離婚・婚姻の専門解説協議上の離婚
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2020年6月5日
協議上の離婚
詐欺・強迫による離婚の取消し
民法第764条第738条(成年後見人の婚姻)、第739条(婚姻の方式)及び第747条(詐欺・強迫による婚姻の取消し)の規定は、協議上の離婚について準用する。 成年被後見人が、協議離婚をするには、その成年後見人の同意を要しません。成年…
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2020年6月3日
協議上の離婚
事実上の離婚
事実上の離婚は、それのみで問題となることは、ほとんどありません。通常は、当事者の一方に生じた内縁配偶者との関係で、法律婚配偶者と重婚的内縁配偶者とのどちらに婚姻の効果を認め、保護すべきかという文脈で問題となります。 重婚的内縁は、法…
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2020年5月28日
協議上の離婚
離婚の予約
離婚の予約とは、将来協議離婚をしようと約すること、をいいます。 婚姻前に離婚の予約がされる場合には、条件付きまたは期限付きの婚姻の合意として、婚姻の意思の問題になります。婚姻の意思に、条件や期限を付けることは許されないので、婚姻意思…
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2020年5月23日
協議上の離婚
協議離婚の無効と取消し
当事者の一方に届出意思を欠く場合は、協議離婚は無効となりますが、この場合に、その協議離婚の無効を追認することは、認められるでしょうか。すなわち、有効な協議離婚とすることが認められるのでしょうか。 夫が、無断で協議離婚の届出をしたのを…
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2020年5月13日
協議上の離婚
離婚意思の存在時期
有効な届書を作成後、受理までの間に、当事者の一方が離婚の意思を失った場合、離婚届の効力はどうなるのでしょうか。 離婚の届書を作成後、受理までの間に、当事者が死亡した場合、身分行為は当事者の生存を前提とするので、離婚は当然に無効となり…
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2020年5月7日
協議上の離婚
離婚意思
協議離婚が成立するには、当事者間に協議、すなわち離婚についての意思の合致のあることが、協議離婚の実質的要件です。離婚意思の合致は、届出という方式によって表示されなければなりません。 婚姻や協議離婚等の形式的身分行為は、本人の自由な意…
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2020年5月2日
協議上の離婚
協議離婚と離婚前置主義
民法第763条夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。 本条は、夫婦が、その協議で離婚することを認めています。これを、協議離婚といいます。協議離婚の要件は、夫婦間の協議すなわち離婚意思の合致(実質的要件)と、戸籍法に定める届…
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2019年5月19日
協議上の離婚
離婚届出不受理申出
創設的届出の届出人が、その意思を欠く届出がされるのを防止するために、戸籍事務管掌者に対し、当該届出に対し不受理処分をするように申し出ることを、不受理申出といいます。 不受理申出は、①一旦届書に署名押印した後に、届出意思をなくした場合…
戸籍謄本の入手
離婚によって姓が変わった人は、各種の手続きに証明書が必要になることがあります。
自分ひとりの証明なら戸籍抄本(戸籍個人事項証明書)で構いませんが、子どもを自分の戸籍に入れたなら戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)の方がいろいろな手続きに使えます。子どもの戸籍が元配偶者のもとに残っている場合は、戸籍謄抄本はそちらから取ることになります。
手続きによっては、結婚時の戸籍から除籍されたことを証明する必要があります。その場合、元配偶者の戸籍謄抄本かその戸籍が存在しなくなった場合は、除籍謄抄本を交付してもらうことになります。元の配偶者の戸籍には、除籍されたとはいえ、自分のデータが載っていますから、第三者扱いはされず本人として交付の申請ができます。
戸籍謄抄本は手続きによく使うので、少し多めに入手しておきましょう。謄抄本そのものは記載が変わらない限り有効ですが、手続きに添付する際は交付から3〜6か月以内のものを求められます。
現住所の証明には住民票の写しを申請します。手続きによっては、本籍の記載がある住民票が求められるので、まとめて取るなら本籍記載にしておくと便利です。
日常的に使うものから変更
変更手続きは、運転免許証やパスポートなど、国や自治体が発行しているものから行いましょう。本人確認に使えて便利だからです。
続いて、生活に欠かせないサービスの変更手続きをしていきます。携帯電話、自分名義の預貯金、クレジットカードの名義を変更し、公共サービスの氏名・住所変更と支払い口座を変更します。なお、住所確認のために関係書類が郵送されることもあります。このとき誤って以前の住所に送られる場合もありますので、郵便局に転送サービスを申し込んでおきましょう。
社会保険の手続き
離婚する前、配偶者の被扶養者となっていた人は、離婚後は自分が社会保険の加入者になります。加入していないと児童扶養手当などの公的支援を受けられないことがあるので、注意が必要です。
加入にあたっては、元の配偶者の扶養から外れたことを証明する必要があります。配偶者の勤め先から資格喪失証明書か扶養削除証明書を入手してください。年金事務所でも時間はかかりますが、入手することは可能です。
社会保険の変更・加入手続き
年金について、若干の説明をいたします。
第一号保険は、国民年金のみに加入している人です。
第二号保険は、国民年金と厚生年金に加入している人(会社員・公務員)です。
第三号保険は、第二号被保険者の被扶養者です。
第一号被保険者だった人は、そのまま国民年金に継続して加入しますが、氏名と住所が変わった場合は、市区町村で変更手続きを行います。
第二号被保険者だった人は、勤務先に変更がない場合は、そのまま継続して厚生年金に加入します。必要に応じて勤務先で変更の手続きをしてもらいます。
第三号被保険者だった人は、第一号被保険者への変更手続きが必要となります。手続きについては、最寄りの年金事務所で確認することもできます。
このように、年金については専業主婦で配偶者の扶養から外れた人は、すぐに第三号被保険者から第一号被保険者へ種別変更をしましょう。手続きが遅れて未納の期間が生じると年金を受給する際にペナルティを課されるからです。
保険料を払えそうにないなら、保険料免除制度を利用しましょう。免除されている間も納付期間としてカウントされます。このため、未納期間は生じませんが将来受け取れる年金の額は減ります。その後、経済的に余裕ができたら後納制度を利用して穴埋めすることをおすすめします。
なお、働いている人は勤め先が変更手続きをしてくれるので、自分で行う必要はありません。ちなみに、国民健康保険の加入期間ですが、国民健康保険の受給資格を得るには、最低25年の加入期間が必要で、1か月でも不足すれば老齢年金が納付されません。
健康保険の手続き
健康保険は、勤め先の被用者保険(会社や事業団体が運営している健保)に入っている人は、手続きも勤め先が進めてくれます。同居している子どもがいる場合、子どもを被扶養者に登録した方がいいでしょう。
この手続きは、元の配偶者が子どもを被扶養者から外していないと勧められません。本人に頼むか、本人の勤め先に問い合わせるようにしましょう。
休職中や勤め先に被扶養者保険がない人は、国民健康保険(国保)の加入手続きを行いましょう。窓口は市区町村役場です。住民票があれば自動的に被保険者になりますが、利用するには手続きが必要です。
なお、国保は世帯単位で加入するものなので扶養制度がありません。子どもが親の世帯に入っていれば、その保険料は世帯主である親がまとめて支払うことになります。
児童の入退園・転校手続き
保育園の入退園手続き
離婚後に幼い子どもを抱えて働くことになったら、認可保育園への入園を検討しましょう。一人親家庭の子どもは、優先的に入園させてくれます。親が働いていることが原則ですが、今は無職でも仕事探しをしているならば受け入れてくれます。また、家庭生活支援員が、一人親の子育て支援や生活援助をしてくれる公的援助もあります。
認可保育園の手続き窓口は、公立・私立に関係なく自治体です。入園申込書や就労証明書など必要書類を提出します。退園する場合は、退園届を提出します。ゆとりを持って届けないと、規定の期間までの保育料を支払うことになるかもしれません。
小学生の場合、学童保育を利用できます。放課後子ども教室やボランティアが子どもの勉強をみる公的事業もあります。
小中学校の転校手続き
離婚後に引っ越す場合は、子どもの長期休暇に合わせましょう。時間をかけて、子どもが新しい環境に慣れるようにします。その休暇中に、一回は引っ越し前の場所へ遊びに行かせ、これまでの学校の友だちとコンタクトを取れるようにすれば、子どもの断絶感が和らぎます。
子どもだけでなく、自分も早めに転居先のご近所とのコミュニケーションを図るようにしましょう。子どもの安全を守るには、こういった大人の目が一番ですし、相談相手がいれば気が軽くなります。
転校手続きは公立の場合、引っ越し先の自治体に編入手続きを出す際に、転出証明書などの書類を提示すれば編入学通知書が発行されます。指定された学校に、転校用書類と転入学通知書を提出すれば手続き完了です。
転校用の書類は、これまでの学校にあらかじめ連絡しておけば子どもが通学する最終日にもらえます。
私立の場合は、直接学校に問い合わせてください。
離婚後の必要手続き概説
手続き漏れに注意
離婚をすると変更の手続きがたくさん必要になります。離婚前と離婚後で自分の何が変化したかを考えると、手続きの漏れを防ぐことができます。
離婚で姓と住所が変わった場合
結婚時の氏名と住所を登録してあるものは、原則として変更の手続きが必要です。かなりの数になるので、優先順位をつけましょう。運転免許証やパスポート、マイナンバーカードは、今後の手続きの際に本人照会の資料として使えるので、真っ先に手続きしましょう。
運転免許証は、新しい住所を管轄する警察署または運転免許センターで手続きします。パスポートの記載事項変更手続きは、住所地を管轄する旅券申請窓口で手続きできます。マイナンバーカードは、住所地の市区町村役場で手続きします。
そのあと生活に欠かせないサービスから処理していきます。順番としては、お金に関するサービスと公共サービスを優先します。
離婚で配偶者の扶養から外れた場合
配偶者の扶養家族としてサービスを受けていたものについて、手続きをし直す必要があります。社会保険関連(健康保険や年金など)がこれにあたります。手続きには期限がありますので注意してください。
離婚の財産分与で財産が増えた・減った場合
配偶者の名前で登録してあるマンションを財産分与で取得した場合などに、名義を変更する必要があります。不動産のほか、自動車、預貯金、有価証券などがあります。
財産分与の手続き期間
財産分与があった場合、それぞれ期間が異なりますので順序立てて手続きを行ってください。
専門的になる場合もありますので、司法書士に依頼した方がよいでしょう。
不動産は、不動産所在地の法務局に財産分与による不動産移転登記をします。銀行預金は、預金通帳名義の銀行の扱いとなります。生命保険等は、各種保険会社です。株式については証券会社あるいは発行会社、信託会社に相談します。
離婚で子どもの親権者になった場合
扶養していなかった子どもの親権者になった場合、自分の扶養家族に付け替えます。子どもを自分の戸籍に入れた場合は、子ども名義のサービスを新しい氏名で登録し直す必要があります。
公共サービスの氏名・住所変更
水道・電気・ガスなどのライフラインは早めに変更が必要になってきます。
水道は、市区町村・水道局に連絡します。電気は、使用している電力会社に連絡します。ガスは、使用しているガス会社に連絡します。
郵送物は、郵便局を通して転送サービスを利用することができます。
自分と子どもの同じ姓
離婚後の戸籍は、結婚したときに姓が変わった人が抜けるのが基本的なルールです。その際、子どもは結婚時の戸籍に残ります。
籍を抜けた方が親権をとっても、子どもの戸籍は動きません。親子が別々の姓を名乗ることになります。親権者が結婚時の姓を名乗りたければ、姓だけを親子で同じになりますが、戸籍は別々のままです。
親権者と子どもの戸籍は同じ方が便利な一方、改姓が子どもの大きなストレスになるのも事実です。どちらにすべきかは、子どもの意思を聞きながらじっくり考えましょう。
子どもが15歳になれば、自分で姓の変更を申し立てることができます。自分の意思で姓を選べますから、その時点で考えてもいいでしょう。
子どもの戸籍を移す方法
子どもを同じ戸籍に移したいなら、前段階として自分が筆頭となる戸籍を作る必要があります。離婚届を出す際に、「婚姻前の氏に戻る者の本籍」欄で「新しい戸籍を作る」をチェックすればOKです。
ここで、「もとの戸籍に戻る」をチェックした場合、戸籍には二代までしか入れないので、孫にあたる子どもは戸籍に入れません。その場合、分籍の手続きをして子どもを筆頭とする戸籍を作ります。
戸籍ができたら、「子の氏の変更許可」を家庭裁判所に申立てます。許可を得て、市区町村役場で入籍の手続きをすれば、子どもの戸籍が変更されます。子どもの姓を変更する手続きは、親権者でなければできません。相手に親権があるときは、そちらから申立ててもらう必要があります。
なお、分籍とは子が親の籍から抜けて新しく戸籍を作ることです。「戸籍の筆頭者、その配偶者でないこと」「成人であること」が条件となります。
子どもが改姓しても、もとの姓に戻りたいという場合があります。このような場合に、子どもが成人に達して1年以内であれば、市区町村役場で入籍の届出をするだけでもとの戸籍に戻ることができます。
その時期まで待てない、あるいはすでに過ぎてしまったなら、子の姓の変更手続をもう一度行ってください。成人を過ぎでも「子」として変更できます。
離婚と相続
夫婦は婚姻関係を解消した時点で、他人となり相手の財産を相続する権利を失います。一方、親子の血縁は解消されないため、子どもの相続権は残ります。
親が親権者でなくても、また戸籍が被相続人の親と違っても、相続権には影響しません。
ただし、男親から嫡出否認や親子関係不存在確認を受けている場合、別に実父がいて強制認知されている場合は、親子関係が否定されているので相続権もありません。
亡くなった親と血縁がある子どもは、同母・異母、同父・異父に関係なく、法定相続分は全員同じです。
親の再婚相手の連れ子には血縁関係がないために、相続権はありません。同様に、実親の再婚相手が亡くなった場合は、子どもは再婚相手(継父母)の財産を相続することはできません。連れ子に相続させたいときは、継父母との養子縁組が必要です。養子には、実子と同じ相続権があります。
遺言書にない取り分も主張できる
遺言書があればその内容が優先されますが、内容に不服なら子どもを申立人として権利を主張できます。
離婚した元夫が、「愛人とその連れ子に全財産を相続させる」と遺言するなどして、相続権のない人が遺産を譲り受けてしまっても血縁のある子どもの相続分がゼロになるわけではありません。
遺留分侵害請求を行えば、その子の遺留分に見合った割合で、受贈済みの財産の一部をお金で返してもらえます。 法定相続人が子ども二人だけの場合、相続財産の二分の1となります。
父親の死を長いあいだ知らなかった子の相続
音信不通の父親が死亡していて、すでに遺産分割が済んでいても子どもの相続権を主張できます。親の財産のうち、借金などマイナス財産が多かった場合は返済の義務が生じますので、親の死を知ってから3か月以内に家庭裁判所に相続放棄を申立てます。
遺留分侵害請求や相続放棄は、法律の専門家である司法書士に相談するのが確実です。
養育費の算定表
養育費の額を決めるには、養育費算定表を参考にしてください。家庭裁判所のホームページでも見ることができます。子の人数と子の年齢(0〜14歳、15歳〜)に応じて参考にする表が分かれますので、まずは自分の場合にあてはまる表を見つけましょう。
養育費の算定表は、両親の収入をもとに子どもを扶養していない方の親が支払うべき標準的な額を示したものです。扶養している親の方が収入が多くても、あるいは扶養していない親が無収入に近くても、養育費を負担する設定になっています。養育費負担が経済力とは無関係に親の義務であることがわかります。
実際の金額は、この算定表の枠内で両親が協議して決めることになります。離婚調停の場合も、養育費の目安として算定が用いられています。
経済事情の変化と養育費
子どもが成人するまでに、養育費の支払い期間は長期間を要します。この間、両親の経済状況が変化することは十分に想定できます。たとえば、取り決めた金額では子どもを扶養できなくなったときには、支払う親の負担を増やしてもらうこともできます。反対に支払う親の収入が減った、再婚によって扶養家族が増えた、受け取る親の収入が増えたことによって、養育費を減額することができます。
この場合の手続きとしては、まず両者が減額もしくは増額について交渉を行います。話し合いで合意すればその内容を公正証書などの文書にまとめます。
話し合いで合意がえられないときは、養育費の額の変更を求める調停を利用します。この場合、増額・減額に応じる経済力が相手にあるかどうかがポイントとなります。
離婚時に一時払いで養育費を受け取った場合、あとで増額が認められる可能性は低いのが現状です。
再婚した場合は問題があります。再婚をしても元夫の養育費の義務がなくなるわけではないので、養育費を受け取ることはできます。ただし、再婚相手と子どもが養子縁組をした場合、減額を請求される可能性が高くなります。養子縁組をすると、子どもが再婚相手の遺産を相続する権利も生まれるので、どちらを取るべきか慎重に検討することが大切です。
養育費の未払い
離婚の際の養育費について取り決めをしたとしても、養育費を確実に確保できるとは言い難い状況です。
養育費が約束どおりに支払われないときには、電話やメールで催促をします。それでも支払われない場合には、内容証明郵便を出します。法的拘束力はありませんが、心理的な効果があります。
家庭裁判所の調停、審判、判決で養育費の支払いが決められているのに養育費が支払われないときは、家庭裁判所に「履行勧告」を無料で申立てることができます。
家庭裁判所は、申立てを受けると養育費の支払い状況について調査をして、正当な理由もないのに支払ってない場合には、義務を果たすように勧告を行います。勧告は電話や手紙を中心に行われ、呼び出しや訪問をすることもあります。ただし、あくまで自発的に支払いを促すものであり、強制力はありません。
履行勧告に応じない場合は、「履行命令」の申立てを行います。申立てを受けた裁判所は、支払いを実行しない人に対して、期限を決めて支払うように命じます。
強制執行
強制執行認諾約款付の公正証書や調停、審判、裁判所の判決で養育費の支払いが認められているのに支払いが滞っているときは、地方裁判所に強制執行の申立てを行うことができます。強制執行ができる財産には、不動産、動産(家財道具など)、債権(給料や預金)などがあります。
養育費は子どもが成人するまで長期にわたって支払われるのが基本ですので、定期的な収入である給料を差し押さえるのがもっとも理想的といえます。
強制執行で給料を差し押さえるときは、給料の二分の1までを差し押さえることができます。これは、過去の支払われなかった分だけでなく、将来の支払いにまで適用されます。
親の義務としての養育費
未成年の子どもを世話して育てるのは父母それぞれの義務であり、それにかかる費用としての養育費も両親が負担します。子どもが成人するまで養育費の義務はあります。「負担しない」という選択はどちらの親もできません。別居中で養育に携わっていないといった事情とは無関係です。
養育費の支払いは何歳まで続けるか問題です。養育費は、原則、子どもが20歳になるまで支払われるのが通常です。成人年齢が18歳に引き下げられたことから、18歳になっても20歳までが多いです。もちろん、両親が協議のうえ決めることですから、子どもが教育機関を卒業し就職する時点を終期とすることもできます。子どもが高卒で就職するなら18歳の3月まで、大卒で就職するなら22歳の3月までといった具合です。それ以降は、病弱であるなど正当な理由があれば扶養義務が続きますので、親同士の話し合いとなります。
「親同士が離婚を受け入れてくれるなら、養育費はいらない」「子どもと同居できないなら養育費を負担しない」などと取り決めることもありますが、養育費を負担してもらうのは子どもの権利なので、親の都合でそれを奪わないようにしましょう。
養育費の内容
養育費は、未成年の子どもを世話して育てるものですから、次のような内容です。
- 子どもの生活費として食費・被服費・住居光熱費などです
- 教育費として授業料・学習塾代・教材費などを含みます
- 医療費、子どもの小遣い、交通費なども養育費に含めるべきです
養育費を取り決める方法
まず、夫婦の話し合いで決めるべきです。養育費の金額、支払い時期、支払い期間、支払い方法などを具体的に決めておきます。内容を書面にしておくべきです。もっともよいのは、強制執行認諾の約款がついた公正証書にしておくと、強制執行(差し押さえ)ができます。
夫婦間の協議で決められない場合は、家庭裁判所の調停や審判で決めます。離婚届を出してからでも養育費の請求の申立てをすることができます。家庭裁判所の調停や審判で決まれば、いざというときに強制執行ができます。
家庭裁判所の裁判で決めることもできます。離婚を求める裁判を起こすときに、同時に養育費について申立てることもできます。
子どもの成長と養育費
子どもを実際に扶養する親は、当然に養育費を負担することになりますが、離れて暮らす親はそれができないので扶養する親に養育費を払わなければなりません。
どちらがいくら払うかは、双方の話し合い次第です。子どもが自立するまでの費用を算出し、子どもの成長に合わせた養育費をお互いがどのくらい負担できるかを話し合います。
それぞれの経済力に応じて今後の収入見通しも検討しながら、分担額を決めていきます。どちらの親と暮らすかによって、子どもの生活レベルが違ってしまう事態があってはならないので、収入が多い親と同レベルの生活をおくれる額で取り決めましょう。
なお、養育費は慰謝料や財産分与とは無関係です。慰謝料や財産分与が支払われたからといって養育費の支払い義務がなくなることはありません。
養育費と支払い条件
養育費を取り決めるときは、万が一のとき強制執行ができるように、金額だけでなく支払い条件を詳細に決めておきます。条件が具体的でないと、支払う側が義務を怠っても法律の手続き上、強制的に支払わせることができず、自発的に支払う義務を果たすのを待つしかないためです。
子どもの進学や物価の上昇に備えて、「養育費に変動が生じた場合には、話し合いにより増減できる」「大学入学以降については、高校3年のときに話し合う」などと取り決めておきます。
養育費の支払い
養育費は継続して必要なお金ですから、支払いは定期払いが原則です。指定した期限までに金融機関の口座に毎月一定額を振り込む方法が一般的です。しかし、支払いが途中で滞りそうなら一括払いを要求しても構いません。支払う側がどれほど信頼できるかを判断し、定期払いか一括払いを判断します。
定期払いの場合、負担は長期に渡ります。将来起こりうるトラブルを考えて、対策を立てておきましょう。例えば、支払いが滞った場合はどうするか、お互いの経済環境が変わったときはどうするか、などです。離婚協議の最中は、そういった気力がなくなるものですが、一人親世帯の子どもが経済的困窮から学力不足になる問題も起きています。協議が面倒でも、それを行うことが子どもの安定した人生につながります。
離れて暮らす親の立場
面会交流を進めるにあたっては、子どもと離れて暮らす親、いっしょに暮らす親のそれぞれの立場で注意すべきポイントがあります。
離れて暮らす親は、事前に取り決めた面会交流の約束事を守ることが第一です。面会の終了時間や子どもを引き渡す場所などを当日になって勝手に変えるのは厳禁です。なんらかの事情で約束が守れないときは、いっしょに暮らす親に事前に連絡を入れるようにします。
面会中は、いっしょに暮らしている親についての話題は避けるようにして、子どもが関心を持っていることや学校での出来事など、子どもが前向きに話せるような話題を選ぶようにします。
また、子どもの気を引くために高価なプレゼントを渡す行為は、子どもの健全な成長を妨げるおそれがあります。
同様に、事前の相談なく「いっしょに旅行へ行こう」「遊園地に行こう」などと子どもと約束すると、子ども自身を両親の板挟みにさせかねません。プレゼントや旅行などの重要なことは、一方的に決めずに事前に相談するようにしましょう。
いっしょに暮らす親の立場
子どもといっしょに暮らしている親もスムーズな面会交流に協力する必要があります。
まず、面会交流に先立って、子どもの健康状態や日常の様子などについて、離れて暮らす親に伝えておくようにしましょう。そうすることで、面会交流時の親子のコミュニケーションがうまくいき、子どもが安心する効果があります。子どもを送り出すときは、面会交流はよいことだと伝え、笑顔で送り出します。これは、離れて暮らす親と会うことを子どもに後ろめたく思わせないための配慮です。離れて暮らす親について暗いイメージを抱かせるような言動も慎むべきです。
そして、子どもが帰ってきたときも笑顔で迎えることが大切です。面会中の出来事については根掘り葉掘り聞かずに子どもが親と過ごした時間をあたたかく認めることで、子どもの心理的負担が軽減されます。
子どもの立場
子どもが面会交流に後ろ向きな態度を示したときには、子どもの言葉に耳を傾けます。子ども自身がどうしたいのかという気持ちを確認することが第一です。子どもの気持ちを尊重して、しばらくは面会交流を中止する判断も必要です。
子どもは、いっしょに暮らす親の愛情を失うのがこわくて、離れて暮らす親と会いたくないということもあります。子どもの本心は慎重に探る必要があります。
子どもが会いたくないと言っても、面会交流を一切禁止してしまうのは、親同士の争いの元となります。親同士で冷静に話し合って、これまでの面会交流の進め方について改めるべきところは、改めるようにしましょう。子どものために親同士が協力するという姿勢を忘れないことが大切です。
面会交流時の子ども連れ去りへの対応
引き渡しの審判の申立て
離婚後の面会交流時に、子どもと離れて暮らす親が子どもを連れ去ってしまうことがあります。親権者や監護者でない親が子どもを連れ去るのは違法行為です。
しかし、連れ去りであっても相手がその後に監護実績を十分に積み、子どもにとって生活が安定しているなら相手に親権を求める申立てを起こされたとき、連れ去られた方が不利になることがあります。これに対抗するには、この引き渡し審判を申立て、相手の監護実績を阻止することです。基本的に連れ去りを行うような相手と、話し合いによる解決は期待できないため、調停ではなく審判を選択することが一般的です。
相手の現住所の確認
もし連れ去られた先がわからない場合は、すぐに相手の現住所を確認してください。住所を知るには、市区町村役場で戸籍の附票を請求します。離婚していても子の親であれば取得できる可能性があります。しかし、相手が閲覧制限をかけていると残念ながら発行されません。この制度は、本来DV被害者を守るものですが、子どもの連れ去りにも悪用されてしまうのが実情です。
相手の現住所がわからなくても、相手とつながるなんらかの住所を特定して一刻も早く審判を申立てましょう。連れ去りから時間が経つほど、相手の監護実績が増えて不利になります。申立てと同時に、審判前の保全命令も請求し、子どもの引き渡しの仮処分を求めます。
審判申立ての前段階で、捜索願や未成年者略取の被害届を警察に出すことも検討してください。それで警察が動くとは限りませんが、審判で相手が監護実績を主張したときに、それが違法行為によるものだと反論できます。
なお、審判で自分の監護実績を証明してもらうために、日頃から子どもの友人の保護者や近所の住人とコミュニケーションをはかっておきましょう。
引き渡しを命ずる審判が出ているにもかかわらず、相手が応じないときは、地方裁判所で人身保護請求を申立てます。
親の権利かつ子どもの権利
離婚で離れて暮らすことになった親にも、子どもと会ったり、連絡をとったりすることが認められています。これを面会交流といいます。子どもと会う以外にも、電話やメールなどをやり取りする、プレゼントを贈る、学校行事への参加・見学、子どもの写真などをもらう、などの行為も面会交流にあたります。
同居している親も離れて暮らす親も、正当な理由がない限り、面会交流を拒むことはできません。なぜなら、面会交流は子どもの権利でもあるからです。
分かれた親子が会うことは、以前から面接交流権として実質的に認められていましたが、法律にはありませんでした。民法が改正された際、離婚時に協議すべきものとして、面会交流と養育費の分担が明文化されたので法律でも認められた権利になりました。現在の離婚届には、面会交流の取り決めの未決・既決をチェックする項目が設けられています。
どちらの親とも会えるという状況は、子どもの成長にとってプラスとなるので、権利として尊重すべきという考えです。面会交流が子どもの福祉にとって明らかにマイナスになる場合は、本来の目的に反しますから、同居している親の権限で制限や拒否ができます。
子どもにとっての面会交流の主なメリットとしては、次のような点が考えられます。
- どちらの親からも愛されていると実感し、安心や自信を得ることができます。
- 子どもが成長する過程で、親のことを人生のモデルとして捉えられます。
- 離れて暮らす親をどんな人か知り、自分のルーツを確認できます。
- 離れて暮らす親に対してよい印象を持って生きていくことができます。
条件を話し合う手順
子どものマイナスになること以外は、原則として面会交流を拒めません。しかし、どんな条件で面会交流を行うかは、父母の話し合いで自由に決めることができます。お互いに子どもの気持ちを第一に考え、折り合いのつくところを探しましょう。
面会交流ができる親ほど、養育費をきちんと払うという調査結果もあります。面会交流は、離れて暮らす親に「親の自覚」をもたらすようです。
面会交流に関して父母だけで合意できない場合、家庭裁判所に調停を申立てます。親のどちらかが面会交流を拒むケース、反対に、離れて暮らす親が必要以上に子どもと接触をはかろうとするケースなどがあります。離婚後に取り決めを変えたい場合も、法的強制力を考え、調停や審判で話し合う方がよいでしょう。
面会交流を拒否・制限する理由となりうる事情は、次のようなものが考えられます。たとえば、子どもに暴力をふるうとか、正当な理由もなく養育費を支払わない、子どもを連れ去るおそれがある、などです。
また、面会交流に乗じて復縁を迫るとか、子どもにふさわしくないことを体験させる、子どもに金銭を要求することなども面会交流の拒否制限の理由でしょう。
面会交流の条件決定のポイント
面会交流の条件は、あとで見解の食い違いがでないように、できる限り具体的に決めましょう。ただし、相手は子どもですから、急な病気で予定がダメになるなどよくあることです。それを考えると、条件にはある程度の柔軟性が必要です。
条件を具体化しつつ、柔軟性を持たせるには基本となる条件とその代案という二重構造にすることです。
たとえば、基本の条件を「面会は第三土曜の9〜15時」と決めておき、ダメになった際の代案として「第三日曜の9〜15時に振替」、それもダメなら「翌月第一週に振替」など、複数用意しておくのです。
また、子どもはどんどん成長しますから、年齢に応じて条件を調整し直せるよう話し合いの機会を持つ手段を取り決めておくことも重要です。
別れた相手と直接接触したくないなら、信用できる第三者を介して話し合う方法もあります。くれぐれも、子どもを伝言係にして話し合いを進めないようにしてください。
面会しないとき・できないとき
面会交流は、子どもを親の板挟みにしないことが大原則です。子どもの意思を無視して、大人だけの都合で面会交流の条件を決めないようにしてください。
子どものからだの負担も考えましょう。子どもの健全な成長のために行うことを忘れないようにしましょう。遠距離の場合の面会交流は、子どもの負担を考え、中間地点で面会するなどの配慮も必要です。
何らかの理由で面会交流が行えない場合、子どもがそれで落ち込まないように細心の注意を払ってください。子どもには、「今回、お父さん(お母さん)の事情があって会えないけど我慢してね。あなたが悪いのではないのよ」と伝えましょう。相手を批判するのは子どもにとって逆効果となります。
親権者変更の理由
一度決めた親権は、父母の都合だけで勝手に変更することはできません。親の都合で頻繁に親権が変更されると子どもの成長に悪影響を及ぼしかねないからです。親権者の変更には、家庭裁判所の許可が必要となるため、家庭裁判所に調停または審判を申立てる必要があります。
家庭裁判所で親権の変更が認められる場合の理由には、さまざまなものがあります。たとえば、親権者が死亡、行方不明となったときには、もう一人の親に親権者を変更できます。それ以外にも、以下の理由があれば変更を申立てることができます。
- 親権者が適任でないとわかった場合
虐待や放棄はもちろんですが、経済的に教育を十分にできない、子どもに労働を強制しているなどの場合も、その親を親権者にしておくのは子どもにとって好ましくないとして、変更を申立てる理由になります。 - 親権者に子どもを世話している実態がない場合
親権者でない親の方が、子どもを世話をしているときに、親権者変更を申立てられます。つまり離婚時に親権者でなくても子どもと暮らし続けていれば、親権者になれる可能性があります。
調停や審判の申立て
親権者変更の調停は、原則として現在の親権者の住所地の家庭裁判所に申し立てます。親権者が行方不明や死亡した場合は、家庭裁判所に審判の申立てを行います。
申立ては、子どもの父母以外に祖父母や叔父・叔母などの親族も行うことができますが、子ども自身はできません。有責配偶者も申立てることは可能です。
調停や審判の流れは、親権者の指定のときと同じです。調停では、親権者を変更することが子どもの福祉に叶うかどうかが考慮されます。具体的には、現在の親権者からどれだけ愛情を注がれているか、現在の親権者がどんな意向を持っているか、これまでの養育状況はどうだったか、子どもの年齢や性別、性格、修学の有無、生活環境などが調査されます。子どもが15歳以上の場合は、裁判所が子ども本人の意思を確認して尊重する傾向があります。父母間で親権者変更に合意があるというのも判断材料の一つとなります。
親権者変更の届出
調停や審判の結果、新たに親権者になった人は、成立した日から10日以内に、市区町村役場で親権者変更の届出を行う必要があります。
このとき、家庭裁判所の調停調書(審判調書)や子どもの入籍届、戸籍謄本などを新しく親権者になる人の戸籍がある市区町村役場に提出します。
親権の剥奪
子どもを虐待している、生活に困窮して子どもが学校に行けていない、子どもの財産を勝手に処分しているなど親権者のせいで子どもの利益が著しく害されている場合、家庭裁判所に審判を申立てて、親権を喪失させることができます。
これは、実質的に子どもの親族や検察官、児童相談所所長などの第三者が、子どもの利益を保護するための制度です。親権喪失の申立ては、上記のもの以外にも一方の親や子ども本人も行うことができます。
親権喪失の申立てを行ったとき、審判が確定するまでのあいだ、親権者の親権を停止し、親権代行者を選任することもできます。しかし、親権喪失では、親権が無制限に奪われるため、二度と親子関係に戻れなくなってしまうおそれがあります。
子どもを虐待する親の親権を制限したい場合でも、親権喪失の申立てはほとんど行われていないのが実情です。
そのため、親権喪失に変わる緩やかな措置として、最長二年間、親権を喪失させずに停止することができます。この間に、子どもの心身の安全を確保するだけでなく、親権者自身の改善を促し、再び親子関係を結ぶことが目的です。
親権停止の期間は、親権停止の原因がなくなるまで要する時間や、子どもの生活状況をもとに家庭裁判所が定めます。
子育ての方が優先
協議離婚では、夫婦が自由に親権者を決められます。一方、調停や裁判では、子どもの利益を守る適任者であるかどうかが重視されます。
ではどんな親が適任者とされるのでしょうか。
もっとも重視されるのは、子どもの現在の生活環境が変わらないかどうかです。生活環境の激変は、子どもに強いストレスを与えるからです。このため、これまで主に子育てを担当してきた方の親や、現時点で子どもと同居する親が優先される傾向にあります。
もし親権がほしいなら、離婚するまでは子どもと離れて暮らさないことです。また、子育ての実績を示す証拠(育児日記・母子手帳・連絡帳・写真など)を確保しましょう。子どもが10歳未満の場合、育児に手慣れているかどうかが重視されます。身の回りのことが自力でできないうちは、手慣れた親にサポートされた方がいいとの判断からです。子どもの食事を作って食べさせていたのはどちらか、保育園の送り迎えをしていたのはどちらか、などの事実が判断材料となります。
親権者の判断の目安
子どもが乳幼児であれば、ほとんどの場合親権は母親が持つことになります。母親が子どもの世話をする時間が父親と比べて長いからです。
これは、母親が愛情をもって育児をしていることが前提の話です。虐待や育児放棄の事実があれば母親でも親権者にはなれません。浮気をした有責配偶者であっても、育児をきちんとしていたなら親権にはあまり影響しません。また、親の資力はあまり問題にされません。養育費で対応できるからです。
10歳未満の子どもの場合、母親が親権者になることが多いでしょう。これは、生活をするにあたって、母親の愛情と世話が重視されるためです。
10歳以上15歳未満の場合は、子どもの精神的、肉体的発育状況が考慮されます。現在の監護状況や子どもの意思を尊重する場合もあります。
15歳以上成年未満の場合は、子ども自身に判断能力があるとされますので、子どもの意見を聞き、原則としてその意思を尊重して決定します。
親権者の決定時に重視されること
第一に監護実績です。子どもがおかれている環境の維持が重視されるため、これまで主に子育てをしてきた親や現時点で同居している親が有利となります。
第二に子どもの年齢、意思です。前記のとおり、子どもの年齢により親権者の判断の目安が異なりますが、概ね10歳未満の場合は母親が優先されるケースが多いでしょう。15歳以上は本人の意思が尊重されます。
第三に周囲の助けです。祖父母など親以外の親族が生活を助けてくれる環境があるかどうかが考慮されます。
第四に子どもに対する愛情です。子どもに対して愛情があるか、子育てに意欲を持っているかなど、親の精神状態も考慮されます。
親権者の決定と子どもの意思
子どもが15歳以上ならば、その子の意思が尊重されます。ただし、必ず子どもの意思どおりになるとは限りません。
10〜14歳までの子どもは、判断力は十分でないものの自分の意思を表す力はあるとみなされます。そのため、ある程度はその子の意思が反映されます。しかし、子どもが一方の親から強制されたり親の気持ちを察したりして発言する可能性もあるので、裁判所では発言が本当なのかが総合的に判断されます。
監護者
親権には財産管理権と身上監護権があります。原則として、子どもを引き取った親が親権者となり、二つの権利と義務を行使します。
しかし、親権から身上監護権を切り離し、監護者を決めることがあります。監護者を置くのは、離婚の話し合いのなかで親権の取り合いになり、どうしても親権者が決まらない場合です。事態を収拾するため、親権の様相を二つに分けることで解決をはかるということです。
一方の親が親権者となる代わりに、もう一方の親が監護者として子を引き取り、子どもの世話を行います。
ただし、親権から監護権だけ分かれている状態だと子どもに不利益が起きやすいので、裁判所ではあまり認めていません。あくまで最終的な手段として考えるべきです。
協議離婚での親権分離
協議離婚なら取り決めは自由ですから、理論的には親権者と監護者を分けることは自由です。しかし、その取り決めを法律は守ってくれません。
協議離婚を公的に証明するものは離婚届しかありませんが、そこには監護者を書く欄がないからです。子どもの監護権をめぐって争いになったら、離婚届という公的書類で証明された親権者の方が尊重されます。つまり、親権者が「監護権を渡した覚えはない」と主張すれば、監護者の身上監護権が奪われかねないということです。
子どもの生活の安定が第一
離婚によって夫婦関係が解消されても子どもの父母であるという事実は変わりません。親には子どもを守る義務があり、離婚という親の都合で子どもの利益を害することは許されません。未成年の子どもがいる場合、離婚時には誰が子どもを守り育てるか(親権者)を決める必要があります。
親権については、どちらが受け持つかを決めない限り、離婚届は受理されず公的に離婚が認められません。子どもが複数いる場合は、それぞれの親権者を決めます。
このように、現在は、離婚後の父母のどちらかが親権を持つ「単独親権」が採用されていますが、離婚後の「共同親権」についての法案が可決されたため、2026年5月中までには施行される予定です。
共同親権とは、離婚後も父母双方が子どもの親権を持つことです。
離婚して離れて暮らすことになった親にも、子どもの成長に必要な費用(養育費)を負担する義務があります。どの程度負担するかについても話し合いのうえ決定します。
子どもの将来を見据えて考える
離婚したからといって片親を子どもの人生から排除することは認められません。離れて暮らす親にも子どもと会う権利が認められています(面会交流)。いつ、どのように子どもと面会するかについても、話し合いのうえ決定します。
離婚によって両親の戸籍が別れた場合、子どもの戸籍は筆頭者であった親の戸籍に残ることになり、姓も変わりません。子どもの戸籍と姓を変更する場合は手続きが必要です。戸籍を抜ける方の親が子どもを引き取る場合は、どうするかを考えなければなりません。
いずれも親の都合を優先して結論を出すのではなく、将来的な子どものしあわせを第一に考えたうえで決定する必要があります。
子どもの不安を取り除く
子どもにとって両親の離婚は大きな環境の変化をともなうため、不安をもつのも当然です。子どもに「離婚する」という結論だけを伝えると、「自分が悪かったのではないか」「これからどうなるのか」と不安をつのらせます。
なぜ離婚するのか、これから誰とどう生活していくのかをきちんと説明していくのが大切です。このときは、子どものことを第一に考えている気もちを伝えるように心がけてください。
また、子どもの前で離婚をめぐって言い争いをするのも子どもの不安を助長します。離婚の話し合いをするには、子どもを実家か一時保育にあずけるなどの配慮が必要です。
親権者の義務
親権は「親が子どもと暮らす権利」と解釈されがちです。これも親権に含まれますが、「子どもの利益を守るための権利」というのが正しい意味合いです。
人は皆、自分の利益を守る権利をもっていますが、未成年の子どもはまだ未熟なので自分の利益を守れません。代わってその利益を守るのが親です。
子どもの利益を守る義務をきちんと果たすならば、という条件のもとで未成年の子どもを自分の庇護下に置くのが親権です。子どもの利益を最優先に考えることが、親権の考え方の根底にあります。
親権をもつ親は子どもを保護・教育し、子どもの財産を管理し、子どもに代わって決定を下せますが、それが子どもの利益になるからこそ、これらの行為が認められています。
子どもの利益を無視すれば、親権の濫用を問われます。「やりたくない」と親権を放棄することもできません。親にとっては「権利」である以上に「義務」なのです。
親権をもつのは片方の親だけ
結婚していれば、親権は父母の双方がもちますが離婚すると、基本的には現在ではどちらか一方がもつことになります。いわゆる単独親権です。親権と監護権を分離するケースもありますが、分離することが子どもの利益になる場合に限られるため、あまり行われていません。
夫婦で合意できなければ裁判所に解決を委ねます。離婚前ならば離婚調停、離婚後は親権者変更調停を申し立てます。どちらの場合も調停では子どもの利益が重視されるので、「わたしが一緒に暮らしたいから」という親のエゴは考慮されません。
支払いを請求できる権利
離婚後は、相手方が支払いを拒否したり遅らせたりするトラブルが発生することがあります。こうなると、お金を受け取る側は離婚後の生活設計が狂ってしまいます。まずは、個人で催促をして、それでも効果が出ないなら、法的手段を検討しましょう。
その際に重要になるのは、公的な文書(債務名義といいます)があるかどうかです。公的な文書があると、一方に支払いの義務(債務)があり、もう一方には支払ってもらう権利(債権)があるということが、明らかになります。これによってはじめて、法による強制執行が可能となります。こうした文書には、裁判所が出す調停調書、審判調書、和解調書、判決書、公証役場が作る強制執行認諾約款付の公正証書があります。
協議離婚をしたときに文書を作らなかった場合は、離婚合意書を強制執行認諾約款付の公正証書で作り直すか、調停や裁判を申立て、調書や判決書を手に入れます。
実際に支払わせるための手続き
法的な文書があってもそれはお金を請求する権利が証明されたというだけです。実際に支払ってもらう(債権回収)には、改めて法的な手段を裁判所に申請する必要があります。
強制執行をしてもらう場合は、手続きによって裁判所の窓口が違うので注意してください。
いきなり強制執行をかけることにためらいがある場合は、より穏やかな請求方法もあります。強制力が軽いものから試し、相手に考え直す時間や話し合いの機会を与えた方がトラブルを妨げるでしょう。
債権を守るための内容証明郵便
内容証明郵便とは、いつどんな内容の文書が誰から誰に郵送されたかということを、日本郵便株式会社が証明する制度です。
これが必要となるのは、財産分与などの債権を回収するとき、回収することを公に証明したい場合です。
内容証明郵便を出すことで、何年何月何日に確かに支払いを請求したことを証明することができます。内容証明郵便は、用紙の大きさや記載用具を問いません。文房具店などで市販されている専用の用紙を使う方法もあります。文書の作成には、字数・行数の制限があります。
内容証明郵便は必ず手渡しで配達され、受取人からサインをもらうので受け取っていないことにはできません。開封せずに放置しても、差し出した側の意思は伝わったとみなされます。受け取り拒否をした場合は、差出した側に戻ってきます。
なお、配達証明サービスを利用すると「配達した日」を証明してくれるので相手がいつ受け取ったかを知ることができます。
内容証明の相手方へのけん制効果
内容証明郵便には、書かれた内容を相手に強制する力はないものの、相手をけん制する効果があります。
内容証明郵便には、文書の欄外に「この郵便物は〇〇年〇月〇日第〇〇号書留内容証明郵便物として差し出したことを証明します 日本郵便株式会社」という文言が添えられ、郵便認証の印や局の割印などが押されます。これらの文言や印を見たことでプレッシャーとなり、相手を支払に応じさせる力となるのです。
金銭を相手に支払わせる方法
- 前述の内容証明郵便での請求は、支払いを求める文書を内容証明付きで郵送するものです。効果としては、消滅時効を先延ばしにできる(先延ばしには裁判が必要)とか請求した証拠が残ります。なお、無視されても何もできないという短所があります。
- 履行勧告という制度があります。履行勧告とは裁判所が取り決めを守るよう説得したり勧告したりする制度です。効果としては、裁判所の命令というプレッシャーがあります。しかし、支払いを強制することはできないという短所があります。窓口は家庭裁判所です。
- 履行命令があります。これは裁判所が期限を指定して、支払いを命ずるものです。効果として、「10万円以下の過料」がかかるというプレッシャーがあります。窓口は家庭裁判所ですが、支払いを強制することはできないという短所があります。
- 支払督促があります。これは裁判所が期限を指定して、支払いを促すものです。相手が受け取ってから2週間以内に意義の申立てをしないと、仮執行宣言が出ます。しかし、直接には強制執行につながりません。窓口は、家庭裁判所です。
- 間接強制執行があります。これは「一定期間内に取り決めに従わないと間接強制権を新たに課す」と警告します。損害賠償が心理的なプレッシャーとして働く効果があります。この制度は、財産を直接は差し押さえできません。また、相手に資金がないと行えないという短所があります。窓口は、家庭裁判所です。
- 直接強制執行があります。相手の財産を差し押さえ、そこから支払いを行う制度です。この制度は、相手の有無を言わせず支払いをさせるので、確実にお金を受け取ることができます。しかし、財産がない場合には効力がありませんし、全額請求できるような額がない場合には回収が止まってしまいます。窓口は、地方裁判所です。
財産消滅の可能性
財産分与の結論が出るには時間がかかります。その間に、夫婦の一方が勝手に財産を処分してしまうと、決定が下ったときには、分与すべき財産がなくなっているという事態が起こりかねません。また、一方が求めている財産を、もう一方がわざと売却して困らせる、といったこともありえます。
それを防ぐ仕組みが保全処分というものです。保全処分とは、「本来の状態を、そのままに保ちなさい」と裁判所が命令することです。
財産分与では、財産を仮差押・仮処分をし、相手が勝手にいじられないようにします。
どのような財産を保全したいかは、申立てる側が指定しますが、相手が生活できなくなる場合は、財産の処分はできません。次のような場合は、保全処分を行うのが妥当でしょう。
- 相手が財産の名義を勝手に移そうとしている場合
- 相手が預貯金をおろして隠そうとしている場合
- 分与される財産を勝手に売ろうとしている場合
申立てにより財産を保全する
財産保全の方法は、以下のとおりです。
- 調停がはじまる前に調停員会に申立てる
離婚調停あるいは財産分与請求調停を申立てた時点で、調停委員会の権限で保全の仮措置が行えます。しかし、強制執行力はなく、実際にはほとんど行われていない方法です。 - 審判前の保全処分を申立てる
家庭裁判所に財産分与などを請求する審判を申立てたときに、同時に申立てます。この審判では、保全処分の緊急性や必要性などが審理されます。申立てが認められると、家庭裁判所が仮差押・仮処分などを命じます。 - 調停とは別に民事保全を申立てる(いつでも可能)
相手が財産を隠している証拠があれば、いつでも地方裁判所に申立てることができます。この手続きを行うときは保証金を支払うことになります。高額な財産を保全してもらうとそれなりの金額がかかりますから、注意が必要です。このお金は財産分与の処分が確定すれば戻ってきます。
財産を開示させる制度
強制執行により、相手の財産を差し押さえるにあたっては、対象となる財産の内容を特定する必要があります。しかし、相手の財産を具体的に知ることは非常に困難です。裁判所で命じられても、現実には差し押さえできないケースも多々ありました。
こういった問題を解消するために、2020年4月から改正民事執行法が施行され、差し押さえを容易にする制度が整えられました。内容は、①財産開示手続きの改正と、②情報取得手続きの新設、の2つです。
財産開示手続きは、相手を裁判所に呼び出し、保有している財産を開示させる制度です。この制度自体は、以前からありましたが、裁判所からの呼び出しに応じなかった場合や、陳述拒否、虚偽の陳述をした場合の罰則が30万円以下の過料と安く、あまり活用されていないことが課題となっていました。
今回の改正により、罰則が強化され、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が課される(刑事罰)こととなりました。
また、申立てができる人の範囲が拡大されて、調停調書や判決書だけでなく、公正証書をもっている人でも可能となりました。さらに、相手の住所がわからない場合には、公示送達が認められました。
預貯金や給与の情報を知る方法
情報取得手続きは、新設された制度であり、財産情報をもっている第三者を通じて、相手の財産情報を取得するものです。
預貯金や株式などの財産を差し押さえたい場合は、調べてほしい金融機関を特定することで、裁判所から金融機関に照会が行われ、口座番号や金額などの情報提供を命じることができます。
相手の給与を差し押さえたい場合は、財産開示手続きを行なったうえで、裁判所を通じて市区町村や日本年金機構、厚生年金の実施機関に対して勤務先などの情報の提供を命じることができます。
この給与情報の取得を申立てることができる人は、限られています。養育費や婚姻費用などの請求権をもつ人と、生命・身体への侵害を理由とする損害賠償請求権をもつ人です。生命・身体への侵害を理由とする損害賠償には、慰謝料も含まれます。また、損害にはPTSDになったなどの精神的損害も含まれます。
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離婚にかかる費用は弁護士へ依頼するのと比較しますと大きな差があります。当事務所では定額制のため、成功報酬はいただいておりません。 離婚した後の生活こそ、お金がかかるものです。離婚にかかる費用を極力抑えて、新生活を迎えてください。
