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説得力のある主張の準備
お互いの話し合いで離婚に合意できない場合、調停や裁判に移行することになります。調停や裁判では、離婚問題の解決を第三者にゆだねることになります。これは、第三者に向けて、説得力のある主張を準備する必要があるということです。
ですから、調停や裁判に備えるにあたって、まず自分の考えを明確にしておくことが欠かせません。「なぜ離婚したいのか」「調停や裁判で何を要求するか」「どういう条件なら合意できるか」などを改めて考え、準備しておきましょう。
また、調停や裁判について、情報を集めて勉強する、あるいは質問されそうなことについてあらかじめ回答を考えておくのも有効です。身近に経験者がいれば、相談するのもよいでしょう。また、専門の司法書士等に相談するのもひとつの対策です。
裁判へと進む場合は、どうしても法律の専門家である弁護士に依頼する必要があるかと思います。なぜなら、相手方も弁護士を依頼することが考えられるからです。
なお、地元の各役所で市民相談・司法書士相談などの無料相談を実施していますから、相談をしてアドバイスをもらうのもひとつの方法です。
証拠の収集
離婚裁判を起こす場合、離婚の理由とその理由を裏付ける証拠は不可欠です。その前段階の離婚協議や調停の際にも証拠があれば話を有利に進められるでしょう。離婚について考えるようになったら、何ごとも証拠を集めておくことに越したことはありません。
相手の浮気が離婚理由となる場合、浮気の事実を決定付ける写真や動画、メールのやりとり、携帯電話の履歴などが証拠となります。
DVであれば、病院の診断書やケガの写真が証拠となるでしょう。
モラルハラスメントであれば、日々の暴言や態度を記した日記や音声記録、病院の診断書が証拠として役立ちます。
ギャンブルであれば、借金の明細書や大金を引き出していることを示す通帳のコピーなど、浪費を示すものが証拠となりえます。
それらの証拠をできるだけ自分自身や周囲の協力のもと集めつつ、難しいものは調査会社に依頼するという方法があります。調査会社は、離婚の局面では浮気調査や素行調査、相手が行方不明になった場合の捜索などで多く利用されます。浮気調査を専門とする調査会社もあります。
専門家の活用
浮気が離婚原因の場合、決定的な証拠を掴むために、調査会社に依頼する人が多いようです。調査会社は、依頼内容や調査に要する時間によって、調査にかかる費用が異なりますが、いずれにしろ高額です。
自分で集めた間接的な証拠だけでも配偶者の浮気を立証することが可能な場合があるので、経済面もよく考えて調査会社に依頼すべきかどうかを決めましょう。
また、依頼する場合も調査がなるべく短期間で済むよう、事前に配偶者の行動パターンを把握しておくことが大切です。
調停や裁判で証拠となるもの
離婚を有利に進めたいときは、必ず証拠を集めておくようにしましょう。「性格の不一致」などで離婚したい場合にも、証拠集めをするに越したことはありません。
浮気、DV、モラルハラスメント、ギャンブルの各種原因について、証拠となるものの例を検討しましょう。
- 浮気の証拠となるものの例
- 二人でホテルに出入りするときの写真や動画
- メールのやり取り
- 携帯電話の履歴
- ホテルやレストラン、プレゼントのレシート
- DVの証拠となるものの例
- 病院の診断書
- ケガの写真
- 言動を録音した音声のデータ
- 警察への相談実績
- モラルハラスメントの証拠となるものの例
- 暴言を受けた日々について書いた日記
- 暴言を録音した音声のデータ
- 病院の診断書
- 経済的な束縛を示す家計簿
- ギャンブルの証拠となるものの例
- 借金の利用明細
- 通帳のコピー
- カードの利用明細
- 領収書
DVの証拠集め
DV(ドメスティック バイオレンス)とは、パートナーなど親密な関係にある相手方から受ける暴力のことをいいます。夫婦間では、夫から妻へのDVが多いようですが、妻に親族が加わり、夫への暴力を加えることもあります。ここでいう「暴力」とは、身体的な暴力はもちろん、精神的、性的、経済的な暴力も含まれます。
DVを受けたときは、医師の診断書をもらう、被害の様子を写真・動画に撮るなどの記録をとっておきます。暴力の最中に記録の収集は困難ですが、暴力の跡が残ったときなどは、写真・動画に残すことは可能でしょう。のちに、警察に被害届を出すときや、離婚裁判で証拠として役立ちます。
DV被害には複数の相談先があります。警察や女性センターなどに相談した記録は、個人情報開示手続きで取り寄せておきましょう。別居時に転居先を知らせないこと、保護命令や裁判の証拠とすることに役立ちます。
避難場所の確保
夫婦の一方から暴力を受けているときは、被害の拡大を防ぐために一刻も早く別居すべきです。安全な別居先が見つけにくい場合は、警察または都道府県に設置されている配偶者暴力相談支援センターに、相談すると一時保護などの措置を受けることができます。
また、NPO法人や社会福祉法人などの民間団体によって運営されている民間シェルターでも、被害者の一時的な受け入れを行っています。こうした施設は被害者の安全を確保するために、所在地が非公開となっています。
入所希望者は、最寄りの女性センターや福祉事務所に相談して、入所が必要と判断されると避難することができます。ただし、受け入れ定員数が少なく満室の場合もあるので、注意が必要です。
シェルターでは、弁護士や福祉事務所などの相談を受けながら、新しい住居への入居や生活保護受給の手続き、就職活動などのサポートを受けることができます。
DVの被害者が、生命・身体に重大な被害を受けるおそれが大きいときは、被害者が裁判所に申し立てを行い、加害者に対して保護命令を出すことができます。
命令の内容には、接近禁止命令、退去命令、電話などの禁止命令などがあります。加害者が保護命令に違反した場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。
保護命令は、配偶者からの暴力で、生命・身体に重大な危害を受けるおそれがあるときに、裁判所が出す命令です。この制度は2001年に施行されDV防止法によって設けられました。
DVの内容
DVに含まれるものとして、次のようなものがあります。
- 身体的暴力
殴る、平手で打つ、モノを投げつける、などがあります。 - 精神的暴力
大声で怒鳴る、暴言を浴びせる、無視する、などです。 - 性的暴力
性的関係を強要する、中絶を強要する、などです。 - 経済的暴力
生活費を渡さない、外で働くことを許さない、などが該当します。 - 社会的暴力
人間関係を監視・制限する、行動を無視・制限するなどがあります。
保護命令の内容
- 被害者への接近禁止命令
6か月間、加害者が被害者につきまとう、住居兼勤務先など被害者の近くを徘徊することが、禁止されます。 - 退去命令
加害者に2か月間、家から出ていくように命じます。退去した家の付近を徘徊することも禁止されます。 - 電話などの禁止命令
面会の要求、行動の監視、乱暴な言動、連続してのメール・ファックス・電話を禁じられます。 - 被害者の未成年の子への接近禁止命令
被害者と同居する子へのつきまといを禁止します。 - 被害者の親族などへの接近禁止命令
被害者と密接な関係のある者へのつきまといを禁止します。
別居の決断
離婚を考えているとき、冷静に話し合うためにも別居という手段は有効です。
別居をすることで、離婚後の生活をイメージすることができ、離婚という選択肢が正しいかを判断する機会もえられます。また、短期間の別居は、夫婦間の修復に役立つこともあります。お互いに冷静に考えることができるからです。
夫婦は法律で同居が義務付けられています。そのため、夫婦が合意したうえで、別居をするのが原則です。別居に合意できている場合は、婚姻費用の支払いについて夫婦共同で調停を行い、調停調書を作成しておくと安心です。
どうしても合意できない場合でも、別居することもできます。たとえば、浮気をしている夫が妻子を捨てて別居し、生活費も払わず連絡先も隠しているといった極端な状況ではない限り、裁判所で「悪意の遺棄」などと評価されることはありません。配偶者によるモラハラやDVを受けており、合意なく別居するしかないこともあります。
離婚後の話し合いのために、別居後の住所は知らせておくようにしましょう。ただし、DVなどの理由があれば知らせる必要はありません。
別居の際の持ちもの
別居中に勝手に財産を処分されるおそれもありますので、残高がわかる預金通帳のコピーなど、財産を証明できる資料を持ち出しておきます。
将来の離婚の際に親権がほしいなら、子どもをおいて別居しないようにすることが大切です。子どもと同伴で別居することが、将来の親権取得に有利に働くことが多いようです。
結婚前から持っていたもの、自分のお金で購入したもの、個人的にもらったものなどは持ち出すことができます。自分名義の預金通帳は当然ながら持ち出すようにしましょう。
結婚後に購入して共同で使っていたものは夫婦の共有財産になります。持ち出しても罪にはなりませんが、相手の心証を悪くして離婚に向けての話し合いを難しくする可能性があります。
同様に相手の持ちものや家具・家電製品なども合意できた範囲で、相手が困らない範囲で持ち出すのが賢明です。
別居のメリット
やむをえず別居するときも次のようなメリットがあります。
- 冷静に離婚に向けた話し合いができます。同居していて常時顔を見合わせている場合よりも、お互い単身となることで冷静になることは明白です。
- 別居することで、自分の気持ちを見つめ直すことができます。また、関係修復できる可能性もあります。十分に考えずに別居したことを考えなおし、自分が悪かったと反省すれば元の関係に戻る可能性も出てくるのです。
- 離婚したあとの生活をイメージできます。将来の離婚を考え別居したのであれば、それに向けた生活を想像し準備ができます。
- 子どもに夫婦の対立を見られる心配がなくなります。夫婦間のケンカは子どもにとって思いがけない悪影響を及ぼします。このような対立関係を子どもに見せることがなくなります。
- 相手方からDV・モラハラ被害を受けていた場合は、そのようなことから脱することができます。
別居のデメリット
別居は当然ながら、種々のデメリットを抱えます。
- 生活費など金銭的な負担が増えます。別居前から適当な報酬を得ていた場合はともかく、専業主婦であった場合はこれから職をえるわけですから、金銭的にも裕福でなく経済的な負担はやむをえません。
- 無職の場合は、すぐに仕事が見つかるとは限りません。仕事を見つけても、最初から高給は期待できません。
- 周囲から厳しい目で見られることが、ままあります。昔ほど厳しい現実ではありませんが、詮索する近所の人は必ずいるものです。そういう人から好奇心で見られることがあるでしょう。
- 生活のリズムが崩れることもあります。同居していた場合と違い、従来と異なった生活のリズムはやむをえません。
- 子どもがいる場合、どちらが子どもと一緒に住むかで争いが起こることがあります。子どもの意思を無視して争い合い、子どもの心に傷をつけることもあります。
別居前の準備
別居後のお金の準備
別居中の経済的な計画を立てて、別居中の婚姻費用についても話し合いをします。
円満に別居できない場合は話し合いも難しいでしょうが、なんとか婚姻費用については請求できるように対策を考えましょう。
子どもの住む場所
別居に際して子どもがいる場合には、夫婦のどちらが子どもと住むかを決めなければなりません。親権者の決定にもかかわるので、慎重に考えたいものです。子どもの意思も尊重して、決定したいものです。
必要なものの持ち出し
- 自分名義の通帳・実印・キャッシュカード
- 印鑑
- パスポート、運転免許証
これらは身分証明としても必要です - 健康保険証・年金証書
- 相手が不倫をした場合の証拠となるもの
- 子どもの持ちもの
- 現金
- 写真など思い出の品
別居先の住所の秘密
DVの被害者が別居する場合、配偶者に別居先の住所を知られたくはありません。そのために住民票の閲覧を制限することができます。この制度を利用する条件には、① DV被害者であり、生命または身体に被害を受ける可能性があること、② 警察に相談した、被害届を出した、閲覧制限の必要性があると判断される必要があります。
子どもとの関係
親権をとるためには、前述のように子どもをおいて別居しないことが重要です。別居に合意できないときでも、家を出ることもできますが、子どもは連れていきたいものです。
経済的な問題などを理由に「家庭内別居」をする夫婦もいますが、争ったり口もきかなかったりする姿は、子どものストレスの原因となるので注意が必要です。
離婚前後の住まい
離婚が成立するまでは、夫婦はひとつの家に同居していますが、離婚が成立すると、夫婦のいずれかあるいは両方が家を出て新しい生活をはじめることになります。離婚成立前に、離婚の話し合いのために別居することもあります。
相手が家を出る場合はそのまま同じ家に住み続けることになります。離婚時の財産分与で家を受け取ることができれば、転居の必要はありません。
実家に頼る方法
自分が家を出る場合、費用、手続きの面でもっとも負担が少ないのが、実家に戻るという選択です。親に相談でき、子どもがいる場合は面倒をみてもらえるという安心感もあります。ただし、親が離婚に反対しているときは、決して居心地のよい住居とはいえません。経済的、精神的にも長期間にわたって親に頼るのが難しいこともあります。
期間を決めて実家に住む、子育てや金銭面で親の助けを借りる範囲を決めておくなどの準備が求められることもあるでしょう。
その他の住宅の選択肢
実家以外の住まいとして一般的なのが、賃貸住宅です。賃貸住宅の契約には、敷金・礼金などのまとまった初期費用がかかります。無職であれば、社会的な信用が低いとみなされるので、部屋を借りるのは難しいといえます。
賃貸物件によっては保証人を頼める人がいれば、契約しやすくなります。保証会社にお金を払って保証契約を結んでもらう仕組みもあるので、不動産会社に確認してみましょう。一人親を積極的に受け入れるシェアハウス(ひとつの家を複数の家族・人で共有して暮らすための物件)もあります。
なお、敷金・礼金ゼロ円物件に注意を要する場合があります。
敷金・礼金ゼロ円の賃貸では、「高額のルームクリーニング代を請求される」「退去時に多額の費用がかかる」などのトラブルもあるようなので注意をしましょう。
都道府県や市区町村が管理している公営住宅を借りると月々の家賃負担は軽くなります。所得が決められた基準内であることなどの条件を満たす必要があり、入居の応募者が多いときには抽選となります。
離婚後の住まいの選択肢
住んでいた家
メリット
- 持ち家の場合、家賃がかかりません
- 生活環境が変わりません
- 子どもの通学に支障がありません
デメリット
- 持ち家の場合、ローンを支払わなければならないことがあります
- 賃貸の場合、家賃の負担を抱えきれないことがあります
実家
メリット
- 初期費用がかかりません
- 手続きがいりません
- 親に相談できます
- 子どもの面倒をみてもらえます
- 生活費が抑えられます
デメリット
- 親との関係が悪化することもあります
- 親に経済的・精神的な負担がかかります
- 親にあまえすぎて自立が難しくなることがあります
- 生活に干渉を受けることがあります
賃貸住宅
メリット
- 誰にも気兼ねなく住むことができます
- 条件を満たせばすぐに借りられます
- 住む場所は自由に決めることができます
- 転居がしやすいです
デメリット
- 敷金・礼金などの初期費用がかかります
- 毎月の家賃負担が大きいです
- 保証人がいないと契約しにくい場合があります
公営住宅
メリット
- 賃貸住宅と比べて家賃が安いです
- 更新料がかかりません
- 一人親世帯などが優先的に入居できます
デメリット
- 応募資格を満たさなければなりません
- 抽選で入居できない場合があります
- 入居時期が決められていることがあります
親権争い
子どもがいる場合、必ず親権者を決めなければ離婚を成立させることはできません。二親のどちらかが親権者になるので、場合によっては親権をめぐって争いが起こることも考えられます。
まずは自分が親権者になりたいかを考え、親権者になりたい場合は準備を進める必要があります。親権者を決めるときに大きな判断要素の一つとなるのが「子どもの現在の生活」です。子どもを保護して育てている親が、親権者としてふさわしいと判断される可能性があるということです。
そのため、親権者になりたいと考えるための準備は、子どもを手放さないようにすることです。離婚に向けて別居するときには、子どもを置いて出ないことです。逆に相手が家を出るときには、子どもを渡さないことが大切です。一度子どもと離れてしまうと、あとで引き取りたいと思っても拒否されるケースが多いので、難しくなると知っておく必要があります。
子どもの生活費の試算
離婚によって子どもの生活が脅かされるようなことがあってはなりません。離婚後、未成年の子どもは、独り立ちするまで養育費を受ける権利があります。離婚にあたっては、二親がどのように養育費を負担するかを話し合うことになります。それに備えて、子どもの生活費はどの程度必要なのかを試算しておくことも大切です。まず、夫婦それぞれの収入を把握したうえで、子どもの衣食住の費用や教育費、医療費などがどれだけかかるのかを確認していきます。保険会社のウェブサイトでは、進学先に応じた教育費の目安などが掲載されているので参考になります。
子ども進学先の確認
子どもを連れて引っ越しを検討する場合は、子どもの学校の転校手続きや保育園・幼稚園の転園を考える必要があります。子どもの進学時期などにあわせて、離婚のタイミングを決定するのも一つの方法です。手続きについては、市区町村役場やそれぞれの学校に確認しておきましょう。一人親家庭は、保育園の入園が優先されやすくなりますが、自治体や時期によっては待機児童数が多く、すぐに入園できるとは限りません。仕事をしていることも入園の優先条件となることが多いため、専業主婦のひとは就職の準備を進めておく必要があります。
仕事を持ちながら子育てをするときは、放課後や学校の休み期間中あるいは病気のときの子どもの預け先を調べておくことも大切です。一人親家庭が受けられる手当や支援もあるので、市区町村役場の窓口で話を聞いておくことも大切です。
就職は離婚前にするのが理想
現在職についていない場合は、離婚後の生活に備えて早めに職探しをしておきたいところです。特に一人親の職探しは厳しいのが現実です。残念なことですが偏見を持っている人もいますし、子どもが体調を崩したときに休むとなると、採用側も消極的になりがちです。
職探しにあたっては、高望みをしないことが肝心です。正社員になるのが難しいときは、パート社員やアルバイトからはじめて、登用制度によりステップアップをする方法もあります。
最低限生活に必要なお金がわかっていれば、どの条件まで妥協できるかわかります。また、ハローワークが行なっている就職支援制度を利用するのもよいでしょう。
離婚前の資格取得
できるだけ有利な就職ができるように、スキルアップしておくことも大切です。特にIT系の職場などでは、求められるスキルも日々変化しているので、独身時代に就職経験があっても通用するとは限らないと知っておくべきです。最低限のスキルとして、パソコンの基本操作は必須といえます。各種の講習や書籍などで身につけておきましょう。
ハローワークが行う就職支援制度では、パソコンの操作や専門職のスキルを教えるものから、就職活動のノウハウやアドバイスを提供するものまであります。また、こうした制度を活用するにあたって、一人親向けに託児サービスを提供しているところもあります。最寄りのハローワークに問い合わせてみましょう。一般的に、専門的な資格を持っていると就職には有利です。
離婚前から学校に通って資格取得に向けた勉強をしておく方法もあります。資格の難易度によっては準備期間が長期化します。
離婚に先立って、資格を取得するのがベストですが、アルバイトをしながら資格取得の勉強をして正社員を目指す道もあります。
離婚の手続き費用
離婚では、手続き自体にもお金が必要です。この費用がどのくらい必要なのかチェックし、準備しておくことも大切です。
協議離婚であれば、ほとんど費用はかかりませんが、話し合った内容を公正証書にする場合は、作成費用がかかります。作成を、司法書士などの専門家に依頼すると費用はかかりますが、考えた文案をチェックしてくれたり、法律的なポイントを押さえてくれたりするので安心です。
調停離婚の場合は、自分で手続きをすれば、1,000円程度の収入印紙代と郵便切手代だけで済みます。弁護士に依頼すれば費用が高くなりますので、美馬司法書士事務所では安価に離婚調停の申込書を作成いたします。また、家庭裁判所に出頭する場合のノウハウもお教えします。
裁判離婚を選択する場合は、裁判を起こすための印紙代などが必要になります。調停も裁判も、結論が出るまでは数ヶ月から長いときは一年以上かかることもあります。その間、何度も裁判所に出向くことになるので、その交通費がかかるほか、仕事を休んで裁判所に行くとなると、その分の収入が減ることも考えられます。
調査会社の費用・弁護士費用
離婚の原因が相手方にあることを証明したいとき、調査会社に証拠集めを依頼すると、高額の調査費用が必要になります。
調停手続きは自分一人でできますが、裁判離婚となると手続きが複雑であり、弁護士への依頼が必要になるでしょう。弁護士と契約するときには、相談料、着手金、報酬、日当、実費などの諸経費がかかります。
離婚手続き中のお金
離婚の手続きを進めるために別居を選択したときは、その間の生活費を準備しておかなければなりません。アパートなどを借りるなら引っ越し費用に加えて、敷金・礼金などまとまったお金が必要です。家電製品や日用品を買い揃えるときは、購入費用を試算しておく必要があるでしょう。
別居中の生活費は婚姻費用として扶養能力のある方が、負担する義務があります。収入のない専業主婦などは、夫婦の話し合いで合意できたときや家庭裁判所で支払いを命ずる審判が出たときは、別途費用を負担してもらえる可能性があります。
ただし、婚姻費用だけでは生活費が十分にまかなえないことはありえます。また、裁判所で婚姻費用の支払いを命じる審判が出ても支払われず、差し押さえる財産もない場合は、婚姻費用は得られません。
最初から婚姻費用を当てにするのではなく、ある程度の貯金をしておくなどの計画が必要になります。
離婚後の生活費
離婚に際して、財産分与や慰謝料を得ることはできたとしても、それだけで十分なお金を得られることは、一般的にあまりありません。行き当たりばったりではなく、離婚後のお金のやりくりを考えてみましょう。毎月の衣食住にかかるお金のほか、通信費や医療費、子どもの教育費など、わかる範囲ですべて書き出して確認してください。
毎月必要な最低限のお金がわかったら、収入の見込みを計算します。仕事をしている人は、月収がベースとなります。児童扶養手当てなどの公的支援の内容と金額もチェックしておきます。養育費を受け取る予定があれば、お互いの収入をもとに算定表からおおよその養育費がわかります。
これらすべてわかった範囲で、表などに書き出してみましょう。ただし、養育費が支払われなくなることに備えて、養育費は貯金にまわすつもりで予定しておくのが懸命です。
収支をもとに計画をする
毎月の生活費に対して、収入が足りないと予想されるときは、「就職・転職する」「仕事を増やす」などの選択肢を検討しなければなりません。キャリアにブランクがある人は、ハローワークの職業訓練制度を利用して、職業訓練校に通うのもひとつの方法です。
安定した収入を確保してから、別居や離婚の話し合いを切り出すのが理想です。どうしてもすぐに収入を増やす見通しが立たないときには、離婚の準備を遅らせる、実家に戻って家賃の負担を抑えるなどを考えるのがよいでしょう。
離婚後のお金のやりくりを慎重に判断したうえで、余裕をもったスケジュールを立てることが大切です。
なお、養育費の約束は守られないことが多々あります。離婚母子家庭で養育費を受けている割合は、約24%です。養育費の支払いが遵守されない厳しい現状です。
離婚に向けての準備
離婚は、特別珍しいことではありません。近年の離婚件数は、「約2分に1組」のペースと数多くの離婚が成立しています。
離婚は、法的な手続きであり、離婚届を役所に提出して、夫婦のうち一方の籍が抜かれることで成立します。後悔しないように、離婚に向けて準備すべきことを整えてから司法書士などに相談しましょう。
離婚に向けて準備すべきこと
1:離婚の理由を明確にすること
協議離婚には、夫婦の合意が必要となるため、相手を説得できるだけの明確な離婚理由を準備しておく必要があります。
裁判での解決を目指すときには、法律で認められた離婚理由に該当しているかが問われるため、具体的な証拠なども準備しておく必要があります。
2:お金の準備
離婚を成立させるまでの手続きそのものにもお金がかかりますが(特に裁判離婚)、離婚後の生活を成り立たせるためには、長期的な視野から経済的な収支を見通しておくことが大切です。
財産分与の話合いに備えて、結婚後に築いた財産がどのくらいあるのか確認しておくことが必要です。
裁判費用や専門家に支払う費用など、離婚の手続きに備えてお金の準備はどうしても必要です。
3:子どものための準備
親権者になりたいときは、子どもを引き取るための準備をする必要があります。
子どもの進路や預け先についても調べておく必要があるでしょう。
養育費がどれくらいになるかを調べておくことも非常に大切です。
離婚後の問題
お金の問題
離婚したら、収入や子どもとの生活に大きな変化が生まれます。どんなことが起きるのか、何に困るのかなど、各種事例を調べながら自ら想定しておく必要があります。
離婚すると直面するのがまずお金の問題です。
離婚前から働いていて、離婚後も仕事を続ける見通しが立っている人はすぐに生活費に困ることはないかもしれません。しかし、長年専業主婦として生活してきた人は、生活費を確保するために仕事を探す必要があります。正社員として就職するのは決して簡単ではありません。近年の統計では、パート・アルバイトなどの非正規雇用労働者の割合は、労働者全体の38.3%というデータがあります。
離婚後の生活場所についても、あらかじめ考えておく必要があります。離婚後には、夫婦のどちらか(あるいは両方)が新しい住まいを探すことになります。住居を借りる場合には、敷金・礼金、引越し費用などがかかります。実家に頼ることができるなら、実家に転居することも一つの方法です。
子どもの問題
子どもについては、どちらが引き取って育てるかという問題だけでなく、養育費の支払いをどうするかも大きな問題です。仕事と育児の両立を目指すのであれば、子どもの預け先についてもしっかりと考えなければなりません。
子ども本人が両親の離婚をどう受け止めるのかという精神面でのケアも重要です。離婚したからといって、必ず子どもが不幸になるわけではありませんが、子どもの幸福を第一に考えることが大切です。
また、親の介護を抱えている場合は、介護と仕事、育児との両立をどうするのかも考えておかなければならなりません。
財産の把握
離婚するまでには、さまざまなお金の問題をクリアしなければなりません。まず離婚まで別居する場合、婚姻費用の分担が問題になります。これは、扶養能力のある方が、生活費を支払うというものです。
結婚している間に築いた財産は、どちらの名義になっていても共有財産として分割します(財産分与)。
このほか、結婚生活を破綻させた側が支払う慰謝料や、将来の生活費として受け取る年金の分割、離婚後の子育てに必要なお金、子どもと別居している親が支払う養育費などがあります。
財産の把握時期
一度離婚を切り出してしまうと、相手がもっている通帳などをチェックするのは難しくなります。離婚を考えた時点で、財産の把握をはじめましょう。財産の内容がわからないと話し合いもできず、請求額が減る、請求ができないなどのおそれもあります。
なお、財産はプラスの財産だけとは限りません。住宅ローンや借金など、マイナスの財産もどのくらいあるのかをチェックしておきましょう。これらは、財産から差し引かれることになるからです。
離婚原因を作った側から離婚することはできるでしょうか。
浮気した本人からの離婚請求
夫婦のうちで浮気をした方が浮気相手と結婚するために、裁判で離婚を求めたらどうなるのでしょうか。
離婚の原因を作った側(有責配偶者)からの離婚請求を、裁判所は原則として認めていません。常識的にみて、あまりに身勝手だからです。
なんの責任もない人が離婚を拒否しているにもかかわらず、原因を作った側からの離婚請求を認めたら、それは裁判所が原因を作った側に加担するようなものです。ですから、裁判の過程で、原告が離婚の原因を作ったことがわかれば、請求は棄却されます。
しかし、1987年の最高裁判決は、原因を作った側からの離婚請求をはじめて認めました。この夫婦の場合、別居期間が36年の長期とわたっていたことが大きな材料となりました。近年は1年半の別居で離婚が認められたケースもあります。あくまで総合的な要素で判断されるということです。
一方的離婚は、関係が回復する見込みがまったくない夫婦に、戸籍だけの関係を強制するのはかえって不自然だ、という考えにもとづき、判決したものです。これを「破綻主義」といいます。関係が完全に破綻している夫婦に対しては、前向きな解決策の一つとして離婚を選択してもいいのではないか、これが近年の裁判所の考え方です。離婚の成立を優先して「どちらに責任があるか」という問題は後回しにしよう、というものです。
厳しい条件のクリア
訴えられる側からしたら、相手が原因で関係が破綻したのに、「もう破綻しているから離婚を求める」と言われるのは、納得がいきません。
裁判所もそのあたりを考慮し、離婚の原因を作った側が離婚請求を行うにあたっては、厳しい条件をクリアしなければならない、としています。もちろん、条件をすべて満たしているからといって自動的に離婚が認められるわけではありません。
裁判の審議では、訴えられた側に責任がないという点が重視されます。離婚を認めるかどうかの判断だけでなく、財産をどう分けるかや慰謝料を決める際にも訴えた側は不利な立場になるということです。
有責配偶者から離婚するときの最低条件
- 別居期間が長いこと
別居開始から、かなりの期間が経過していることです。具体的に、どれくらいかは期間に基準がなくケースごとに判断されます。 - 未成熟の子どもがいないこと
未成年で親の養育が必要な子ども、病弱などの理由で経済的に自立できない子どもがいる場合に離婚が認められにくいようです。 - 相手が過酷な状況におかれないこと
離婚後、相手方が精神的経済的に過酷な状況におかれ、多くのダメージを受けないかが重視されます。
離婚判断に際して考慮されること
有責配偶者としては、次のような点が考慮されます。
- 別居後も、相手の婚姻費用を負担してきたか否かです
- 財産分与や慰謝料について、誠実な提案を行なったか否かです
- 離婚後の相手方の生活保障について提案しているか否かです
訴えられた配偶者について、配偶者が考慮されることとして、①離婚の拒否が単なる報復になっていないか②仕事があり独立して生計を立てることができるかどうか③夫婦の関係回復に努力してきたか④自分の側にも離婚の原因があったか、です。
長期間治る見込みがない精神病
配偶者が、夫婦助け合って生活していく義務を果たせないほどに重い精神病を患った場合には、離婚の理由として認められることがあります。
対象となる精神病には、統合失調症、早期性痴呆、アルツハイマー病などがあります。これらを患っている期間が長く、治る見込みがないときに限られます。アルコール、薬物などの依存症、ノイローゼなどの神経症は、重い精神病に当てはまらないとされます。
ただし、これらの病気を患っている人が家出を繰り返しているような場合や、相手が困ることがわかっていて生活費を渡さないような場合は「婚姻を継続しがたい理由」で対応することになります。
離婚成立の条件は困難
重い精神病を患うのは不可抗力でもあり、夫婦は助け合わなければなりません。したがって、精神病を理由に離婚が認められるには、幾つもの条件を満たしていることが条件になります。
まず病気の状態や本当に回復の見込みがないのかを確認するために、精神科医が鑑定した診断結果を提出する必要があります。また、これまで誠実に看病してきたなど、病気の回復に尽力してきたかも判断の要素となります。
さらに、精神病を患っている人が今後経済面や療養で困らないよう、具体的な対策を立てることも求められます。たとえば離婚後には、患者本人の実家がサポートすることが決まっているなど、金銭的にも配慮する準備が必要ということです。
すなわち、重い精神病が離婚の理由に認める条件としては次のようなものです。
- 重い精神病であること
夫婦として生活していくことが難しい状態です。相手のことが理解できても、独り言を繰り返す、幻覚に向かって叫ぶなどの症状が出るのは、一つの例です。 - 回復の見込みがないこと
治療を続けても回復する可能性がないことは、医師の診断書が判断材料です。投薬などで回復の見込みがある場合は、離婚は認められません。 - 治療が長期間にわたっていること
- これまで献身的に患者の面倒をみてきたこと
重い精神病にかかったからといって、病気になった本人を見捨てるような行為は認められません。看病している側の負担に配慮して、結婚生活を続けられるかどうかを慎重に判断します。 - 今後の患者の生活の見通しがついていること
離婚が成立しても、精神病の患者本人が安定した生活を送れるかどうかが判断の基準になります。
婚姻破綻
結婚を続けられない重大な理由があったときは、離婚原因の一つです。「お互いに結婚生活を続ける意思がまったくない、あるいは片方に離婚の意思がなくても、結婚生活が破綻し、回復する見込みがない」とき「その他婚姻を継続しがたい重大な理由」として、離婚裁判で扱われます。
現実として夫婦関係が破綻する原因はさまざまです。具体的な理由として、民法が定めた配偶者の不貞行為、配偶者の結婚義務違反、配偶者の生死が3年以上不明、配偶者が重い精神病にかかり回復の見込みがないとき以外に、結婚を続けられない重大な理由があったときが定められています。結婚生活が破綻して、元通りになる見込みがないなら、そうなった理由がなんであっても離婚を認めていいのではないか、という趣旨です。
結婚生活の破綻が認められるケース
この離婚理由では、具体的な原因よりも「どれだけ関係が破綻しているか」が重視されます。ですから、「性格の不一致」であっても、離婚が認められるケース、認められないケースがでてきます。訴えた側が主張する理由が、本当に夫婦の関係を壊したのか、そして本当に元通りになれないのか、裁判官が夫婦の事情をもとに最終的に判断します。
具体的なケースとして、次のようなものが考えられます。
- 性格の不一致
相手の価値観や生活に我慢ができないような場合です。ケンカが絶えない、会話がまったくない、まったく愛情を持てない、子どもの教育方針がまったく異なる、などが考えられます。 - 暴力・精神的虐待
肉体的な暴力だけでなく、暴言などの精神的な暴力があった場合です。具体的には、殴る蹴るの暴行を受けた、何度も「死ね」と言われた、長期間無視された、などです。 - 浪費・借金
生活費を一方的に使い込んだり、お金を借りて趣味に注ぎ込んだりしたときです。そのせいで生活に困り、通常の暮らしができなくなった場合です。具体的には、給料のほとんどをギャンブルにつぎ込んだ、遊びのために子どもの教育資金を持ち出した、などです。 - 家庭をかえりみない
育児にまったく協力しない場合です。具体的には、配偶者が病気で寝ているのに、家事をまったくしないとか、子どもの学校行事があるのに一人で海外旅行に行く場合などが考えられます。 - 相手の親族との不仲
双方の親や親族と対立したり、不仲になったりした場合です。具体的には、配偶者の両親から繰り返し暴言を受けた、相手の親族から暴力を振るわれた、などがあります。 - 宗教にのめり込む
家庭生活が疎かになるほど、過度な宗教活動を行っている場合です。具体的には、宗教活動のために家事や育児を放棄したとか、宗教グッズ購入での浪費、入信の教養などです。 - 飲酒
過度のアルコール摂取により、家庭が崩壊している場合です。たとえば、朝から酒を飲み仕事をしないとか、給料の大半を飲み代に使ってしまうなどです。 - 性生活の拒否・強要
夫婦が性生活に不満を持っている場合です。たとえば、SM行為を強要する、無理やり性的行為を迫る、相手からの性交渉をまったく受け付けない、などです。
同居義務違反の基準
- 配偶者の承諾を得ないで勝手に別居している場合は、悪意の遺棄とみなされます。
- たびたび家出をするとか、浮気相手の家に入り浸っている場合も同居義務違反とみなされます。
- 配偶者を家に入れない、配偶者を虐待して追い出すことは同居義務違反とみなされます。
- 単身赴任や病気療養で別居している場合は、同居義務違反とみなされません。
- 夫婦関係をやり直すため、一時的に別居している場合は同居義務違反とみなされません。
- 配偶者の暴力を避けるために家を出ることも、悪意の遺棄とみなされません。
同居義務違反の証拠
- 別居したことがわかる住民票とか別居している家の賃貸契約書は、同居義務違反の証拠になります。
- 別居の経緯を記したメモとか、同居の拒否を示す録音データは同居義務違反の証拠になります。
- 一方的に家を出ていったことを示す手紙・メールは、同居義務違反の証拠となります。
扶助義務違反の基準
- 最低限の生活費を渡さないことは、扶助義務違反とみなされます。
- 病気の配偶者を看病せず放置したことは、扶助義務違反とみなされます。
- 生活費の大半を趣味やギャンブルに使いこむことは、扶助義務違反とみなされます。
- 健康なのに働かないとか、生活費を送る約束で別居したのに送らない場合は、扶助義務違反とみなされます。
- 家事に専念するため職に就かないことは扶助義務違反とみなされません。
- 配偶者が一方的に家を出たときに生活費を渡さないことは、扶助義務違反とみなされません。
扶助義務違反の証拠
- 生活費を渡されていない場合は、源泉徴収票や預金通帳が証拠となります。
- 収入の大半を、趣味やギャンブルにつぎ込んでいるなら、購入した現物やレシート、クレジットカードなどの明細書が証拠となります。
協力義務違反の証拠
- 家事・育児を放棄しているという場合は、そのことで家庭生活がなりたっていない様子を定期的に映像や写真にとっておけば、証拠になるでしょう。
- 妻が専業主婦の場合でも、夫に家事や育児の義務がないわけではありません。これらを放棄している場合も協力義務違反にあたることがあります。
3年以上の生死不明
配偶者と音信不通になってから3年が過ぎ、生死もわからないときには、離婚を求めて裁判を起こすことができます。最後に相手といつ連絡をしたかを証明するには、消印付きの手紙や電話の通話履歴、メールの履歴が有効です。また、相手をさがす努力をしたことを示すために、警察に捜索願いを出したことがわかる受理証明書が必要になります。
また親戚や知人、仕事の関係者などに「○○年以降に連絡はなく、見かけてもいない」という陳述書を書いてもらう必要があります。このときに「連絡を受けた」「本人と思われる人を見た」という証言があると、生存の可能性があるとみなされ、離婚理由として認められません。
行方がわからなくても相手から電話や手紙などがあり、生きているということが明らかな場合には、「生死不明」という離婚理由には当たりません。「行方不明」の扱いとなり、この状況で離婚をするには、「悪意の遺棄」か「婚姻を継続し難い重大な事由」として、裁判を起こすことが必要です。
なお裁判で離婚が認められたあとで、相手の生存がわかっても、離婚が取り消されることはありません。
配偶者が生死不明のときの離婚方法
- 3年未満のとき
3年未満の場合は、「悪意の遺棄」か「婚姻を継続しがたい重大な理由」にあてはまると裁判でみとめられた場合、離婚が成立します。 - 3年以上7年未満のとき
相手からの連絡や消息が最後にあってから「3年以上生死不明」を証明できれば、離婚が認められます。 - 7年以上のとき
2と同じ理由で、裁判を起こせば確実に離婚できる可能性が高いため、離婚としては一般的な方法といえます。
この場合、失踪宣告の申立てもできます。失踪宣告の審判を受けると、生死不明者は死亡したとされ、婚姻関係が解消されます。ただし、後日生きていた場合、取り消されることになります。
性的関係をともなう浮気
法律で認められた5つの離婚理由のうち、1つめの「不貞行為」とは、配偶者以外と性的な関係をもつことです。つまり、セックスをともなう浮気を指します。
1回限りのことなのか、特定の異性なのか、愛情をともなうか、何回会ったのかなどは、関係ありません。配偶者以外と性的関係をもったという事実があれば、それが離婚理由になるのです。酒に酔ったために1回だけの浮気などの理由は通用しません。
性的暴行を受けた被害者のケースは、不貞行為とは除かれます。あくまで、本人の自由な意思で性的関係をもったかどうかが問題とされます。
離婚に向けた別居中にほかの異性と性的関係をもった場合は、どうでしょうか。
婚姻関係がすでに破綻していたと裁判所が認めれば、不貞行為とされません。しかし、別居が数カ月に過ぎないときは、関係が破綻していないとされ、不貞行為と判断されることがあります。
性的関係の証拠
相手が浮気を認めず、証拠もない場合、不貞行為は認められず、離婚は成立しません。裁判で離婚を勝ち取るには、証拠を集める必要があります。
性的関係があったことを証拠とする際、もっとも効力があるのは、浮気の現場をおさえた写真やビデオの映像です。実際に行為中のものを撮影するのは難しいでしょうが、ラブホテルに出入りする写真やビデオは、性行為があったと推測されるので、証拠となりえます。
浮気相手方への外泊や不倫旅行などの写真や映像をとっても、性的関係が本当にあったかどうかはわかりませんが、証拠としての効力はあります。通話履歴やメールのやりとりも証拠として無視することはできません。相手に浮気の事実を認めさせる材料ともなりうるので、離婚の準備をするには、収集することをおすすめします。多くの人は、自分で浮気の証拠集めが難しいでしょうから、探偵・調査会社に依頼しているようです。
不貞行為の内容
- 特定の異性と関係をもち続けていることは、不貞行為に該当します。
- 初対面の相手と一度だけ関係をもった場合も不貞行為に該当します。
- 愛情はないが、単にセックスフレンドとして付き合っている行為も不貞行為となります。
- 性的関係のない浮気相手に愛情を抱いているだけでは不貞行為とみなされません。
- いつか性的行為をしたいと考える相手がいるが、現状は関係をもっていない場合は、不貞行為とはみなされません。
- 本人の意思に反して、性的暴行を受けた場合も不貞行為とはみなされません。
- 同性と性的関係を続けている場合は、どちらともいえません。
なお、2021年、同性同士の性的行為を「不貞行為にあたる」とし、慰謝料の支払いを命じる初の司法判断が下されました。従来は、不貞行為にあたらないとする見解が有力でしたが、性的少数者への理解が進む状況が反映されつつあります。 - 日常的にキスをしたり触れ合う相手がいる場合も、どちらともいいきれません。
悪意の遺棄
離婚理由の2つめは、悪意の遺棄です。民法では、婚姻にともなう3つの義務を定めており、これを故意に怠ることを法的に悪意の遺棄といいます。
- 同居義務
夫婦が一緒に住む義務です。 - 扶助義務
生活費を出し合ってお互いが同レベルの生活が送れるようにする義務です。やむをえない理由で片方が無収入なら、もう片方が助けなければなりません。 - 協力義務
力を合わせて暮らしを維持する義務です。
ただし、以上の3つの義務を怠っただけでは「悪意の遺棄」と認められません。「悪意」とされるのは、故意が必要です。すなわち、「これで夫婦の暮らしを破綻させてやろう」と相手が困ることがわかったうえでやっているかが必要です。また、そこまで意識していなくても、「これで結婚生活が破綻しても構わない」と考えていることが必要かと思います。また、「遺棄」とは夫婦の義務を怠った状態を知りつつも放っておく状態を指しています。
協議離婚
協議離婚は、夫婦の話し合いだけで成立させる離婚です。お互いが離婚に合意し、市区町村役場に離婚届けを提出受理されれば成立します。協議離婚のメリットは、費用と手間がかからない、合意すればすぐに離婚できるという点です。離婚届には離婚理由の記入は不要です。
夫婦が合意していれば、どんな理由で離婚しても構いません。しかし、夫婦で合意できない限り、いつまでたっても離婚ができない、というデメリットがあります。
また、慰謝料や養育費などお金に関する話し合いが曖昧なまま離婚すると、あとでトラブルに発展する恐れもあります。また、話し合いの結論に不本意なのに、「一日も早く離婚したい」といった理由で合意してしまうケースも多いというのが実情です。
調停離婚
調停離婚では、2名の調停委員と裁判官からなる調停委員会が、夫婦それぞれの意見を調整し、解決に向けたアドバイスを行います。第三者が間に入ることで冷静に話し合いを進めることができ、話し合う内容にも漏れがなくなります。調停委員会は、双方が合意したところで、調停調書を作成します。調停調書とは、離婚の調停で夫婦が合意した場合に作成される合意文書のことです。家庭裁判所が作成するため、本人たちが作成する必要はありません。
調停離婚は、お互いの歩み寄りがなければいつまでも調停は続き、未解決のまま調停が終了することもあります。また、調停では、自分勝手な理由からでの離婚は認められません。社会の常識にあっているかが、調整委員会によって問われます。
裁判離婚
裁判離婚は、夫婦のどちらかが家庭裁判所に離婚裁判を起こし、裁判所の判決によって決着をつける方法です。裁判離婚では、「離婚するかどうか」だけでなく、子どもの親権をどうするか、夫婦の共有財産をどうするか、将来の年金をどう分けるか、といった問題についても同じ手続きのなかで処分を求めることができます。
裁判離婚では法に基づいた公平な判決がくだされ、判決にしたがわない場合は、強制的に応じさせることができます。
裁判離婚では、裁判を有利に進めるための証拠を集め、相手の言い分に説得力のある反論をしなければなりません。通常は、弁護士に依頼して、裁判を進めるため、その費用を負担する必要もあります。
また、法律で決められた理由がないと裁判を起こすことはできないとか、見知らぬ他人が裁判を傍聴するといったデメリットがあります。
離婚制度の特徴
全体の割合としては、協議離婚が約9割です。裁判離婚は1%、残りが調停離婚です。離婚の理由については、協議離婚は問われません。しかし、調停離婚、裁判離婚は離婚の理由が問われます。
弁護士費用などを除いた手続きの費用は、協議離婚はかかりません。調停離婚は、2,000円程度、裁判離婚は20,000円程度、です。
解決までの時間としては、協議離婚は合意すれば即時に解決します。調停離婚は、概ね6ヶ月~1年程度。裁判離婚は、1~2年程度が多いようです。
離婚届の提出は、協議離婚・調停離婚・裁判離婚ともに必要です。ただし、調停離婚・裁判離婚は、相手方の署名・押印・承認の記載は、不要です。
裁判離婚の特徴
裁判で離婚を争いたい場合、離婚理由が必要です。離婚理由は、次のような理由が定められています。
- 配偶者に不貞な行為があったとき
結婚している人が、配偶者以外の人と自由意思で性的関係を持つことです。たとえば、性的行為をともなう浮気、風俗店に通い続けるなどです。 - 配偶者から悪意で遺棄されたとき これは、配偶者が結婚の義務を意図的に怠ったとき、です。
配偶者が理由もなく同居しなかったり、協力しなかったり、生活の保障をしなかったりすることです。たとえば、生活費を家に入れない、家出を繰り返す、病気の配偶者を放置するなどです。 - 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
失踪や家出などにより、配偶者からの連絡がまったくなく3年以上生死がわからない状態です。たとえば、家出して消息がわからない、生きているのかどうかがわからないなどです。 - 配偶者が重い精神病にかかり、回復の見込みがないとき
配偶者が重度の精神病になり、家庭を守る義務を果たせなくなることです。たとえば、統合失調症、認知症、躁うつ病、偏執病、アルツハイマー病などです。 - その他婚姻を継続しがたい重大な理由があるとき
上記1~4に当てはまらないものの、夫婦関係が実際には破綻していると考えられる状態です。たとえば、性格の不一致、性生活の不一致、DV、過度の宗教活動、配偶者の両親・親族との仲たがいなどです。
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