をしたなど、自分自身に非がありながら(有責配偶者でありながら)離婚を申し出た場合、離婚を認めてもらうためのハードルは高くなります。
有責配偶者が離婚を請求したケースでは、たとえ別居期間が長期間に及んだとしても、原則として離婚は認められません。離婚の原因を作った側が勝手に離婚できるとなるとあまりに身勝手な行為を許すことになるからです。
離婚を成立させるには、自分に非があることを自覚し、離婚成立までの婚姻費用を誠実に支払う、離婚後の養育費を充実させることを約束するなど、誠実に対応します。そうすることで、裁判所も有責者側の立場を考慮し、和解を進めてくれる例もあります。
自分が悪いときは誠実な対応が必要
金銭面での誠実な対応
配偶者に対して、どの程度金銭的な援助があるかが重要です。必要な援助を惜しまず、誠実な対応をしていきます。
具体例としては、次のようなことが考えられます。
- 別居後の婚姻費用を支払う
- 慰謝料を支払うことを約束する
- 財産分与を支払うことを約束する
子どもへの対応
子どもがいる場合は、離婚後の養育費を充実させるなど、経済的・精神的な協力を約束します。子どもへの誠実な対応が第一です。
具体例としては、次のようなことが考えられます。
- 養育費の確実な支払いを約束する
- 面会交流については、相手と子どもの意見を尊重する
配偶者の宗教活動
日本国憲法は、信教の自由を保障しています。配偶者に、自分の信仰している宗教を強制することはできませんし、お互いの信仰する宗教が違うからという理由では離婚できません。
ただし、過度の宗教活動が離婚理由として認められる場合もあるため、その証拠を集めておくことが重要です。
たとえば、平日、休日関係なく、布教活動に明け暮れ、家事や育児を放棄しているときは、日記などに記録しておきます。生活費から家計の負担となるような寄付をしたときは、預金通帳などをコピーしておきます。これらの証拠により、夫婦の協力義務違反や相互扶助に違反した状態であると主張していきます。
宗教が離婚理由になる範囲
離婚が認められる場合としては、次のようなことが考えられます
- 家事、育児を放棄して布教活動を行なっている
- 集団生活をおくっており自宅に帰ってこない
- 仕事をせず、家計にお金を入れない
- 家計を圧迫するくらいの多額の寄付をする
- 子どもを学校へ行かせず、宗教活動に参加させる
- 宗教活動のために多額の借金をしている
- 信仰していない配偶者を精神的に虐待する
離婚が認められない場合としては、次のようなことが考えられます
- 自分の信じる宗教と異なる宗教に入信した
- 家庭内で宗教に関する会話をしようとする
- 毎日行っている祈祷がうるさい
- 自分の友人や知人を入信させようと勧誘する
- 宗教に関する書籍を読ませようとする
- 同じ信仰をもつ信者を自宅に連れてくる
- 子どもを宗教の集まりに連れていく
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