悪意の遺棄離婚

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総説

裁判上の離婚を、民法第770条は規定していますが、その1項「悪意の遺棄」を具体的離婚原因の一つとしています。

民法第770条
1項
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

  1. (略)
  2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき
  3. (以下、略)

「悪意の遺棄」の意義

この場合の「遺棄」とは、婚姻の本質的効果である、夫婦間の同居・協力・扶助の義務(民法第752条)、あるいは婚姻費用分担義務(760条)に違反する行為のことです。

これらの義務のうち、一つでも不履行があれば成立します。
実際には夫が妻子を放置して同居せず、婚姻費用も負担しないなど、義務違反が重なるケースが多いようです。

「悪意」とは、前記の各義務の不履行により、婚姻関係が破綻するかもしれないと知り、さらにこれを容認することを指します。
ただ、倫理的にも許されないような要素を含むとされています。

なお、悪意について、次のような裁判例があります。
「悪意とは、社会的倫理てき非難に値する要素を含むものです。
すなわち、積極的に婚姻共同生活を廃絶するという、害悪の発生を企図し、もしくはこれを認容する意思をいいます。」
(新潟地方裁判所判例 昭和36年4月24日)

同居義務違反

ところで、遺棄に該当する同居義務違反は、不当な同居義務違反の不履行に限られます。
当然ながら、職業上の理由や病気療養、その他正当な事由のある別居は該当しません。

当初は正当な別居であっても、生活費の送金を止めるなど、扶助義務違反や婚姻費用分担義務違反が加わると、遺棄と判断されることが多いでしょう。

次のような裁判例があります。
「妻が、夫と2児を残して突如家出をし、その後2年以上も行方不明である場合、同居義務違反が肯定されました。」
(京都地方裁判所判例 昭和25年8月17日)

協力義務違反

妻が、不貞行為をしたとしても、婚姻の破綻が、主として夫の異常性行為や暴行による虐待に起因する場合には、夫の協力義務違反として、妻の離婚請求を認容すべきである、とした裁判例があります。
(東京地方裁判所判例 昭和34年6月26日)

夫が、突然に家出をして消息不明となり、生活費の送金もない事例では、協力義務違反のみならず、同居・扶助義務違反も、認定しました。
(名古屋地方裁判所判例昭和49年10月1日)

扶助義務違反・婚姻費用分担義務違反

悪意の遺棄について多いのは、扶助義務違反ないし婚姻費用負担義務違反で、遺棄と認められる場合です。

夫が他女のもとに走り、妻子に生活費を送金しない場合は、特別の事情がない限り悪意の遺棄が認定されます。

精神病の夫を残し、実家に帰ったまま10年もの間、まったく顧みない妻について、夫を悪意で遺棄したと認定されました。
(岐阜地方裁判所判例 昭和31年10月18日)

扶助義務違反を否定した判例もあります。
妻が、夫の財産から多額の支出をし、妻の兄に与えるなどして、婚姻破綻の原因を作りました。この場合、婚姻破綻の主たる責任が妻にあるわけですから、夫が、妻を扶助しなくても、悪意の遺棄に該当しません。
(最高裁判所判例 昭和39年9月17日)

悪意の遺棄と民法第770条2項との関係

民法第770条
条2項
裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる

悪意の遺棄に該当する事例であっても、婚姻は破綻とはならず回復の可能性がある場合には、裁判所の裁量により、離婚請求を棄却することができます。

夫が妻子を遺棄していたが、十分に反省し妻子の生活費に足りる金員を送り続け同居を望んでいる場合、妻から悪意の遺棄を原因とする離婚請求は、棄却される可能性が高いようです。

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