財産消滅の可能性
財産分与の結論が出るには時間がかかります。その間に、夫婦の一方が勝手に財産を処分してしまうと、決定が下ったときには、分与すべき財産がなくなっているという事態が起こりかねません。また、一方が求めている財産を、もう一方がわざと売却して困らせる、といったこともありえます。
それを防ぐ仕組みが保全処分というものです。保全処分とは、「本来の状態を、そのままに保ちなさい」と裁判所が命令することです。
財産分与では、財産を仮差押・仮処分をし、相手が勝手にいじられないようにします。
どのような財産を保全したいかは、申立てる側が指定しますが、相手が生活できなくなる場合は、財産の処分はできません。次のような場合は、保全処分を行うのが妥当でしょう。
- 相手が財産の名義を勝手に移そうとしている場合
- 相手が預貯金をおろして隠そうとしている場合
- 分与される財産を勝手に売ろうとしている場合
申立てにより財産を保全する
財産保全の方法は、以下のとおりです。
- 調停がはじまる前に調停員会に申立てる
離婚調停あるいは財産分与請求調停を申立てた時点で、調停委員会の権限で保全の仮措置が行えます。しかし、強制執行力はなく、実際にはほとんど行われていない方法です。 - 審判前の保全処分を申立てる
家庭裁判所に財産分与などを請求する審判を申立てたときに、同時に申立てます。この審判では、保全処分の緊急性や必要性などが審理されます。申立てが認められると、家庭裁判所が仮差押・仮処分などを命じます。 - 調停とは別に民事保全を申立てる(いつでも可能)
相手が財産を隠している証拠があれば、いつでも地方裁判所に申立てることができます。この手続きを行うときは保証金を支払うことになります。高額な財産を保全してもらうとそれなりの金額がかかりますから、注意が必要です。このお金は財産分与の処分が確定すれば戻ってきます。
財産を開示させる制度
強制執行により、相手の財産を差し押さえるにあたっては、対象となる財産の内容を特定する必要があります。しかし、相手の財産を具体的に知ることは非常に困難です。裁判所で命じられても、現実には差し押さえできないケースも多々ありました。
こういった問題を解消するために、2020年4月から改正民事執行法が施行され、差し押さえを容易にする制度が整えられました。内容は、①財産開示手続きの改正と、②情報取得手続きの新設、の2つです。
財産開示手続きは、相手を裁判所に呼び出し、保有している財産を開示させる制度です。この制度自体は、以前からありましたが、裁判所からの呼び出しに応じなかった場合や、陳述拒否、虚偽の陳述をした場合の罰則が30万円以下の過料と安く、あまり活用されていないことが課題となっていました。
今回の改正により、罰則が強化され、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が課される(刑事罰)こととなりました。
また、申立てができる人の範囲が拡大されて、調停調書や判決書だけでなく、公正証書をもっている人でも可能となりました。さらに、相手の住所がわからない場合には、公示送達が認められました。
預貯金や給与の情報を知る方法
情報取得手続きは、新設された制度であり、財産情報をもっている第三者を通じて、相手の財産情報を取得するものです。
預貯金や株式などの財産を差し押さえたい場合は、調べてほしい金融機関を特定することで、裁判所から金融機関に照会が行われ、口座番号や金額などの情報提供を命じることができます。
相手の給与を差し押さえたい場合は、財産開示手続きを行なったうえで、裁判所を通じて市区町村や日本年金機構、厚生年金の実施機関に対して勤務先などの情報の提供を命じることができます。
この給与情報の取得を申立てることができる人は、限られています。養育費や婚姻費用などの請求権をもつ人と、生命・身体への侵害を理由とする損害賠償請求権をもつ人です。生命・身体への侵害を理由とする損害賠償には、慰謝料も含まれます。また、損害にはPTSDになったなどの精神的損害も含まれます。
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