財産分与請求権の成立
財産分与請求権は、離婚という事実と夫婦財産の清算・損害賠償および離婚後の扶養のいずれかを成立させる事実が存在することを要件として、当然に発生するとしている学説が多いようです。
しかし、その具体的内容や額は、当事者の協議または協議に代わる処分(家庭裁判所による調停・審判)などで定めるとする確認説があります。
また、財産分与請求権の発生、価額または内容・方法は、協議または協議に代わる処分などによってはじめて形成されるとする形成説があります。
さらに折衷的に、財産分与請求権は離婚によって当然に発生するが、それは基本的抽象的請求権であり、協議または協議に代わる処分などによって具体的内容が決定されることを待ってはじめて具体的な分与請求権が生ずるとする段階的形成権説があります。
判例は、財産分与の権利義務そのものは離婚の成立によって発生し、実体的権利義務として存在するが、その内容は当事者の協議、家庭裁判所の調停・審判または地方裁判所の判決を待って具体的に確定すると判示しました(最高裁判所判例昭和50年5月27日)。
その後、最高裁判所判例昭和55年7月11日は、財産分与請求権が一個の私権たる性格を有するものの協議または審判などによって具体的内容が形成されるまでは、その範囲・内容が不確定・不明確であるとして段階的形成権説をとることを明らかにしています。
財産分与請求権の内容の決定
財産分与請求権の具体的内容は、当事者の協議、協議に代わる処分(家庭裁判所の調停・審判)または判決によって決定されます。
当事者の協議
離婚をする当事者は、その協議によって財産分与を認めるか否か、認める場合の額および方法などを決定します。
協議にあたっては、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮します。
協議によって財産分与をしないと定めることはできますが、協議しないという協議は財産分与請求権の事実上の事前放棄として許されないと解すべきです。
協議に代わる処分
当事者の協議が整わないとき、または協議をすることができないときは、当事者は家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができます。ただし、離婚のときから2年を経過したときは、請求はできなくなります。これは、除籍期間です。
当事者は、家事調停と家事審判のいずれの手続きも自由に選択して申立てることができますが、申立人が審判の申立てをした場合、家庭裁判所は調停に附することができます。
裁判所は、家事調停によるときも審判におけると同一の基準によって財産分与の判断をすべきです。調停が成立したときは、確定審判と同一の効力があります。
調停が成立しないときは、家事調停事件は終了し家事審判によって決定します。この場合、家事調停の申立てのときに審判の申立てがあったものとみなされるので、調停の申立てのときまでに離婚のときから2年を経過していないことを要します(第768条2項但書)。
財産分与の審判の申立ては、分与を求める額および方法を特定して申立てることを要せず、単に抽象的に財産分与を求める旨の申立てをすれば足ります。
財産分与に関する処分は、財産分与請求権という実体的権利の存在することを前提として、家庭裁判所が当該事案における諸般の事情を考慮して後見的立場から、合目的見地で裁量権を行使して分与をさせるかどうか、分与の額および方法などの具体的内容を訂正する非訟事件の裁判です。
よって、たとえ具体的な分与の額や方法を特定し申立てても、家庭裁判所はそれに拘束されることはなく、その決定は広く家庭裁判所の裁量に委ねられます。
家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか、ならびに分与の額および方法を定めます。
分与の額を定めるにあたっては、必ずしも金銭をもって額を定める必要はなく、金銭以外の財産をもって定めてもよいです(住宅の賃借なども命じうる)。この場合には、分与すべき財産を特定すれば足り、その評価額まで判示する必要はありません。
財産分与の審判が確定したときには、執行力ある債務名義と同一の効力を有します。
附帯処分の申立て
裁判所は、当事者の申立てがあれば、離婚の訴えにかかる請求を認容する判決において、財産の分与に関する処分(附帯処分)についての審判をしなければなりません。
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