離婚・婚姻の専門解説協議上の離婚
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2020年6月5日
協議上の離婚
詐欺・強迫による離婚の取消し
民法第764条第738条(成年後見人の婚姻)、第739条(婚姻の方式)及び第747条(詐欺・強迫による婚姻の取消し)の規定は、協議上の離婚について準用する。 成年被後見人が、協議離婚をするには、その成年後見人の同意を要しません。成年…
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2020年6月3日
協議上の離婚
事実上の離婚
事実上の離婚は、それのみで問題となることは、ほとんどありません。通常は、当事者の一方に生じた内縁配偶者との関係で、法律婚配偶者と重婚的内縁配偶者とのどちらに婚姻の効果を認め、保護すべきかという文脈で問題となります。 重婚的内縁は、法…
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2020年5月28日
協議上の離婚
離婚の予約
離婚の予約とは、将来協議離婚をしようと約すること、をいいます。 婚姻前に離婚の予約がされる場合には、条件付きまたは期限付きの婚姻の合意として、婚姻の意思の問題になります。婚姻の意思に、条件や期限を付けることは許されないので、婚姻意思…
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2020年5月23日
協議上の離婚
協議離婚の無効と取消し
当事者の一方に届出意思を欠く場合は、協議離婚は無効となりますが、この場合に、その協議離婚の無効を追認することは、認められるでしょうか。すなわち、有効な協議離婚とすることが認められるのでしょうか。 夫が、無断で協議離婚の届出をしたのを…
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2020年5月13日
協議上の離婚
離婚意思の存在時期
有効な届書を作成後、受理までの間に、当事者の一方が離婚の意思を失った場合、離婚届の効力はどうなるのでしょうか。 離婚の届書を作成後、受理までの間に、当事者が死亡した場合、身分行為は当事者の生存を前提とするので、離婚は当然に無効となり…
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2020年5月7日
協議上の離婚
離婚意思
協議離婚が成立するには、当事者間に協議、すなわち離婚についての意思の合致のあることが、協議離婚の実質的要件です。離婚意思の合致は、届出という方式によって表示されなければなりません。 婚姻や協議離婚等の形式的身分行為は、本人の自由な意…
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2020年5月2日
協議上の離婚
協議離婚と離婚前置主義
民法第763条夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。 本条は、夫婦が、その協議で離婚することを認めています。これを、協議離婚といいます。協議離婚の要件は、夫婦間の協議すなわち離婚意思の合致(実質的要件)と、戸籍法に定める届…
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2019年5月19日
協議上の離婚
離婚届出不受理申出
創設的届出の届出人が、その意思を欠く届出がされるのを防止するために、戸籍事務管掌者に対し、当該届出に対し不受理処分をするように申し出ることを、不受理申出といいます。 不受理申出は、①一旦届書に署名押印した後に、届出意思をなくした場合…
親権争い
子どもがいる場合、必ず親権者を決めなければ離婚を成立させることはできません。二親のどちらかが親権者になるので、場合によっては親権をめぐって争いが起こることも考えられます。
まずは自分が親権者になりたいかを考え、親権者になりたい場合は準備を進める必要があります。親権者を決めるときに大きな判断要素の一つとなるのが「子どもの現在の生活」です。子どもを保護して育てている親が、親権者としてふさわしいと判断される可能性があるということです。
そのため、親権者になりたいと考えるための準備は、子どもを手放さないようにすることです。離婚に向けて別居するときには、子どもを置いて出ないことです。逆に相手が家を出るときには、子どもを渡さないことが大切です。一度子どもと離れてしまうと、あとで引き取りたいと思っても拒否されるケースが多いので、難しくなると知っておく必要があります。
子どもの生活費の試算
離婚によって子どもの生活が脅かされるようなことがあってはなりません。離婚後、未成年の子どもは、独り立ちするまで養育費を受ける権利があります。離婚にあたっては、二親がどのように養育費を負担するかを話し合うことになります。それに備えて、子どもの生活費はどの程度必要なのかを試算しておくことも大切です。まず、夫婦それぞれの収入を把握したうえで、子どもの衣食住の費用や教育費、医療費などがどれだけかかるのかを確認していきます。保険会社のウェブサイトでは、進学先に応じた教育費の目安などが掲載されているので参考になります。
子ども進学先の確認
子どもを連れて引っ越しを検討する場合は、子どもの学校の転校手続きや保育園・幼稚園の転園を考える必要があります。子どもの進学時期などにあわせて、離婚のタイミングを決定するのも一つの方法です。手続きについては、市区町村役場やそれぞれの学校に確認しておきましょう。一人親家庭は、保育園の入園が優先されやすくなりますが、自治体や時期によっては待機児童数が多く、すぐに入園できるとは限りません。仕事をしていることも入園の優先条件となることが多いため、専業主婦のひとは就職の準備を進めておく必要があります。
仕事を持ちながら子育てをするときは、放課後や学校の休み期間中あるいは病気のときの子どもの預け先を調べておくことも大切です。一人親家庭が受けられる手当や支援もあるので、市区町村役場の窓口で話を聞いておくことも大切です。
就職は離婚前にするのが理想
現在職についていない場合は、離婚後の生活に備えて早めに職探しをしておきたいところです。特に一人親の職探しは厳しいのが現実です。残念なことですが偏見を持っている人もいますし、子どもが体調を崩したときに休むとなると、採用側も消極的になりがちです。
職探しにあたっては、高望みをしないことが肝心です。正社員になるのが難しいときは、パート社員やアルバイトからはじめて、登用制度によりステップアップをする方法もあります。
最低限生活に必要なお金がわかっていれば、どの条件まで妥協できるかわかります。また、ハローワークが行なっている就職支援制度を利用するのもよいでしょう。
離婚前の資格取得
できるだけ有利な就職ができるように、スキルアップしておくことも大切です。特にIT系の職場などでは、求められるスキルも日々変化しているので、独身時代に就職経験があっても通用するとは限らないと知っておくべきです。最低限のスキルとして、パソコンの基本操作は必須といえます。各種の講習や書籍などで身につけておきましょう。
ハローワークが行う就職支援制度では、パソコンの操作や専門職のスキルを教えるものから、就職活動のノウハウやアドバイスを提供するものまであります。また、こうした制度を活用するにあたって、一人親向けに託児サービスを提供しているところもあります。最寄りのハローワークに問い合わせてみましょう。一般的に、専門的な資格を持っていると就職には有利です。
離婚前から学校に通って資格取得に向けた勉強をしておく方法もあります。資格の難易度によっては準備期間が長期化します。
離婚に先立って、資格を取得するのがベストですが、アルバイトをしながら資格取得の勉強をして正社員を目指す道もあります。
離婚の手続き費用
離婚では、手続き自体にもお金が必要です。この費用がどのくらい必要なのかチェックし、準備しておくことも大切です。
協議離婚であれば、ほとんど費用はかかりませんが、話し合った内容を公正証書にする場合は、作成費用がかかります。作成を、司法書士などの専門家に依頼すると費用はかかりますが、考えた文案をチェックしてくれたり、法律的なポイントを押さえてくれたりするので安心です。
調停離婚の場合は、自分で手続きをすれば、1,000円程度の収入印紙代と郵便切手代だけで済みます。弁護士に依頼すれば費用が高くなりますので、美馬司法書士事務所では安価に離婚調停の申込書を作成いたします。また、家庭裁判所に出頭する場合のノウハウもお教えします。
裁判離婚を選択する場合は、裁判を起こすための印紙代などが必要になります。調停も裁判も、結論が出るまでは数ヶ月から長いときは一年以上かかることもあります。その間、何度も裁判所に出向くことになるので、その交通費がかかるほか、仕事を休んで裁判所に行くとなると、その分の収入が減ることも考えられます。
調査会社の費用・弁護士費用
離婚の原因が相手方にあることを証明したいとき、調査会社に証拠集めを依頼すると、高額の調査費用が必要になります。
調停手続きは自分一人でできますが、裁判離婚となると手続きが複雑であり、弁護士への依頼が必要になるでしょう。弁護士と契約するときには、相談料、着手金、報酬、日当、実費などの諸経費がかかります。
離婚手続き中のお金
離婚の手続きを進めるために別居を選択したときは、その間の生活費を準備しておかなければなりません。アパートなどを借りるなら引っ越し費用に加えて、敷金・礼金などまとまったお金が必要です。家電製品や日用品を買い揃えるときは、購入費用を試算しておく必要があるでしょう。
別居中の生活費は婚姻費用として扶養能力のある方が、負担する義務があります。収入のない専業主婦などは、夫婦の話し合いで合意できたときや家庭裁判所で支払いを命ずる審判が出たときは、別途費用を負担してもらえる可能性があります。
ただし、婚姻費用だけでは生活費が十分にまかなえないことはありえます。また、裁判所で婚姻費用の支払いを命じる審判が出ても支払われず、差し押さえる財産もない場合は、婚姻費用は得られません。
最初から婚姻費用を当てにするのではなく、ある程度の貯金をしておくなどの計画が必要になります。
離婚後の生活費
離婚に際して、財産分与や慰謝料を得ることはできたとしても、それだけで十分なお金を得られることは、一般的にあまりありません。行き当たりばったりではなく、離婚後のお金のやりくりを考えてみましょう。毎月の衣食住にかかるお金のほか、通信費や医療費、子どもの教育費など、わかる範囲ですべて書き出して確認してください。
毎月必要な最低限のお金がわかったら、収入の見込みを計算します。仕事をしている人は、月収がベースとなります。児童扶養手当てなどの公的支援の内容と金額もチェックしておきます。養育費を受け取る予定があれば、お互いの収入をもとに算定表からおおよその養育費がわかります。
これらすべてわかった範囲で、表などに書き出してみましょう。ただし、養育費が支払われなくなることに備えて、養育費は貯金にまわすつもりで予定しておくのが懸命です。
収支をもとに計画をする
毎月の生活費に対して、収入が足りないと予想されるときは、「就職・転職する」「仕事を増やす」などの選択肢を検討しなければなりません。キャリアにブランクがある人は、ハローワークの職業訓練制度を利用して、職業訓練校に通うのもひとつの方法です。
安定した収入を確保してから、別居や離婚の話し合いを切り出すのが理想です。どうしてもすぐに収入を増やす見通しが立たないときには、離婚の準備を遅らせる、実家に戻って家賃の負担を抑えるなどを考えるのがよいでしょう。
離婚後のお金のやりくりを慎重に判断したうえで、余裕をもったスケジュールを立てることが大切です。
なお、養育費の約束は守られないことが多々あります。離婚母子家庭で養育費を受けている割合は、約24%です。養育費の支払いが遵守されない厳しい現状です。
離婚に向けての準備
離婚は、特別珍しいことではありません。近年の離婚件数は、「約2分に1組」のペースと数多くの離婚が成立しています。
離婚は、法的な手続きであり、離婚届を役所に提出して、夫婦のうち一方の籍が抜かれることで成立します。後悔しないように、離婚に向けて準備すべきことを整えてから司法書士などに相談しましょう。
離婚に向けて準備すべきこと
1:離婚の理由を明確にすること
協議離婚には、夫婦の合意が必要となるため、相手を説得できるだけの明確な離婚理由を準備しておく必要があります。
裁判での解決を目指すときには、法律で認められた離婚理由に該当しているかが問われるため、具体的な証拠なども準備しておく必要があります。
2:お金の準備
離婚を成立させるまでの手続きそのものにもお金がかかりますが(特に裁判離婚)、離婚後の生活を成り立たせるためには、長期的な視野から経済的な収支を見通しておくことが大切です。
財産分与の話合いに備えて、結婚後に築いた財産がどのくらいあるのか確認しておくことが必要です。
裁判費用や専門家に支払う費用など、離婚の手続きに備えてお金の準備はどうしても必要です。
3:子どものための準備
親権者になりたいときは、子どもを引き取るための準備をする必要があります。
子どもの進路や預け先についても調べておく必要があるでしょう。
養育費がどれくらいになるかを調べておくことも非常に大切です。
離婚後の問題
お金の問題
離婚したら、収入や子どもとの生活に大きな変化が生まれます。どんなことが起きるのか、何に困るのかなど、各種事例を調べながら自ら想定しておく必要があります。
離婚すると直面するのがまずお金の問題です。
離婚前から働いていて、離婚後も仕事を続ける見通しが立っている人はすぐに生活費に困ることはないかもしれません。しかし、長年専業主婦として生活してきた人は、生活費を確保するために仕事を探す必要があります。正社員として就職するのは決して簡単ではありません。近年の統計では、パート・アルバイトなどの非正規雇用労働者の割合は、労働者全体の38.3%というデータがあります。
離婚後の生活場所についても、あらかじめ考えておく必要があります。離婚後には、夫婦のどちらか(あるいは両方)が新しい住まいを探すことになります。住居を借りる場合には、敷金・礼金、引越し費用などがかかります。実家に頼ることができるなら、実家に転居することも一つの方法です。
子どもの問題
子どもについては、どちらが引き取って育てるかという問題だけでなく、養育費の支払いをどうするかも大きな問題です。仕事と育児の両立を目指すのであれば、子どもの預け先についてもしっかりと考えなければなりません。
子ども本人が両親の離婚をどう受け止めるのかという精神面でのケアも重要です。離婚したからといって、必ず子どもが不幸になるわけではありませんが、子どもの幸福を第一に考えることが大切です。
また、親の介護を抱えている場合は、介護と仕事、育児との両立をどうするのかも考えておかなければならなりません。
財産の把握
離婚するまでには、さまざまなお金の問題をクリアしなければなりません。まず離婚まで別居する場合、婚姻費用の分担が問題になります。これは、扶養能力のある方が、生活費を支払うというものです。
結婚している間に築いた財産は、どちらの名義になっていても共有財産として分割します(財産分与)。
このほか、結婚生活を破綻させた側が支払う慰謝料や、将来の生活費として受け取る年金の分割、離婚後の子育てに必要なお金、子どもと別居している親が支払う養育費などがあります。
財産の把握時期
一度離婚を切り出してしまうと、相手がもっている通帳などをチェックするのは難しくなります。離婚を考えた時点で、財産の把握をはじめましょう。財産の内容がわからないと話し合いもできず、請求額が減る、請求ができないなどのおそれもあります。
なお、財産はプラスの財産だけとは限りません。住宅ローンや借金など、マイナスの財産もどのくらいあるのかをチェックしておきましょう。これらは、財産から差し引かれることになるからです。
離婚原因を作った側から離婚することはできるでしょうか。
浮気した本人からの離婚請求
夫婦のうちで浮気をした方が浮気相手と結婚するために、裁判で離婚を求めたらどうなるのでしょうか。
離婚の原因を作った側(有責配偶者)からの離婚請求を、裁判所は原則として認めていません。常識的にみて、あまりに身勝手だからです。
なんの責任もない人が離婚を拒否しているにもかかわらず、原因を作った側からの離婚請求を認めたら、それは裁判所が原因を作った側に加担するようなものです。ですから、裁判の過程で、原告が離婚の原因を作ったことがわかれば、請求は棄却されます。
しかし、1987年の最高裁判決は、原因を作った側からの離婚請求をはじめて認めました。この夫婦の場合、別居期間が36年の長期とわたっていたことが大きな材料となりました。近年は1年半の別居で離婚が認められたケースもあります。あくまで総合的な要素で判断されるということです。
一方的離婚は、関係が回復する見込みがまったくない夫婦に、戸籍だけの関係を強制するのはかえって不自然だ、という考えにもとづき、判決したものです。これを「破綻主義」といいます。関係が完全に破綻している夫婦に対しては、前向きな解決策の一つとして離婚を選択してもいいのではないか、これが近年の裁判所の考え方です。離婚の成立を優先して「どちらに責任があるか」という問題は後回しにしよう、というものです。
厳しい条件のクリア
訴えられる側からしたら、相手が原因で関係が破綻したのに、「もう破綻しているから離婚を求める」と言われるのは、納得がいきません。
裁判所もそのあたりを考慮し、離婚の原因を作った側が離婚請求を行うにあたっては、厳しい条件をクリアしなければならない、としています。もちろん、条件をすべて満たしているからといって自動的に離婚が認められるわけではありません。
裁判の審議では、訴えられた側に責任がないという点が重視されます。離婚を認めるかどうかの判断だけでなく、財産をどう分けるかや慰謝料を決める際にも訴えた側は不利な立場になるということです。
有責配偶者から離婚するときの最低条件
- 別居期間が長いこと
別居開始から、かなりの期間が経過していることです。具体的に、どれくらいかは期間に基準がなくケースごとに判断されます。 - 未成熟の子どもがいないこと
未成年で親の養育が必要な子ども、病弱などの理由で経済的に自立できない子どもがいる場合に離婚が認められにくいようです。 - 相手が過酷な状況におかれないこと
離婚後、相手方が精神的経済的に過酷な状況におかれ、多くのダメージを受けないかが重視されます。
離婚判断に際して考慮されること
有責配偶者としては、次のような点が考慮されます。
- 別居後も、相手の婚姻費用を負担してきたか否かです
- 財産分与や慰謝料について、誠実な提案を行なったか否かです
- 離婚後の相手方の生活保障について提案しているか否かです
訴えられた配偶者について、配偶者が考慮されることとして、①離婚の拒否が単なる報復になっていないか②仕事があり独立して生計を立てることができるかどうか③夫婦の関係回復に努力してきたか④自分の側にも離婚の原因があったか、です。
長期間治る見込みがない精神病
配偶者が、夫婦助け合って生活していく義務を果たせないほどに重い精神病を患った場合には、離婚の理由として認められることがあります。
対象となる精神病には、統合失調症、早期性痴呆、アルツハイマー病などがあります。これらを患っている期間が長く、治る見込みがないときに限られます。アルコール、薬物などの依存症、ノイローゼなどの神経症は、重い精神病に当てはまらないとされます。
ただし、これらの病気を患っている人が家出を繰り返しているような場合や、相手が困ることがわかっていて生活費を渡さないような場合は「婚姻を継続しがたい理由」で対応することになります。
離婚成立の条件は困難
重い精神病を患うのは不可抗力でもあり、夫婦は助け合わなければなりません。したがって、精神病を理由に離婚が認められるには、幾つもの条件を満たしていることが条件になります。
まず病気の状態や本当に回復の見込みがないのかを確認するために、精神科医が鑑定した診断結果を提出する必要があります。また、これまで誠実に看病してきたなど、病気の回復に尽力してきたかも判断の要素となります。
さらに、精神病を患っている人が今後経済面や療養で困らないよう、具体的な対策を立てることも求められます。たとえば離婚後には、患者本人の実家がサポートすることが決まっているなど、金銭的にも配慮する準備が必要ということです。
すなわち、重い精神病が離婚の理由に認める条件としては次のようなものです。
- 重い精神病であること
夫婦として生活していくことが難しい状態です。相手のことが理解できても、独り言を繰り返す、幻覚に向かって叫ぶなどの症状が出るのは、一つの例です。 - 回復の見込みがないこと
治療を続けても回復する可能性がないことは、医師の診断書が判断材料です。投薬などで回復の見込みがある場合は、離婚は認められません。 - 治療が長期間にわたっていること
- これまで献身的に患者の面倒をみてきたこと
重い精神病にかかったからといって、病気になった本人を見捨てるような行為は認められません。看病している側の負担に配慮して、結婚生活を続けられるかどうかを慎重に判断します。 - 今後の患者の生活の見通しがついていること
離婚が成立しても、精神病の患者本人が安定した生活を送れるかどうかが判断の基準になります。
婚姻破綻
結婚を続けられない重大な理由があったときは、離婚原因の一つです。「お互いに結婚生活を続ける意思がまったくない、あるいは片方に離婚の意思がなくても、結婚生活が破綻し、回復する見込みがない」とき「その他婚姻を継続しがたい重大な理由」として、離婚裁判で扱われます。
現実として夫婦関係が破綻する原因はさまざまです。具体的な理由として、民法が定めた配偶者の不貞行為、配偶者の結婚義務違反、配偶者の生死が3年以上不明、配偶者が重い精神病にかかり回復の見込みがないとき以外に、結婚を続けられない重大な理由があったときが定められています。結婚生活が破綻して、元通りになる見込みがないなら、そうなった理由がなんであっても離婚を認めていいのではないか、という趣旨です。
結婚生活の破綻が認められるケース
この離婚理由では、具体的な原因よりも「どれだけ関係が破綻しているか」が重視されます。ですから、「性格の不一致」であっても、離婚が認められるケース、認められないケースがでてきます。訴えた側が主張する理由が、本当に夫婦の関係を壊したのか、そして本当に元通りになれないのか、裁判官が夫婦の事情をもとに最終的に判断します。
具体的なケースとして、次のようなものが考えられます。
- 性格の不一致
相手の価値観や生活に我慢ができないような場合です。ケンカが絶えない、会話がまったくない、まったく愛情を持てない、子どもの教育方針がまったく異なる、などが考えられます。 - 暴力・精神的虐待
肉体的な暴力だけでなく、暴言などの精神的な暴力があった場合です。具体的には、殴る蹴るの暴行を受けた、何度も「死ね」と言われた、長期間無視された、などです。 - 浪費・借金
生活費を一方的に使い込んだり、お金を借りて趣味に注ぎ込んだりしたときです。そのせいで生活に困り、通常の暮らしができなくなった場合です。具体的には、給料のほとんどをギャンブルにつぎ込んだ、遊びのために子どもの教育資金を持ち出した、などです。 - 家庭をかえりみない
育児にまったく協力しない場合です。具体的には、配偶者が病気で寝ているのに、家事をまったくしないとか、子どもの学校行事があるのに一人で海外旅行に行く場合などが考えられます。 - 相手の親族との不仲
双方の親や親族と対立したり、不仲になったりした場合です。具体的には、配偶者の両親から繰り返し暴言を受けた、相手の親族から暴力を振るわれた、などがあります。 - 宗教にのめり込む
家庭生活が疎かになるほど、過度な宗教活動を行っている場合です。具体的には、宗教活動のために家事や育児を放棄したとか、宗教グッズ購入での浪費、入信の教養などです。 - 飲酒
過度のアルコール摂取により、家庭が崩壊している場合です。たとえば、朝から酒を飲み仕事をしないとか、給料の大半を飲み代に使ってしまうなどです。 - 性生活の拒否・強要
夫婦が性生活に不満を持っている場合です。たとえば、SM行為を強要する、無理やり性的行為を迫る、相手からの性交渉をまったく受け付けない、などです。
同居義務違反の基準
- 配偶者の承諾を得ないで勝手に別居している場合は、悪意の遺棄とみなされます。
- たびたび家出をするとか、浮気相手の家に入り浸っている場合も同居義務違反とみなされます。
- 配偶者を家に入れない、配偶者を虐待して追い出すことは同居義務違反とみなされます。
- 単身赴任や病気療養で別居している場合は、同居義務違反とみなされません。
- 夫婦関係をやり直すため、一時的に別居している場合は同居義務違反とみなされません。
- 配偶者の暴力を避けるために家を出ることも、悪意の遺棄とみなされません。
同居義務違反の証拠
- 別居したことがわかる住民票とか別居している家の賃貸契約書は、同居義務違反の証拠になります。
- 別居の経緯を記したメモとか、同居の拒否を示す録音データは同居義務違反の証拠になります。
- 一方的に家を出ていったことを示す手紙・メールは、同居義務違反の証拠となります。
扶助義務違反の基準
- 最低限の生活費を渡さないことは、扶助義務違反とみなされます。
- 病気の配偶者を看病せず放置したことは、扶助義務違反とみなされます。
- 生活費の大半を趣味やギャンブルに使いこむことは、扶助義務違反とみなされます。
- 健康なのに働かないとか、生活費を送る約束で別居したのに送らない場合は、扶助義務違反とみなされます。
- 家事に専念するため職に就かないことは扶助義務違反とみなされません。
- 配偶者が一方的に家を出たときに生活費を渡さないことは、扶助義務違反とみなされません。
扶助義務違反の証拠
- 生活費を渡されていない場合は、源泉徴収票や預金通帳が証拠となります。
- 収入の大半を、趣味やギャンブルにつぎ込んでいるなら、購入した現物やレシート、クレジットカードなどの明細書が証拠となります。
協力義務違反の証拠
- 家事・育児を放棄しているという場合は、そのことで家庭生活がなりたっていない様子を定期的に映像や写真にとっておけば、証拠になるでしょう。
- 妻が専業主婦の場合でも、夫に家事や育児の義務がないわけではありません。これらを放棄している場合も協力義務違反にあたることがあります。
3年以上の生死不明
配偶者と音信不通になってから3年が過ぎ、生死もわからないときには、離婚を求めて裁判を起こすことができます。最後に相手といつ連絡をしたかを証明するには、消印付きの手紙や電話の通話履歴、メールの履歴が有効です。また、相手をさがす努力をしたことを示すために、警察に捜索願いを出したことがわかる受理証明書が必要になります。
また親戚や知人、仕事の関係者などに「○○年以降に連絡はなく、見かけてもいない」という陳述書を書いてもらう必要があります。このときに「連絡を受けた」「本人と思われる人を見た」という証言があると、生存の可能性があるとみなされ、離婚理由として認められません。
行方がわからなくても相手から電話や手紙などがあり、生きているということが明らかな場合には、「生死不明」という離婚理由には当たりません。「行方不明」の扱いとなり、この状況で離婚をするには、「悪意の遺棄」か「婚姻を継続し難い重大な事由」として、裁判を起こすことが必要です。
なお裁判で離婚が認められたあとで、相手の生存がわかっても、離婚が取り消されることはありません。
配偶者が生死不明のときの離婚方法
- 3年未満のとき
3年未満の場合は、「悪意の遺棄」か「婚姻を継続しがたい重大な理由」にあてはまると裁判でみとめられた場合、離婚が成立します。 - 3年以上7年未満のとき
相手からの連絡や消息が最後にあってから「3年以上生死不明」を証明できれば、離婚が認められます。 - 7年以上のとき
2と同じ理由で、裁判を起こせば確実に離婚できる可能性が高いため、離婚としては一般的な方法といえます。
この場合、失踪宣告の申立てもできます。失踪宣告の審判を受けると、生死不明者は死亡したとされ、婚姻関係が解消されます。ただし、後日生きていた場合、取り消されることになります。
性的関係をともなう浮気
法律で認められた5つの離婚理由のうち、1つめの「不貞行為」とは、配偶者以外と性的な関係をもつことです。つまり、セックスをともなう浮気を指します。
1回限りのことなのか、特定の異性なのか、愛情をともなうか、何回会ったのかなどは、関係ありません。配偶者以外と性的関係をもったという事実があれば、それが離婚理由になるのです。酒に酔ったために1回だけの浮気などの理由は通用しません。
性的暴行を受けた被害者のケースは、不貞行為とは除かれます。あくまで、本人の自由な意思で性的関係をもったかどうかが問題とされます。
離婚に向けた別居中にほかの異性と性的関係をもった場合は、どうでしょうか。
婚姻関係がすでに破綻していたと裁判所が認めれば、不貞行為とされません。しかし、別居が数カ月に過ぎないときは、関係が破綻していないとされ、不貞行為と判断されることがあります。
性的関係の証拠
相手が浮気を認めず、証拠もない場合、不貞行為は認められず、離婚は成立しません。裁判で離婚を勝ち取るには、証拠を集める必要があります。
性的関係があったことを証拠とする際、もっとも効力があるのは、浮気の現場をおさえた写真やビデオの映像です。実際に行為中のものを撮影するのは難しいでしょうが、ラブホテルに出入りする写真やビデオは、性行為があったと推測されるので、証拠となりえます。
浮気相手方への外泊や不倫旅行などの写真や映像をとっても、性的関係が本当にあったかどうかはわかりませんが、証拠としての効力はあります。通話履歴やメールのやりとりも証拠として無視することはできません。相手に浮気の事実を認めさせる材料ともなりうるので、離婚の準備をするには、収集することをおすすめします。多くの人は、自分で浮気の証拠集めが難しいでしょうから、探偵・調査会社に依頼しているようです。
不貞行為の内容
- 特定の異性と関係をもち続けていることは、不貞行為に該当します。
- 初対面の相手と一度だけ関係をもった場合も不貞行為に該当します。
- 愛情はないが、単にセックスフレンドとして付き合っている行為も不貞行為となります。
- 性的関係のない浮気相手に愛情を抱いているだけでは不貞行為とみなされません。
- いつか性的行為をしたいと考える相手がいるが、現状は関係をもっていない場合は、不貞行為とはみなされません。
- 本人の意思に反して、性的暴行を受けた場合も不貞行為とはみなされません。
- 同性と性的関係を続けている場合は、どちらともいえません。
なお、2021年、同性同士の性的行為を「不貞行為にあたる」とし、慰謝料の支払いを命じる初の司法判断が下されました。従来は、不貞行為にあたらないとする見解が有力でしたが、性的少数者への理解が進む状況が反映されつつあります。 - 日常的にキスをしたり触れ合う相手がいる場合も、どちらともいいきれません。
悪意の遺棄
離婚理由の2つめは、悪意の遺棄です。民法では、婚姻にともなう3つの義務を定めており、これを故意に怠ることを法的に悪意の遺棄といいます。
- 同居義務
夫婦が一緒に住む義務です。 - 扶助義務
生活費を出し合ってお互いが同レベルの生活が送れるようにする義務です。やむをえない理由で片方が無収入なら、もう片方が助けなければなりません。 - 協力義務
力を合わせて暮らしを維持する義務です。
ただし、以上の3つの義務を怠っただけでは「悪意の遺棄」と認められません。「悪意」とされるのは、故意が必要です。すなわち、「これで夫婦の暮らしを破綻させてやろう」と相手が困ることがわかったうえでやっているかが必要です。また、そこまで意識していなくても、「これで結婚生活が破綻しても構わない」と考えていることが必要かと思います。また、「遺棄」とは夫婦の義務を怠った状態を知りつつも放っておく状態を指しています。
協議離婚
協議離婚は、夫婦の話し合いだけで成立させる離婚です。お互いが離婚に合意し、市区町村役場に離婚届けを提出受理されれば成立します。協議離婚のメリットは、費用と手間がかからない、合意すればすぐに離婚できるという点です。離婚届には離婚理由の記入は不要です。
夫婦が合意していれば、どんな理由で離婚しても構いません。しかし、夫婦で合意できない限り、いつまでたっても離婚ができない、というデメリットがあります。
また、慰謝料や養育費などお金に関する話し合いが曖昧なまま離婚すると、あとでトラブルに発展する恐れもあります。また、話し合いの結論に不本意なのに、「一日も早く離婚したい」といった理由で合意してしまうケースも多いというのが実情です。
調停離婚
調停離婚では、2名の調停委員と裁判官からなる調停委員会が、夫婦それぞれの意見を調整し、解決に向けたアドバイスを行います。第三者が間に入ることで冷静に話し合いを進めることができ、話し合う内容にも漏れがなくなります。調停委員会は、双方が合意したところで、調停調書を作成します。調停調書とは、離婚の調停で夫婦が合意した場合に作成される合意文書のことです。家庭裁判所が作成するため、本人たちが作成する必要はありません。
調停離婚は、お互いの歩み寄りがなければいつまでも調停は続き、未解決のまま調停が終了することもあります。また、調停では、自分勝手な理由からでの離婚は認められません。社会の常識にあっているかが、調整委員会によって問われます。
裁判離婚
裁判離婚は、夫婦のどちらかが家庭裁判所に離婚裁判を起こし、裁判所の判決によって決着をつける方法です。裁判離婚では、「離婚するかどうか」だけでなく、子どもの親権をどうするか、夫婦の共有財産をどうするか、将来の年金をどう分けるか、といった問題についても同じ手続きのなかで処分を求めることができます。
裁判離婚では法に基づいた公平な判決がくだされ、判決にしたがわない場合は、強制的に応じさせることができます。
裁判離婚では、裁判を有利に進めるための証拠を集め、相手の言い分に説得力のある反論をしなければなりません。通常は、弁護士に依頼して、裁判を進めるため、その費用を負担する必要もあります。
また、法律で決められた理由がないと裁判を起こすことはできないとか、見知らぬ他人が裁判を傍聴するといったデメリットがあります。
離婚制度の特徴
全体の割合としては、協議離婚が約9割です。裁判離婚は1%、残りが調停離婚です。離婚の理由については、協議離婚は問われません。しかし、調停離婚、裁判離婚は離婚の理由が問われます。
弁護士費用などを除いた手続きの費用は、協議離婚はかかりません。調停離婚は、2,000円程度、裁判離婚は20,000円程度、です。
解決までの時間としては、協議離婚は合意すれば即時に解決します。調停離婚は、概ね6ヶ月~1年程度。裁判離婚は、1~2年程度が多いようです。
離婚届の提出は、協議離婚・調停離婚・裁判離婚ともに必要です。ただし、調停離婚・裁判離婚は、相手方の署名・押印・承認の記載は、不要です。
裁判離婚の特徴
裁判で離婚を争いたい場合、離婚理由が必要です。離婚理由は、次のような理由が定められています。
- 配偶者に不貞な行為があったとき
結婚している人が、配偶者以外の人と自由意思で性的関係を持つことです。たとえば、性的行為をともなう浮気、風俗店に通い続けるなどです。 - 配偶者から悪意で遺棄されたとき これは、配偶者が結婚の義務を意図的に怠ったとき、です。
配偶者が理由もなく同居しなかったり、協力しなかったり、生活の保障をしなかったりすることです。たとえば、生活費を家に入れない、家出を繰り返す、病気の配偶者を放置するなどです。 - 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
失踪や家出などにより、配偶者からの連絡がまったくなく3年以上生死がわからない状態です。たとえば、家出して消息がわからない、生きているのかどうかがわからないなどです。 - 配偶者が重い精神病にかかり、回復の見込みがないとき
配偶者が重度の精神病になり、家庭を守る義務を果たせなくなることです。たとえば、統合失調症、認知症、躁うつ病、偏執病、アルツハイマー病などです。 - その他婚姻を継続しがたい重大な理由があるとき
上記1~4に当てはまらないものの、夫婦関係が実際には破綻していると考えられる状態です。たとえば、性格の不一致、性生活の不一致、DV、過度の宗教活動、配偶者の両親・親族との仲たがいなどです。
離婚に際して、夫婦が自力で解決する協議離婚の場合は、離婚届を提出することにより離婚が成立します。この協議離婚は、「お互いが離婚に合意する」「子どもの親権者を決める」の二点をクリアすれば離婚届を提出できます。その際には、子どもの養育費のことや夫婦で共有していた財産をどのように分配するかを決めておくことも必要です。これらの問題について、夫婦で話し合って結論を出すのが協議離婚です。協議離婚は、もっとも一般的な離婚の方法であり、離婚全体の約9割がこの方法によっているという統計があります。
夫婦で納得できる結論がでない場合、あるいはそもそも協議できない場合は、裁判所を通じて第三者である調停委員を間に立てることになります。いわゆる調停離婚です。調停委員は、お互いの言い分を公正な立場で聞き、前例や社会の常識なども踏まえ、お互いに納得できるような条件案を出します。そしてその案を二人が受け入れれば調停離婚が成立します。
どちらか一方が納得しなければ調停は続き、どうしても折り合いが付かなければ結論が出ないまま終了します。ほとんど合意していて、裁判所が離婚を言い渡す場合は審判離婚となりますが、実例はほとんどないようです。
調停で決着がつかない場合に、最後の手段として法廷で決着をつけるのが裁判離婚です。離婚を求めて裁判を起こすためには、法律が定める5つの離婚理由のいずれか一つ以上に当てはまる必要があります。5つの離婚理由とは、配偶者の不貞行為など民法の定めた規定に該当する理由です。裁判をするとかならず結論が出ますし、判決の内容には法的な強制力があります。ただし、弁護士や証拠集めに費用がかかり、また時間もかかります。裁判の途中で和解する和解離婚もあります。また、裁判を起こされた側が請求を全面的に認めると、認諾離婚が成立します。
次に、それぞれの離婚方法についてもう少し検討しましょう。
協議離婚は、夫婦の話し合いだけで離婚に合意すれば離婚届を市区町村役場に提出、受理されれば成立します。協議離婚のメリットは、費用と手間がかからない、合意すればすぐに離婚できる点です。離婚理由の記入は不要ですから、どんな理由で離婚しても構いません。しかし夫婦で合意できない限り、いつまで経っても離婚できないというデメリットがあります。
また、慰謝料や養育費などお金に関する話し合いが未解決のまま離婚すると、あとで紛争になる可能性があります。さらに、話し合いの結論に不本意なのに、ともかく1分1秒でも早く離婚したい、といった理由で合意をしてしまうケースも多々あるのが現状です。
調停離婚では、二名の調停委員と裁判官からなる調停委員会が夫婦それぞれの意見を調整し、解決に向けたアドバイスを行います。第三者が間に入ることで冷静に話し合いを進めることができ、話し合う内容も出尽くします。調停委員会は、双方が合意したところで、調停調書を作成します。
調停離婚は、お互いに歩み寄りができなければ、いつまでも調停は続き、未解決のまま調停が終了することもあります。また調停では、自分勝手な理由での離婚は認められません。社会の良識にあっているかが調停委員会によって問われるのです。
最後に、強制力のある裁判離婚は夫婦のどちらかが家庭裁判所に離婚裁判を起こし、裁判所の判決によって決着をつける方法です。裁判離婚では、①離婚するかどうかだけでなく、②子どもの親権をどうするか、③夫婦の共有財産をどうするか、④将来の年金をどう分けるか、などの問題についても、同じ手続きで処分を求めることができます。離婚裁判では、法に基づいた公平な判決が下され、判決に従わなければ強制的に応じさせることができます。
しかし、裁判を有利に進めるための証拠を集め、相手の言い分に説得力のある反論をしなければなりません。通常は、弁護士に依頼して裁判を進めるため、その費用の負担も必要です。さらに、法律で決められた理由がないと裁判を起こすことができないとか、関係のない他人が裁判を傍聴するというデメリットもあります。
人生のパートナーと、今後の婚姻を継続することがが無理だから離婚する、そんな簡単な理由だけで離婚を考えてはいけません。離婚とは法律上の手続きでして、離婚届を当該役所(市区町村役場)に提出するという手続きが必要です。法律に基づいて処理されるということは、かならず決めておかなければならない決まりがあります。
他方、法律上では明確に決めるように求められていない部分もあります。財産分与についてなどがこれにあたります。このような、決めておくかどうかの判断が、当事者に任されている部分については、自分たちで解決しなければならないことです。
離婚する際に、絶対に解消しなければならない条件があります。
第一に、お互いに離婚することに合意することです。また、裁判上の離婚には、法律上の離婚原因があることです。結婚にはお互いの合意が必要ですが、離婚でそれを解消するときにも、合意または明確な離婚理由が必要とされています。離婚したいからといって、相手の同意もなく強制的・一方的に別れることはできません。離婚したい側にとっては、相手にいかに離婚に合意させるかが重要です。また、離婚したくない側には、合意できない理由にいかに説得力をもたせるかが重要になってきます。
第二の条件として、未成年の子どもがいる場合には、子どもの親権者を決めることが必要です。
夫婦が共同で子どもを守り育てていましたが、離婚手続きをする時点で、別れたあとにはどちらがその役割を果たすのかを決めなければなりません。離婚届出には、離婚後の子どもの養育について、責任を持つ人、すなわち親権者を記載する欄があります。未成年の子どもがいる場合には、親権者を定めて、親権者の名前を記載しないと離婚届が受理されません。
離婚届には、養育費の分担と、面会交流について取り決めの有無を、チェックする欄も設けられています。これらは、子どもの利益を優先するために導入されました。
ただし、養育費と面会交流についての記入は、離婚届を受理するための要件となっているわけではありません。未記入の場合でも離婚届は受理されます。また、取り決めの内容までは問われることはありませんので、夫婦できちんと話し合うことが必要になってきます。
離婚に合意することと、子どもについて取り決めをすること以外にも、お金についての取り決めは問題になってきます。
お金の問題について、まず財産をどう分けるという財産分与が重要です。原則として、結婚後に築いた財産は夫婦の共有財産であり、お互いに二分の一、つまり半分ずつの権利があります。しかし、法律上は、離婚の際の分配については定めてはおらず、離婚手続きに際しても、どのように分配したかを届出る必要もありません。つまり実際にどう分けるかは夫婦の自由ですから、離婚にあたってはきちんと取り決めておく必要があります。
財産分与以外にも、決めておくべきお金の問題はあります。
第一に重要なのは、相手方の不法行為で精神的苦痛を受けた場合に請求できる慰謝料です。具体的には、相手が浮気をしたときや暴力をふるったときなどに請求可能です。
第二に、年金分割があります。年金分割は、婚姻期間中の厚生年金について、夫婦で納付した保険料の総額を分割することです。
第三に婚姻費用です。婚姻費用とは、結婚生活を維持するために必要なお金のことです。家族全員の日常生活のための衣食住の費用です。法律では、夫婦は婚姻費用を分担して、お互いの生活レベルが同等になるように、助け合わなければならないとしています。離婚に向けての協議中・別居中・離婚調停や離婚裁判を行なっている最中でも夫婦の婚姻関係が続いている限り、婚姻費用の分担の義務が生じています。したがって、別居をしながら、離婚に向けて話し合うときにも、話し合いによって婚姻費用の額を決めるようにしましょう。
有責配偶者の離婚請求と調停離婚との関係
夫婦が相当長期間別居し、その間に未成熟子がいない場合には、離婚により相手方が極めて過酷な状態におかれるなど、著しく社会正義に反するような特段の事情がない限り、有責配偶者からの請求でもその請求は許されます。
このような基準に合致しない有責配偶者の離婚調停申し立てがあった場合、調停離婚を成立させることができるでしょうか。
調停離婚を協議離婚に近いものとして理解をすると、肯定してよいでしょう。しかし、判決離婚に近いものとして理解すると、許されないことになるでしょう。
最終的には法の求める趣旨を当事者によく説明し、子の福祉を害するものでない限り、当事者の実質的な利益をはかることが望ましいことと考えられます。
調停離婚の手続き
離婚に関する調停は当事者の申し立てによって開始されるのが通常です。他の一般調停事件と同様、男女二人以上の調停委員と家事裁判官で構成される調停委員会で行われます。原則として本人が出頭し、手続きは公開されません。
調停離婚は、当事者間の合意が前提となっており、離婚は身分行為であるから、調停成立時に離婚意思の存在が確認されることが必要です。調停の進行過程において、代理人のみが出頭し手続きを進める場合があるとしても、最終的に離婚が成立する時点においては、本人の離婚意思を確認することが必要です。
成年被後見人が離婚する場合には、成年後見人の同意を要しないものとします。離婚するには離婚意思が必要ですから、離婚の性質およびその効果を理解する能力が必要となります。その能力があり、離婚意思が確認される限り、被後見人は後見人の同意なくして離婚することができます。しかし、財産分与・慰謝料など財産に関する事項については、成年被後見人は財産を管理する能力のない常況にあるから、その合意には、成年後見人が法定代理人として関与することが必要でしょう。
夫婦関係調整調停の申し立て書式では、通常、財産分与と慰謝料とを区別して申し立てをすることになっており、調停においては、財産分与と慰謝料は区別して、その支払い義務の存否を確認しながら進められるのが通常です。
しかし、その他に、親族からの借入金が問題となったり、婚姻費用が問題となったりし、最終的には、それらを総合して解決金などの表示で総額が定められることも多いでしょう。その場合、財産分与・慰謝料などの離婚請求について、すべて解決できているのか不分明な場合が生じますが、離婚に関して、相互に債権債務がない旨の清算条項があれば、一括して解決済みであると解されます。したがって、後日、その請求をすることはできません。
調停中、離婚や財産分与については合意ができたが、親権者の指定についてだけ合意ができない場合があります。そのような場合、親権者指定以外の情報についてのみ調停を成立させ、親権者指定については審判手続きで処理をすることができないかという問題があります。調停離婚では、判決離婚のように職権で親権者を指定する旨の規定がないことから、未成年者がいる場合でも親権者の指定をせずに調停離婚を成立させることは可能です。
戸籍実務でも、そのような届出も受理されることになっています。
調停離婚の効力
調停により離婚が成立すると、離婚については、確定判決と同一の効力が生じ、付随する乙類審判事項については、確定審判と同一の効力が生じます。ところで離婚訴訟の確定判決では、口頭弁論終結時における離婚原因の存否についても確定されますが、調停では、どのような離婚原因があったのかは必ずしも明示されません。当事者が不貞行為を主張していたとしても、不貞行為の存否が確定されることにはなりません。したがって、離婚という法律効果が、確定判決と同一であるというにとどまり、再審事由がない限り、その効力を覆すことはできないと解するのが通説的見解です。
調停離婚の戸籍届出
調停離婚が成立した場合、申立人は調停成立の日から10日以内に離婚届出書に調停調書の謄本を添付し、所定の届出事項を記載して戸籍の届出をしなければならないのは、審判離婚と同じです。申立人が届出義務を負うことから、相手方において現姓を維持する旨の届出を離婚届と同時にするときは、調停条項の「申立人と相手方は、本日調停離婚する」という文中に「相手方の申し出により」と付記するのが通例です。
調停離婚の意義および性質
離婚に関する紛争は、人事に関する訴訟事件として、調停前置主義が採られています。
原則として、まず、家庭裁判所に調停の申し立てをしなければなりません。調停において、夫婦間に離婚の合意が成立し、調停委員会または家事審判官がその合意を相当と認めて、これを調書に記載したときは、離婚調停が成立します。これが調停離婚と呼ばれるものです。
調停離婚の制度は、家事審判法によって創設されたものです。同法の前進である人事調停法当時は、調停前置ではなく調停の申し立てが淳風にそわないときは、却下または「なさざること」ができ、調停において合意が成立しても、当然に離婚の効果は生じず協議離婚の届出をしなければならなかったのです。
しかしながら、家事審判法は、調停が成立すれば、すべて確定判決と同一の効力を有するものと定めた結果、離婚についても、調停成立と同時にその効力を生じ、離婚の届出を待たずに婚姻が解消することになりました。
調停離婚の法的性質
この調停離婚は、協議離婚、判決離婚とどのような関係に立ち、どのような法的性質を持つかについては、説が分かれています。
第一に、調停離婚を裁判所の離婚とみる説、があります。調停離婚を判決離婚と近似した裁判上の離婚の一種とみるのです。
この説は、調停の本質を裁判とみます。調停も家事審判官が調停委員会を主宰し、また単独で行うものであり、当事者から事情を聴取し、事実の調査、証拠調べなどを行い、調停機関としての判断を提示し、当事者を説得し、納得させるものであるから、裁判と変わりがないと考えるのです。
判決離婚と調停離婚の違いは、実態面と手続き面から考えています。
実態面では、前者が特定の離婚原因の存在が必要であるのに対し、後者は夫婦生活の継続についての絶望的な事実があれば、足りるとしています。
手続き面では、前者が訴訟手続きによることを要するのに対し、後者は家事審判法による簡便な手続きによる点が異なるにすぎません。また、成立手続きについては、前者が直接離婚を宣言するのに対し、後者は勧告、説得などによって、当事者をして調停機関の判断に納得・合意せしめるものであります。
裁判所の機関が、その判断に基づいて離婚を成立させて、届出を待たずに離婚の効力が生ずる点において、両者は共通しているとしています。
第二に、離婚調停を裁判所の離婚とみない説があります。多数説は、調停離婚を裁判上の離婚とみないが、他方、協議離婚とみる説も少数であります。多くは、協議離婚でも裁判離婚でもない独特の離婚制度であると理解しています。
そのなかで、裁判離婚について近いものとしてみるのか、協議離婚に近いものとしているのかについて、説の違いがあります。
各説の検討
調停=合意説については、判断を求めて裁判所にくる当事者に対し、自己決定を求めるのは相当ではないこと、自己決定に委ねると弱者救済が充分にされない恐れがあること、自己決定を理由としてなすべき判断が、回避される危険があることなどの問題点が指摘されています。
また、判決離婚しか認めない国の法を準拠法とする渉外離婚について、調停離婚を認めるのは相当でないことになります。また、現在の日本には、旧民法下の家制度の考え方がなおのこっており、合意を重視するのが相当でない場合があるし、この利益を確保するためには、当事者双方の意思に反して、説得をしなければならないこともあります。
しかし、他方、調停=判断説の問題があります。調停で、証拠調べをすることは可能であるが、実際上、ほとんどは別席調停であり、一方から得られた情報がすべて他方当事者に開示され、その反論の機会が保障されているわけではありません。合意形成を目指す手続きでは、訴訟と同レベルの正確な事実認定を行うことが難しい場合があり、当事者を説得するための前提となる事実について、訴訟的判断と同視できるだけの正確性が担保されていません。
また、夫婦関係には非法の領域があり、法的判断だけでは合意が難しい場合があります。夫婦や子供の問題は、可能な限り当事者が主体的に意思決定できるように配慮することが必要です。
説得の対象として扱うよりも、合意の主体として扱うほうが、紛争の解決方式として望ましいでしょう。そうした諸点を考えると調停の本質を判断にのみ求めるのは相当ではないような気がします。
以上のとおり、判断の重視、合意の重視と言っても、いずれも一律には考えられません。合意と判断の双方に、調停の本質的契機があるとみて、事案に応じてその重点の置き方を考えることが必要であろうと思われる、という考え方もあります。
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