離婚の基本的なこと後悔しないための離婚
離婚後の氏・戸籍
氏と戸籍が変わる者
離婚によって氏・戸籍が変わる者は、婚姻時に氏を変えた者です。原則、下記の図のように婚姻する前の氏・戸籍に戻ることになります。
ただし、元の戸籍が両親の死亡などによって除籍簿に移動している場合は元に戻ることはできません。その場合、ご自分を筆頭者として新しい戸籍を作成しなければなりません。
離婚後も婚姻中の氏を使用したい場合
離婚後は元の氏に戻ることが原則ですが、離婚届を提出する際に『婚姻に際し称していた氏を称する届』を役所に提出すると、離婚後も婚姻中の氏を使用することができるようになります。
ただし、この場合、戸籍は元に戻ることができません。ご自身を筆頭者とした新しい戸籍を作ることになります。
子供の氏・戸籍
子供の氏・戸籍
子供の氏・戸籍は離婚によって変わることはありません。離婚によって氏・戸籍が変わるのは、配偶者だけです。
たとえば、離婚時に父親が戸籍の筆頭者であった場合、母親が子供の親権を持ち、一緒に生活をすることにしても、子供の氏は父と同様になり、戸籍も筆頭者である父親の戸籍に入っています。
これは、母親が婚姻時の氏を離婚後も引き続き使用する手続きを行った場合も変わりありません。この場合、子供を母親の戸籍に移すには、別途手続きが必要です。子供の戸籍を移す方法
子供の戸籍を移すには、家庭裁判所へ『子の氏変更許可申請書』にて氏の変更を申し立てます。許可が下りたあとに役所に入籍届を提出する必要あります。
子の氏の変更申し立ては難しいものではなく、申立書と子および父または母の戸籍謄本を家庭裁判所へ提出すれば、それほど時間はかからず手続きが終了します。
費用についても、子ひとりにつき800円の収入印紙と郵便切手代が数百円かかる程度です。
子供の戸籍を移す際の注意点
母親が旧姓に戻り、元の戸籍に戻った場合、この戸籍に子供を入籍させることはできません。
これは、3世代戸籍の禁止の原則(戸籍法第6条)によって決まっており、子、父母、祖父母の三世代が同一の戸籍となることが禁止されています。
また、氏を旧姓に戻し、戸籍は自分を筆頭者として新戸籍を作成した場合、子供をこの戸籍に入籍させると子供の氏は母親の旧姓に変更となります。
慰謝料について
慰謝料とは
慰謝料とは、離婚の原因を作った側がその原因により精神的、身体的苦痛を受けた側に支払い賠償金のことを言います。
慰謝料を請求できる離婚原因は、不貞行為や暴力(精神的な暴力を含む)などです。
協議離婚の離婚原因に多い、性格の不一致などの場合は双方に問題があるとされますので、慰謝料を請求することはできません。離婚に関する慰謝料の請求は、離婚後3年を過ぎると請求権を失いますので覚えておきましょう。
請求できる相手
慰謝料は離婚原因を作った配偶者に通常は請求できるものですが、配偶者以外にも請求できる場合があります。
それは、不貞行為の相手に対してです。ただし、どんな場合でも請求できるわけではありません。
相手が自分の配偶者が婚姻していることを知った上で関係を持った場合や、相手方が離婚を迫るようなこと、例えば執拗に電話やメールを送りつけてきた場合などに慰謝料を請求できることができます。逆に自分の配偶者が独身であると言ってきて付き合いを迫っていた場合や、夫婦間がすでに破綻し、事実上離婚状態になっていた後に関係を持った場合などは、相手方に慰謝料を請求することはできません。
慰謝料の金額
慰謝料とは、苦痛に対する賠償金です。
つまり、苦痛を受けた人がその苦痛を金額に換算して請求すればいいのです。
配偶者の不貞行為によって受けた精神的苦痛を金額に換算したら1000万円になると思えば、1000万円を請求していいのです。ただし、現実は支払う側の経済力がなければ無理な話です。
高額な慰謝料の支払いにこだわって、話が長引くのは時間の無駄になることもありますので、よく考えてある程度の金額で納得することも必要になってきます。
現在は、不貞行為による慰謝料の場合、200〜400万円が多いようです。財産分与について
財産分与とは
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦の協力のもとに取得した財産をそれぞれに分配することです。
慰謝料とは違い、双方が権利を主張できるもので、ひと言で財産分与と言っても次の4つの性質が含まれています。- 清算的財産分与 婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を分配すること
- 扶養的財産分与 離婚によって一方の経済状況に不安をきたす場合に、生活を援助する意味合いで財産を分け与えること
- 慰謝料的財産分与 本来慰謝料と財産分与は性質の異なるものなので別々に請求するべきですが、慰謝料を考慮して財産分与に反映させることがあります
- 過去の婚姻費用の清算 別居期間中の婚姻費用について、離婚時に財産分与の形で支払いをすることがあります
財産分与の対象となる財産
財産分与の対象となる財産は、「共有財産」と呼ばれる夫婦の協力によって築かれた財産のみです。
夫婦が婚姻前に取得していたそれぞれの財産や婚姻中に相続によって得た財産は「特有財産」と呼ばれ、財産分与の対象にはなりません。年金については、夫が厚生年金加入者の会社員で、妻が専業主婦であった場合、離婚時に年金分割ができるようになりました。(平成19年4月より)
ただし、すべての年金について分割ができるわけではありませんのでご注意ください。分配の割合について
財産分与はお互いの協力のもとに築いた財産を分配するので、その寄与(貢献)した割合により分配をするべきとされています。
しかし、財産分与に扶養的性質や慰謝料的性質などを含ませる場合などは、割合が変わってきます。基本的には上記の内容を考慮して、お互いの話し合いにより分配を決めるもので菅、現在では夫、妻の寄与(貢献)の程度がわかりにくい場合(妻が専業主婦であるなど)は、原則二分の一で分配という考え方が主流となっています。
財産の請求期間
財産分与は離婚時に行われなかった場合でも、離婚後2年以内であれば請求をすることができます。
ただし、何事も離婚後は話がまとまりにくくなりますので、離婚届を出す前にきちんと決めておくことをおすすめします。親権について
親権と監護権
親権とは「身上監護権」と「財産管理権」から成り立つものです。身上監護権とは子供の身の周りの世話をしたり教育やしつけを行うことを言い、財産の管理や法的手続きの代理を行うことを言います。
通常はこの両方を受け持つ者を親権者として決定しますが、場合によってはこの二つを分け、身上監護権のみを受け持つ監護者を別に定めることもでいます。
親権者の決め方
離婚届には必ず子供の親権を父とするのか母とするのかを記入しなければ受理されません。(監護者を別に定めた場合でも、離婚届に記載するのは親権者のみです。)
親権者は夫婦間の話し合いで決めることが一番望ましいことですが、話し合いがまとまらない場合は家庭裁判所に親権法定の申し立てを行い、調停の場で決定することもできます。なお、親権を決定する際、一番に考えなくてはいけないことは、子供の利益と子供の福祉です。とにかく子供の親権をどちらにするかでもめることが多くなりますが、どうすれば子供にとって一番いいのかを考えて親権をどちらにするのがいいかを決定します。
親権の喪失
親権者が子供の養育を人に任せっぱなしであったり、虐待を行うなど、親権者としての責任や義務を果たしていない場合、他方の親や親族などが家庭裁判所に親権の喪失の申し立てを行い、親権を喪失させることができます。
面接交渉権について
面接交渉権とは
面接交渉権とは、離婚によって子供と別々に生活をすることになった親が定期的に子供に会うことができる権利です。
法律で定められている権利ではありませんが、親子の関係は離婚によって消滅するものではありませんので、子供の福祉に反しない限り認められています。どのような形で子供と面会をさせるかは、以下のような具体的条件を離婚時にきちんと決めておくのが良いでしょう。
- 回数(月単位もしくは年単位)
- 1回の時間(宿泊を可能とするか)
- 会う場所
- 受け渡しの方法
- 面会の他に電話や手紙などのやり取りについて
- 運動会や入学式などの行事への参加について
もし面接交渉についての話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所に調停を申し出ることもできます。
面接の制限
子供との面接は子供のためにならない、悪影響を与えると家庭裁判所が判断した場合、面接が制限されることがあります。
(家庭裁判所への申し立てが必要です。)
例えば、面接時に子供が恐怖心を抱き会いたがらない、養育費の支払いなど果たすべき義務を果たしていない、面接時の取り決めを守らず勝手に子供に会おうとするなどです。養育費について
養育費とは
親は親権や監護権の有無に関わらず、親であることによって当然に未成熟の子を扶養する義務があります。
つまり、離婚後も子供を扶養する気味が父及び母の両者にあり、それぞれが養育費を負担しなければなりません。金額についてはそれぞれの経済状況などを考慮して決める必要がありますが、本来子供を扶養する義務というのは、生活保持義務と言って自分の生活を切り詰めてでも子供には自分の生活水準と同等の生活を保護しなければなりません。
経済的理由で養育費を一切負担しないというのは許されません。養育費の支払い期間
養育費の支払い期間については、一般的に子供が成人(満20歳)になるまでとされています。
しかし、現在は大学まで進学する人が多いので、大学を卒業する年齢(満22歳)までと決めることもできます。養育費の支払い方法
養育費は通常月単位で支払いを受けることが主流ですが、半年分や一年分をまとめて払うという方法も、双方で合意をすれば可能です。
養育費を一括して離婚時に受け取るというのは、よほどの理由がない限りは妥当ではないという裁判所の判例(判断)がありますが、離婚後に連絡が取れなくなり、支払いがされない恐れが大きいと思われる場合は考えた方が良いかと思います。養育費の金額の決め方
養育費の金額の決め方については、まず夫婦間でお互いの収入状況などを考慮して話し合いによって決めます。
話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所へ調停を申し立て、調停により決定させることもできます。算定は以下のような方法がありますが、現在は4番の養育費算定表を参考にすることが主流になっています。
- 実費方式
- 生活保護基準方式
- 労研方式
- 東京及び大阪の裁判所で使用されている養育費算定表によるもの
家庭裁判所において,養育費又は婚姻費用の算定をする際に参考として活用している資料
東京家庭裁判所
養育費の増減について
決定後の養育費の金額については、双方の話し合いで合意ができれば金額について変更(増減)することはもちろん可能です。
話し合いで合意が取れない場合は、家庭裁判所へ調停を申し立てることになります。
ただし、調停では特別の事情がない限り、金額の変更が認められることは難しいようです。養育費については、離婚時に取り決めたとしても、きちんと支払われることが少ないのが現状です。
この不安を少しでも減らすために、「公正証書」による「離婚協議書」を作成するようにしてください。離婚の種類
離婚には4つの種類がありますが、基本的には双方の話し合いによる協議離婚です。
そして、夫婦間の話し合いで合意とならなかった場合に、2、3、4と進んでいくことになります。協議離婚
夫婦間の話し合いによって離婚に合意し、離婚の届出をすることで成立する離婚です。日本は離婚の90%がこの協議離婚によるものです。
調停離婚
夫婦間の話し合いが不調となった場合、次に家庭裁判所に離婚調停の申し立てを行い、調停員を交えての話し合いに移ります。
離婚に同意しているが、親権や養育費について話がまとまらない場合も調停を申し立てることができます。審判離婚
調停でも話がまとまらない場合、裁判所の独自の判断によって審判により離婚を成立させる場合があります。
ただし、この決定は異議申し立てにより効力を失うため、現状では審判離婚の例はほとんどありません。裁判離婚
調停及び審判でも離婚に合意しない場合、最終手段として家庭裁判所に離婚訴訟を起こし、裁判所の判決により離婚をする方法です。
ただし、裁判を起こすためには、下記に該当する離婚原因が必要となります。- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が三年以上不明なとき
- 配偶者の生死が三年以上不明なとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他、婚姻を継続し難い、重大な事由があるとき
なお、離婚原因があっても、いきなり裁判を起こすことはできません。調停前置主義といって、まずは調停による話し合いを行う必要があります。
和解離婚
裁判中に離婚に関して和解が成立した場合、裁判所の判決によらずに離婚することができます。これを和解離婚といい、和解調書が作成されます。
認諾離婚
裁判中に被告が原告側の請求を主張どおりに認めるとした場合、裁判所の判決によらず離婚することができます。これを認諾離婚といい、認諾調書が作成されます。
これは離婚することのみを決める裁判であった場合に認められるものであって、子供の親権や財産分与、慰謝料についての問題がある場合は認諾離婚とすることはできません。 この和解離婚と認諾離婚は、2004年に新設されたものです。
裁判となった場合にも、和解や認諾により裁判所の判決によらず離婚を成立させることができるようになりました。離婚届について
離婚届は、市区町村役場にてもらうことができます。
届出人双方が、署名、押印する他に、証人二名の署名、押印も必要となります。
(ただし、証人が必要なのは、協議離婚の場合のみです。)
証人は成人であれば誰でも構いませんので、両親、兄弟姉妹、親戚、友人などにお願いしましょう。お子さんがいる夫婦の場合は、届出に必ず親権者を記載しなければいけません。
親権者が決まっていない場合は、離婚届は受理されませんので注意しましょう。
親権についての詳細は、離婚に関する子供のことをご覧ください。提出は、原則婚姻中の本籍地の役場になります。
他にも、現住所地(別居している場合はどちらかの住民票の届出地でも可)でも構いませんが、本籍地以外に提出する場合には戸籍謄本の添付が必要です。他には、それぞれ以下の添付が必要となります。
- 調停離婚の場合:調停調書の藤本
- 審判離婚の場合:審判書の藤本と確定証明書
- 和解離婚の場合:和解調書の藤本
- 認諾離婚の場合:認諾調書の藤本
- 裁判離婚の場合:判決書の藤本と確定証明書
提出は持参する他、郵送や第三者による提出も認められており、双方は揃って届出に出向く必要はありません。
離婚届の不受理申出について
離婚届は記載漏れや記載ミスなど書類に不備がなければ受理され、離婚が成立します。
では、あなたが離婚届に署名、押印し相手に書類を委ねた後に離婚の意思がなくなった場合はどうなるでしょうか。
もしくは、相手が離婚届に勝手に二人の署名、押印をして提出するようなことがあるかもしれません。
このような場合でも、相手が離婚届を提出してしまったら、離婚は成立してしまいます。受理され、成立した離婚を「無効」とするには、裁判所へ離婚無効の調停の申し立てを行わなければなりません。
こうなると、時間も手間もかかるため、事前に不受理申立にて届出を出しておくのが良いでしょう。不受理申立とは、自分には離婚の意思がないので、相手がもし離婚届を提出しても、受理をしないでくださいという届出です。
一度提出をすると、最長6ヶ月間離婚届は受理されません。
6ヶ月後も引き続き不受理を希望する場合は、再度届出を提出してください。
有効期限内に不受理申出を取り消し、離婚届を提出したい場合は、取下書を提出すれば、離婚届を提出することができます。この不受理申出は、本籍地の市区町村役場に提出する場合は1通、本籍地以外の役所に提出する場合は2通必要です。
離婚を決めたら
離婚を決めたら、一刻も早く離婚をしたいと、何も決めずに離婚届を提出してしまう方がいらっしゃいますが、お子さんがいる場合の親権や養育費のこと、財産分与のこと、慰謝料のことなどをきちんと決めなかった、または口約束だけで決めたために、きちんと守られず離婚を後悔している方が多くいらっしゃいます。
後悔をしないために、離婚協議書を作成しておくことをお勧めします。
そして、この離婚協議書を公正証書にしておくことで離婚後に約束事が守られなかったときに、調停や裁判を行わずに強制執行の手続きをすることができるのです。公正証書とは
公正証書とは、法律の専門家である公証人が法律に従って作成した公文書のことを言います。
作成するためには、原則、公証役場へ赴く必要があります。
そして、公文書である公正証書は高い証明性、信頼性があるものですが、離婚協議書を作成する場合には、必ず「強制執行承諾約款」をつけます。
これは、債務者が債務の履行(養育費の支払いなど)が滞った場合に、直ちに“強制執行”(給料の差し押さえなど)に移ることを承認するという条項のことです。
これが無ければ、せっかくの公正証書も意味がないのと同じなので、絶対に忘れてはいけないことです。離婚協議書の作成
後々トラブルにならないためには、以下の5つは記載した方がいいでしょう。
- 子供の親権者を誰にするのか
- 養育費の金額や支払い方法について
- 子供との面会方法や回数などについて
- 結婚期間中に築いた財産の分配について
- 慰謝料の金額について