内縁(その7)婚姻の法文解説
本ページでは、婚姻についての法文を解説しています。離婚についてのご相談、承っております。お気軽にお問い合わせください。
離婚・財産分与・慰謝料請求は、最低限の費用で済む当事務所へご相談ください。
内縁の配偶者が事故で死亡した場合、生存内縁配偶者の、損害賠償請求が問題になります。
各種判例を、ご紹介いたします。
内縁の夫が事故で死亡した場合、生存している内縁の妻は、扶養利益の侵害として、財産的損害の賠償を請求できます(大阪地方裁判所判決昭和54年)。
また、配偶者に準ずる者として、民法第711条が適用され、慰謝料請求が認められた例も、あります(東京地方裁判所昭和36年)。
さらに、死亡に至らない傷害の場合でも、死亡に比肩すべき重大な傷害の場合に、内縁配偶者に、固有の慰謝料請求を認めました(福岡地方裁判所小倉支部判決昭和56年)。
ただし、財産的損害については、要扶養状態にない内縁の妻からの、損害賠償請求を否定したもの(神戸地方裁判所判決昭和39年)、一般的に内縁の妻が請求する場合には、女性が男性に、経済的に依存する実情から、要扶養状態の有無にかかわらず、扶養利益の侵害による損害賠償を認める、としたものがあります(宇都宮地方裁判所判決昭和46年)。
判例は、財産的損害および精神的損害いずれの損害賠償請求権をも、相続人が相続するとの立場を、採用しています。他方、生存内縁配偶者には、扶養利益の喪失を理由とする損害賠償請求権があります。
この権利の調整として、判例は、生存内縁配偶者への扶助に充てられるべき部分を控除した残額が、逸失利益として、相続人に相続されると解しています(札幌高等裁判所判決昭和56年)。
最高裁判所も、自動車損害賠償保障法第72条1項に基づく保障金請求に関する事案で、すでに内縁の妻に、扶養利益に相当する保障金が支払われているときは、相続人にてん補すべき死亡被害者の逸失利益の額から、この部分を控除すべきである、と判示しました(最高裁判所判決平成5年)。
生存配偶者への扶養利益の補償が、相続による損害賠償請求権の取得より、優先することを明確にしたものです。