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財産分与請求

2026年8月13日

財産分与の無効・取消し・撤回など

総説

財産分与の協議は、離婚に付随するとはいえ財産の移転ないし債務の負担という財産法上の効果を生ずるにすぎず、意思表示に関する民法93条から96条の規定が適用されます。

また、財産分与の合意や慰謝料の支払い約束が自由意思にもとづいたものでないときは無効です(仙台地方裁判所判例平成21年2月26日)。

もっとも、意思表示の効力に問題があっても、協議の無効または取消しを主張するのではなく、家庭裁判所に協議に代わる処分を申し立てることで処理される場合も少なくないと考えられます。

財産分与の無効

財産分与として金銭の支払いや不動産の譲渡などが行われると、財産分与義務の消滅という経済的利益が生じ、「資産の譲渡」にあたるとして、分与者に譲渡所得税を課すのが課税当局の立場であり、判例もこれを是認しています。

このことを知らずに、財産分与の協議を行なって自己の特有財産である不動産を分与した場合、分与者は財産分与の協議について錯誤無効の主張をすることができます(最高裁判所判例平成元年9月14日)、

ただ、分与者に対する譲渡所得税の課税という課税当局の取扱いは夫婦共同財産の清算的要素を軽視し、また分与額を低額に抑え、居住用財産の分与を困難にしているなど、学説の批判は強いようです。

なお、財産分与が無効とされても離婚そのものの効力には影響がないので、改めて財産分与の協議を行い、協議が整わない場合には家庭裁判所に協議に代わる処分を申立てることになります。

離婚から2年を経過したのちに財産分与が無効とされた場合には、問題が生じえます。

東京高等裁判所判例平成3年3月14日は、時効の停止に関する民法161条の類推適用を示唆しています。

民法161条
時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため第147条第1項各号又は第148条第1項各号に掲げる事由に係る手続を行うことができないときは、その障害が消滅した時から3箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

財産分与の取消し

詐欺(民法96条)による取消し

通説は、詐欺による財産分与の取消しを認めています。財産分与者の財産状態について詐欺があったときのほか、離婚原因に関して詐欺があったときも含みます。

ここでも離婚の効力には影響がないので、改めて財産分与について協議を行い、または協議に代わる処分を申立てることになります。後者の場合、除籍期間(2年)の問題が生じます。

詐害行為(民法424条)による取消し

債務者によるその配偶者への財産分与を、債権者が詐害行為として取消すことができるでしょうか。

財産分与は、「財産権を目的としない法律行為」にあたらず、債務超過の際の財産分与は、詐害行為取消権の他の要件を満たす限り、詐害行為として債権者による取消しの対象になるとする積極説があります。

これに対して、財産分与は、財産上の利益に影響を及ぼす行為であっても、債務者の自由意思に委ねられるべきであって、原則として詐害行為にあたらず、ただ、財産分与が不相当に過大であって財産分与に仮託された処分行為とみられる場合には、取消しの対象とする消極説があります。

最高裁判所判例昭和58年12月19日は、債務超過に陥った債務者が、所有不動産を財産分与として配偶者に譲渡した事案につき、次のように述べています。

分与者が債務超過の状態にあることやある財産を分与すれば、無資力になるということも、財産分与の額および方法を定める際に考慮すべき事情の一つにほかなりません。

相手方はなお相当な財産分与を受けることを妨げられないこと、そうであるとするならば、分与者がすでに債務超過の状態にあって、当該財産分与によって一般債権者に対する共同担保を減少させる結果になるとしても、それが不相当に過大であり財産分与に仮託された財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為として債権者による取消しの対象となりえないと判示しました。

すなわち、当該財産分与の詐害行為性を認めなかったのですが、この理は財産分与として金銭の定期給付をする旨の合意がされた場合(扶養的財産分与)についても妥当します。

そして、財産分与として金銭の給付をする旨の合意がされた場合において、不相当に過大で財産分与に仮託してなされた財産処分と認めるに足る特段の事情があるときは、不相当に過大な部分(超過部分)について、その限度において詐害行為として取消されます。

財産分与の相当性は、具体的な事案ごとに被分与者の寄与、離婚後の生活状態、分与者の有責性、婚姻期間などさまざまな事情を考慮して個別に判断されます。

また、離婚にともなう慰謝料の支払いの合意がされた場合、それは新たに創設的に債務を負担するものとはいえないから、詐害行為とはなりません。

しかし、当該配偶者、負担すべき損害賠償債務の額を超えた金額の慰謝料を支払う旨の合意がされたときは、その損害賠償債務の額を超えた部分については、慰謝料支払いの名を借りた、金銭の贈与契約ないし対価を欠いた新たな債務負担行為なので、詐害行為取消権行使の対象となりえます。

夫婦間の契約の取消権(民法754条)による取消し

夫婦関係が破綻に瀕しているような場合になされた夫婦間の贈与は取消しできず、754条は形式的にも実質的にも婚姻が継続する場合に限って適用されます(最高裁判所判例昭和42年2月2日)。

よって、離婚の届出前に夫婦関係が破綻に瀕している場合になされた贈与契約(実質的には財産分与契約)を、754条によって取消すことはできません。

書面によらない贈与の解除(民法550条)による撤回

財産分与の協議が書面によらなかった場合、書面によらない贈与として撤回をすることはできません。

財産分与契約は、離婚と不可分の関係において締結されたもので、離婚協議の一条項というべきであり、単純な贈与と同視すべきでないから550条の適用はありません(最高裁判所判例昭和27年5月6日)。

本記事作成:司法書士・行政書士 美馬克康

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