判例は、財産分与に損害賠償の要素を含めて給付がされた場合において、離婚慰謝料の支払いを請求するときには、その額を定めるにつき、損害賠償の要素を含めて財産分与がされた趣旨を斟酌しなければならないとしました。
そして、この財産分与によって、請求者の苦痛がすべて慰謝されたと認められたとするときは、重ねて慰謝料請求は許されないが、財産分与に損害賠償の要素を含めたとは解されないとき、または、含めたとしても請求者の苦痛の慰謝に足りないと認められるときは、別個に不法行為による離婚慰謝料の請求を妨げられません、と判示しました。
この判決は、財産分与請求権と慰謝料請求権とは併存しうるものであって、一方が実現されたからと言って、当然に他方の行使が妨げられることはないことを示しました。しかし、両請求権の間には相関性があり、財産分与の内容によっては、後の慰謝料請求に影響することを示しました。
これは、包括説と限定説との折衷とも言える立場で、理論的には徹底しないが、実際的な解決を意図し、実務上の指針を示して、具体的事案に応じて「解決の一回性」も、「個別請求の可能性」も、活かすことのできる妥当な運用を可能にするものです。
その後、判例は、両請求権が別個のものであることを前提に、離婚の訴えに附帯して離婚に基づく損害賠償と財産分与の双方を併合して請求することができること、その場合には裁判所は財産分与の額を定めるにつき、損害賠償の点をその要素として、考慮することができなくなるに過ぎないと判示しました。
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