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離婚の法文解説

  • 有責配偶者の離婚請求と調停離婚との関係

    夫婦が相当長期間別居し、その間に未成熟子がいない場合には、離婚により相手方が極めて過酷な状態におかれるなど、著しく社会正義に反するような特段の事情がない限り、有責配偶者からの請求でもその請求は許されます。

    このような基準に合致しない有責配偶者の離婚調停申し立てがあった場合、調停離婚を成立させることができるでしょうか。

    調停離婚を協議離婚に近いものとして理解をすると、肯定してよいでしょう。しかし、判決離婚に近いものとして理解すると、許されないことになるでしょう。

    最終的には法の求める趣旨を当事者によく説明し、子の福祉を害するものでない限り、当事者の実質的な利益をはかることが望ましいことと考えられます。

    調停離婚の手続き

    離婚に関する調停は当事者の申し立てによって開始されるのが通常です。他の一般調停事件と同様、男女二人以上の調停委員と家事裁判官で構成される調停委員会で行われます。原則として本人が出頭し、手続きは公開されません。

    調停離婚は、当事者間の合意が前提となっており、離婚は身分行為であるから、調停成立時に離婚意思の存在が確認されることが必要です。調停の進行過程において、代理人のみが出頭し手続きを進める場合があるとしても、最終的に離婚が成立する時点においては、本人の離婚意思を確認することが必要です。

    成年被後見人が離婚する場合には、成年後見人の同意を要しないものとします。離婚するには離婚意思が必要ですから、離婚の性質およびその効果を理解する能力が必要となります。その能力があり、離婚意思が確認される限り、被後見人は後見人の同意なくして離婚することができます。しかし、財産分与・慰謝料など財産に関する事項については、成年被後見人は財産を管理する能力のない常況にあるから、その合意には、成年後見人が法定代理人として関与することが必要でしょう。

    夫婦関係調整調停の申し立て書式では、通常、財産分与と慰謝料とを区別して申し立てをすることになっており、調停においては、財産分与と慰謝料は区別して、その支払い義務の存否を確認しながら進められるのが通常です。

    しかし、その他に、親族からの借入金が問題となったり、婚姻費用が問題となったりし、最終的には、それらを総合して解決金などの表示で総額が定められることも多いでしょう。その場合、財産分与・慰謝料などの離婚請求について、すべて解決できているのか不分明な場合が生じますが、離婚に関して、相互に債権債務がない旨の清算条項があれば、一括して解決済みであると解されます。したがって、後日、その請求をすることはできません。

    調停中、離婚や財産分与については合意ができたが、親権者の指定についてだけ合意ができない場合があります。そのような場合、親権者指定以外の情報についてのみ調停を成立させ、親権者指定については審判手続きで処理をすることができないかという問題があります。調停離婚では、判決離婚のように職権で親権者を指定する旨の規定がないことから、未成年者がいる場合でも親権者の指定をせずに調停離婚を成立させることは可能です。

    戸籍実務でも、そのような届出も受理されることになっています。

    調停離婚の効力

    調停により離婚が成立すると、離婚については、確定判決と同一の効力が生じ、付随する乙類審判事項については、確定審判と同一の効力が生じます。ところで離婚訴訟の確定判決では、口頭弁論終結時における離婚原因の存否についても確定されますが、調停では、どのような離婚原因があったのかは必ずしも明示されません。当事者が不貞行為を主張していたとしても、不貞行為の存否が確定されることにはなりません。したがって、離婚という法律効果が、確定判決と同一であるというにとどまり、再審事由がない限り、その効力を覆すことはできないと解するのが通説的見解です。

    調停離婚の戸籍届出

    調停離婚が成立した場合、申立人は調停成立の日から10日以内に離婚届出書に調停調書の謄本を添付し、所定の届出事項を記載して戸籍の届出をしなければならないのは、審判離婚と同じです。申立人が届出義務を負うことから、相手方において現姓を維持する旨の届出を離婚届と同時にするときは、調停条項の「申立人と相手方は、本日調停離婚する」という文中に「相手方の申し出により」と付記するのが通例です。

  • 調停離婚の意義および性質

    離婚に関する紛争は、人事に関する訴訟事件として、調停前置主義が採られています。
    原則として、まず、家庭裁判所に調停の申し立てをしなければなりません。調停において、夫婦間に離婚の合意が成立し、調停委員会または家事審判官がその合意を相当と認めて、これを調書に記載したときは、離婚調停が成立します。これが調停離婚と呼ばれるものです。

    調停離婚の制度は、家事審判法によって創設されたものです。同法の前進である人事調停法当時は、調停前置ではなく調停の申し立てが淳風にそわないときは、却下または「なさざること」ができ、調停において合意が成立しても、当然に離婚の効果は生じず協議離婚の届出をしなければならなかったのです。

    しかしながら、家事審判法は、調停が成立すれば、すべて確定判決と同一の効力を有するものと定めた結果、離婚についても、調停成立と同時にその効力を生じ、離婚の届出を待たずに婚姻が解消することになりました。

    調停離婚の法的性質

    この調停離婚は、協議離婚、判決離婚とどのような関係に立ち、どのような法的性質を持つかについては、説が分かれています。

    第一に、調停離婚を裁判所の離婚とみる説、があります。調停離婚を判決離婚と近似した裁判上の離婚の一種とみるのです。

    この説は、調停の本質を裁判とみます。調停も家事審判官が調停委員会を主宰し、また単独で行うものであり、当事者から事情を聴取し、事実の調査、証拠調べなどを行い、調停機関としての判断を提示し、当事者を説得し、納得させるものであるから、裁判と変わりがないと考えるのです。

    判決離婚と調停離婚の違いは、実態面と手続き面から考えています。

    実態面では、前者が特定の離婚原因の存在が必要であるのに対し、後者は夫婦生活の継続についての絶望的な事実があれば、足りるとしています。

    手続き面では、前者が訴訟手続きによることを要するのに対し、後者は家事審判法による簡便な手続きによる点が異なるにすぎません。また、成立手続きについては、前者が直接離婚を宣言するのに対し、後者は勧告、説得などによって、当事者をして調停機関の判断に納得・合意せしめるものであります。

    裁判所の機関が、その判断に基づいて離婚を成立させて、届出を待たずに離婚の効力が生ずる点において、両者は共通しているとしています。

    第二に、離婚調停を裁判所の離婚とみない説があります。多数説は、調停離婚を裁判上の離婚とみないが、他方、協議離婚とみる説も少数であります。多くは、協議離婚でも裁判離婚でもない独特の離婚制度であると理解しています。

    そのなかで、裁判離婚について近いものとしてみるのか、協議離婚に近いものとしているのかについて、説の違いがあります。

    各説の検討

    調停=合意説については、判断を求めて裁判所にくる当事者に対し、自己決定を求めるのは相当ではないこと、自己決定に委ねると弱者救済が充分にされない恐れがあること、自己決定を理由としてなすべき判断が、回避される危険があることなどの問題点が指摘されています。

    また、判決離婚しか認めない国の法を準拠法とする渉外離婚について、調停離婚を認めるのは相当でないことになります。また、現在の日本には、旧民法下の家制度の考え方がなおのこっており、合意を重視するのが相当でない場合があるし、この利益を確保するためには、当事者双方の意思に反して、説得をしなければならないこともあります。

    しかし、他方、調停=判断説の問題があります。調停で、証拠調べをすることは可能であるが、実際上、ほとんどは別席調停であり、一方から得られた情報がすべて他方当事者に開示され、その反論の機会が保障されているわけではありません。合意形成を目指す手続きでは、訴訟と同レベルの正確な事実認定を行うことが難しい場合があり、当事者を説得するための前提となる事実について、訴訟的判断と同視できるだけの正確性が担保されていません。

    また、夫婦関係には非法の領域があり、法的判断だけでは合意が難しい場合があります。夫婦や子供の問題は、可能な限り当事者が主体的に意思決定できるように配慮することが必要です。

    説得の対象として扱うよりも、合意の主体として扱うほうが、紛争の解決方式として望ましいでしょう。そうした諸点を考えると調停の本質を判断にのみ求めるのは相当ではないような気がします。

    以上のとおり、判断の重視、合意の重視と言っても、いずれも一律には考えられません。合意と判断の双方に、調停の本質的契機があるとみて、事案に応じてその重点の置き方を考えることが必要であろうと思われる、という考え方もあります。

  • 訴訟上の和解離婚の意義および性質

    民事訴訟法は、訴訟上の和解について、これを調書に記載したときは、その記載は確定判決と同一の効力を有すると規定しています(第267条)。

    しかし、人事訴訟法が成立するまでは人事訴訟手続法により、人事訴訟には、民事訴訟法第267条が適用されず、訴訟上の和解により離婚の効果は発生することができなかったため、訴訟中、合意が成立した場合には、協議離婚をし訴えを取り下げることにより、訴訟を終了させることしかできませんでした。

    そのため、訴訟上の和解が成立しても、協議離婚届が提出されるまでは、離婚の効力が生じないことになり、合意と齟齬する場合は生じる余地がありました。他方、訴訟上の和解では、調停離婚と同様、裁判所において離婚意思が確認されており、ただちに離婚の効果の発生を認めても支障がないと考えられることから、人事訴訟手続きでは、原則として、訴訟上の和解についての民事訴訟法第267条は適用されませんでした。

    しかし、離婚訴訟および離縁訴訟については、例外として民事訴訟法第267条が適用され、訴訟上の和解により離婚または離縁の効果が生ずることとされました。

    訴訟上の和解手続き

    離婚訴訟では、原則として、訴訟上の和解が認められます。
    民事訴訟では、訴訟上の和解の方法として、当事者が遠隔の地に居住していることその他の事由により、出頭することが困難と認められる場合において、特例を設けています。

    すなわち、その当事者が、あらかじめ裁判所または受命裁判官もしくは受託裁判官から提示された和解条項案を受諾する旨の書面を提出し、他の当事者が口頭弁論などの期日に出頭してその和解条項案を受諾したときは、当事者間に和解が整ったものとみなすとされています(民訴第264条)。

    また、裁判所または受命・受諾裁判官が、当事者の裁判所などの和解条項に服する旨記載した書面による共同の申立にもとづき、事件の解決のために適当な和解条項を定めて告知したときは、和解が整ったものとみなすとされています(民訴第265条)。

    しかし、訴訟上の和解離婚では、和解成立時に離婚の効果が生じるため、和解成立時に離婚意思の確認が必要であります。

    したがって、このような和解条項案の書面による受諾や裁判所などが定める和解条項にもとづく和解は、いずれも相当ではないと考えられることから、これらの規定は訴訟上の和解離婚は適用されないものとされました。

    また、いわゆる電話会議システムを利用した和解については、平成15年の民事訴訟法の改正により、従来の同法170条5項が削除され、同システムにより訴訟上の和解ができるようになりました。

    しかし、電話会議システムでは、当事者の離婚などの意思確認が充分にできない場合があることから、これも和解離婚には適用されないとされました。

    訴訟上の和解離婚の効果

    調停離婚では、親権者の指定について合意がなくても、離婚の効果は生じ、親権者の指定がないまま戸籍も受理される運用であるが、訴訟上の和解も、調停離婚と同様に考えれば、同じ取り扱いをすることも考えられます。

    しかし、民法第819条2項は、「裁判上の離婚」について、裁判所は父母の一方を親権者と定めるとしています。

    そこで、訴訟上の和解離婚が、同項にいう裁判上の離婚に該当するとすれば、常に親権者の指定をしなければならないと解されます。

    また、附帯処分については、訴訟上の和解が成立した場合も判決手続きとして続行することが予定されているが、親権者の指定については規定がありません。

    もし、訴訟上の和解において親権者を指定しなければ、離婚のみが成立し、附帯処分が訴訟手続きとして継続する場合でも、親権者指定のみが別個の手続きとして申し立てをしなければ審理されないままとなる事態が生じるのであります。

    そこで、附帯処分を残した趣旨に反することなどを考えると、和解離婚においては、同時に親権者を指定すべきであります。

    和解離婚が成立しても、附帯処分の申し立てがあり、その附帯処分に係る事項がその婚姻の終了に際し定められていないときは、受訴裁判所はその附帯処分についての審理および裁判をしなければならないものとされています。

    したがって、争点が附帯処分のみにあるときは、先に和解離婚を成立させたうえで、審理を続けることができます。

    なお、戸籍の届出、戸籍の通知については、審判離婚の場合と同様です。

  • 審判の基準と内容

    24条審判は、調停委員会の調停が成立しない場合に行われます。単独調停の場合には、24条審判をすることはできません。家庭裁判所は、その場合において、相当と認めるとき当該調停委員会を構成する家事調停委員の意見を聴いて行います。

    その基準については、「当事者双方のため衡平に考慮し一切の事情をみて」と「当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で事件の解決のため離婚、離縁その他必要な審判をすることはできる」とされています。しかし、具体的にどのような場合に行うのが相当かについては、必ずしも明らかではありません。

    家事審判法24条にもとづき、離婚審判をした事例として大まかに分類すると、次のようなものがあります。

    1. 離婚原因があるにもかかわらず、他方当事者が離婚の合意に応じないため、離婚の審判をした事例として、妻の浪費癖が婚姻後継続しがたい重大な事由に該当するとして離婚裁判をした事例があります。また、夫が離婚に反対しているが、その夫の顕著な協力扶助義務違反があって破綻に陥っている夫婦について、離婚と親権者を定めた事例があります。さらに、約6年間事実上の離婚状態が続いている夫婦について、両者の婚姻関係はすでに破綻しており、夫はいたずらに拒否的態度をとっているものと推認されるとして、離婚の審判をした事例もあります。これらは、離婚に応じない当事者が有責であるなど、離婚原因があり、訴訟になれば離婚判決ができると考えるものであります。
    2. 当事者双方に離婚意思があり、付随事項についても合意の可能性があるが、遠隔地にあるなど、調停への出席が期待できないため、離婚の審判をした事例として、慰謝料の金額以外は合致しているが、遠方にいて調停に出席できないケースについて、慰謝料額を判断して審判をした事例があります。また、隔地者間の離婚調停で慰謝料などの支払いなどについて争いがあるケースについて、慰謝料・財産分与の支払いに懈怠約款をした事例があります。これらは、いずれも当事者双方がいずれも調停に出席し合意することができないため、離婚調停を成立させることができないが、付随事項に争いがあるにとどまり、訴訟よりも審判で解決するのが望ましいと考えるものであります。
    3. 渉外離婚において、協議離婚や調停離婚が認められていないため、審判離婚をした事例は多数あります。しかし、国際司法では調停離婚や審判離婚は、「法定の離婚原因にもとづきなされる裁判離婚とは本質的に相違する」、「協議離婚的性質を有する」などの理由などでこれを否定する見解が有力です。

    審判に対する異議

    離婚の審判に対しては、当事者が審判の告知を受けた日から2週間以内に、当事者または利害関係人は異議の申立てをすることができます。異議申立てがあれば、審判は効力を失います。異議申立てがなければ、確定判決と同一の効力を有することから、当事者および利害関係人の訴権を奪わないための規定です。

    この期間は、当事者については、それぞれ審判の告知を受けた日から、利害関係人については、双方当事者が告知を受けた日から起算します。当事者については異議申立てを却下する審判については、異議申立て人は即時抗告をすることができます。夫婦関係調整調停事件について離婚し、親権者を父とし、妻に対する慰謝料の支払いを命じる24条審判について、夫から異議申立てがされたケースで、離婚および親権者は夫の希望通りであるとして、その部分を却下し、残部についてのみ異議による失効を却下審判の理由中で宣言した事例があります。

    審判離婚の効力

    離婚の審判およびこれに付随する親権者指定、子の監護に関する処分、財産分与に関する審判に対しては、家庭裁判所に対し、2週間以内に異議の申立てをすることはできます。この期間内に異議の申立てがなければ、この審判は確定判決と同一の効力を有することになります。

    付随事項については、どのように考えるべきでしょうか。離婚訴訟について、これに附帯する親権者指定、子の監護に関する処分、財産分与は、訴訟手続きとして進行され、離婚が成立し、これら附帯事項が残った場合にも、判決手続きとして審理が進められ、判決が言い渡されることからすると、同判決が確定すれば、審判事項といえども、判決と同じ効力を持つことになります。

    審判離婚の戸籍届出

    申立人は、離婚審判が確定した後10日以内に、審判の謄本および確定証明書を添付して、戸籍の届出をしなければなりません。離婚の効果は、審判の確定により発生しているから、戸籍への届出は報告的届出であります。

    したがって届出がされない場合、離婚という身分関係の変動が戸籍に反映されないおそれがあります。そこで、離婚など戸籍の届出を必要とする事項については、24条審判が確定したときは、裁判所書記官は遅滞なく事件本人の本籍地の戸籍事務を管掌するものに対し、その旨を通知しなければならないと、されています。

  • 審判離婚の許否

    離婚について少なくとも一方が反対している場合には、当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度を超えているとして、審判離婚はできないとする説や妥当ではないとする説がありました。

    しかし、近時は、当事者双方のいずれもが申立てない事項について、審判することができないとする趣旨であり、当事者の一方の申立ての趣旨にそう以上、他方の申立ての趣旨に反して、審判することはできると考えられてきています。実務もそれに沿った運用が行われいているようです。

    24条審判の実質は、調停案の提示と同様に考えることができ、一方の当事者が離婚を欲しない場合でも、調停機関が離婚後相当と判断すれば、その旨の調停案を提示し、当事者を説得することができるのと同様、24条審判においても、これを否定すべき合理的根拠は見出しがたいと考えられます。

    離婚に反対しているが、内心では仕方がないと考え、積極的に調停に出頭して離婚の合意をする意思まではないケースがあります。また、客観的に見れば、事実上の離婚状態にあり、婚姻を継続できないことが明らかであるのに、離婚のみに反対しているようなケースもあります。審判をすれば、異議なく確定するであろうと予想できる場合があります。また、自ら婚姻継続を困難にする事情を作出しながら、離婚には応じたくないと発言するような場合もありますが、いずれの場合についても、事実上24条審判が行われています。

    審判離婚と付随事項に関する審判

    家事審判法24条2項は、同法9条1項乙類に規定する審判事件の調停については、前項の規定を適用しない旨規定しています。したがって、たとえば婚姻費用の分担、子の監護者の指定、その他子の監護に関する処分、財産分与について、審判事件が申し立てられ、これが調停に付された場合、またはこれらが乙類審判事件の調停として申し立てられた場合には、家事審判法24条1項の審判をすることはできません。しかし、これらが夫婦関係調整調停申立て事件において、付随して主張した場合、審判離婚と同時に審判をすることができます。

    この付随事項に関する審判の性格について、法24条の審判ではなく乙類審判であり、その効果の発生が離婚審判の確定を条件とするにすぎないとする説があります。また、これらの事項が離婚と同時にされる場合は、判決の対象となるのと同様に、24条審判の対象になる説があります。

    いずれにせよ、離婚に付随する場合には、親権者の指定はもとより、婚姻費用の分担、養育費、財産分与などにおいても、審判をするのに妨げないと解されています。家事審判法24条2項が乙類に規定する「審判事項」の調停とせず、「審判事件」の調停としているは、当該審判事件の調停として調停事件が係属した場合を念頭に置いていると考えられます。

    その立法趣旨は、乙類審判事件の調停として調停事件が係属した場合には、調停不成立の場合には、そのまま審判に移行することから、別途24条審判にするのは相当ではないと考えられる点にあると解されます。また、乙類に規定する審判事項であっても、審判事項の調停として、継続してるのでなければ、同法24条2項の対象とならないとするのが文理にも即していると考えられます。

    24条審判は、調停を前提としており、調停が終了する前に行うものであるから、調停不成立を前提とする審判とは性質を異にします。離婚に付随する審判事項については、離婚との同時解決が適切であり、離婚調停が不成立となれば、付随事項も審判には移行せず終了し、訴訟において、離婚に付帯する事項が判決手続きとして、一体として処理されるのと同様、その性質は乙類審判とは異なるものとして、離婚の審判に付随する乙類事項についても、24条審判ができると解するのが相当ではないかと考えることもできます。

    なお、夫婦関係調整調停事件と乙類事件である婚姻費用分担調停事件と併合し、婚姻費用は解決金に含まれるとして、24条審判をした事例があります。婚姻費用分担事件について、乙類審判を求める申立人の利益が害されなければ、実質的には差し支えないでしょう。

    ただ、家事審判法24条2項との関係から考えると夫婦関係調整調停事件についてのみ、24条審判をし、婚姻費用分担については、取り下げか、24条審判確定後に却下する方が解釈上、疑義はないものと考えられる立場もあります。

  • 意義および性質

    家庭裁判所は、調停委員会の調停が成立しない場合において、相当と認めるとき、事件の解決のために、必要な審判をすることができます。これは、調停に代わる審判または24条審判と呼ばれ、この審判にもとづいて、離婚の効果が生ずるものを審判離婚といいます。

    離婚については争いがなくても、離婚の条件について合意にいたらない結果として、調停の成立が困難となる場合があります。調停が不成立となれば、改めて訴訟により解決をすることが必要となります。しかし、自ら離婚の意思決定をすることができないが、裁判所が離婚意思があると判断するのなら、ことさらに争う意思がない場合や双方が意地を張る場合があります。些細な条件について互いに譲らず、合意に達していないが、裁判所によりその点が判断されるのであれば、これにしたがうという場合など、家庭裁判所が審判で判断を示せば、それに当事者が応じることで、離婚を成立させることができるケースがあります。

    このような場合には、調停を不成立として、訴訟により解決を委ねるよりも、家庭裁判所が審判により判断を示し、紛争を解決することが望ましいと思います。そこで、家庭裁判所は、「相当と認めるときは、当該調停委員会を組織する家事調停委員の意見を聴き、当事者双方のため衡平に考慮し、一切の事情を見て、職権で、当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で、事件の解決のため」(家事審判法24条)離婚審判ができることにしたのです。

    これは、審判という形で裁判所の判断を示すものですが、当事者の意思や衡平を考慮し、具体的事案に応じた妥当な解決条件を示して当事者の意思の合致をはかろうとする機能を有します。

    したがって、審判がされても、当事者が、これを受諾せず、2週間以内に適法な意義を申立てすれば、審判は失効します。このように審判離婚は、基本的に裁判所の判断ですが、その基礎には、当事者の意思も働いており、調停離婚、和解離婚と共通するところがあります。

    審判離婚の手続き

    審判離婚の前提として、当該家庭裁判所に、調停が係属していることが必要です。「調停委員会の調停が成立しない場合」とは、家事審判官単独の調停(家事審判法3条2項・1項但書)ではなく、調停委員会による調停が係属し、かつ、合意が成立する見込みがないか、成立した合意が相当ではないと認める場合を指します。

    その結果として、調停が不成立となった場合は、もはや審判離婚をすることができません。したがって、家事審判官は、離婚をめぐる調停において合意が成立する見込みがないか、成立した合意が相当でないと認めるときは、まず、離婚審判をするか否かを検討し、離婚の審判をしない場合において、調停委員会は、調停を不成立にすることになります。

    離婚の審判を行うのは、家庭裁判所であり当該調停委員会を構成する家事審判官です。しかし、この審判は調停の経過の中で、当事者の意思を把握し、当事者双方のため衡平に考慮すること、一切の事情を見て行うこと、当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で行うことが必要とされています。

    そして、要件を充足し、かつ、事件の解決のため、どのような審判にするのが良いのかを判断するにあたって、調停委員がよく当事者の状況を把握できていると考えられます。

    したがって、審判をする場合は、必ず当該調停委員会を構成する家事調停委員の意見を聴かなければならないものとされています。家事審判官が、その審判内容が相当と考えても、当事者がそれに納得し、応じなければ、異議が出され、失効します。当初から異議の出ることが明らかに予測される場合には、事件を避けるべきでありますから、その点を判断するために、家事調停委員の意見を聴取することが必要です。

    夫婦関係調整事件では、審判の主要な対象は、離婚ですが、離婚それ自体について争いがある場合、審判ができるのでしょうか。また、離婚に付帯する乙類審判事項についても、審判ができるかという問題があります。

    前者は、審判離婚においては、「当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で」との要件があることから、離婚に争いがある場合には、双方の申立ての趣旨に反するものではないかという問題です。後者は、家事審判法24条2項において、乙類審判事項については、24条審判ができないとされていることから、問題となります。

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