趣旨
婚姻により、夫婦の一方はその氏を他方の氏に改めるので、夫婦は同じ氏を称し、同一の戸籍に入ります。
しかし、離婚による婚姻関係の解消により、婚姻の効果は失われ、婚姻前の状態に復することになるので、婚姻によって氏を改めたものは婚姻前の氏に復し、原則として婚姻前の戸籍に戻ります。
旧法では、氏は家の呼称であり戸主および家族(戸主の親族でその家にある者およびその配偶者を指します)は、その家の氏を称しました。
妻は婚姻によって夫の家に入ったので、夫の家の氏を称しましたが(家を同じくすることによる夫婦同士)、離婚すると妻は実家に復籍したので、実家の氏に復しました。
現行法は、旧法と結果を同じくします。
離婚の日から3か月以内に届出ることによって離婚の際に称していた氏を称することを認めた規定が、1976年の民法改正により新設されました。婚氏続称といいます。
婚姻により氏を改めるのは妻であることが多く、離婚復氏により、主として妻に生ずる不利益や不都合(同居する母子間で氏が異なることや婚姻後の氏による社会的活動への影響など)を避けるため、氏の変更の手続きによらずに戸籍法上の届出により離婚の際に称していた氏を称することができるようにしたものです。
離婚による復氏
離婚によって復氏をするのは、婚姻によって氏を改めた夫または妻です。
復氏によって称する氏は、婚姻前の氏です。婚姻前の氏とは婚姻直前の氏をいい、婚姻前に称した氏の総称ではありません。
ただ、婚姻中の身分行為により潜在的に氏が変更された場合には、婚姻直前の氏に復するとはいえないことがあります。たとえば、婚姻の際に氏を改めた者が婚姻中に単独で養子となった場合には、婚姻中は養親の氏を称せず、夫婦の氏を称しますが、この者は離婚により養親の氏を称することになります。
また、養子が婚姻し離婚後に復氏する場合には、養方の氏に復しますが、婚姻中に離縁していると離婚後に復氏する氏は養子縁組前の氏です。
婚氏続称
意義
離婚により復氏した者は、離婚の日から3か月以内に戸籍法77条の2に定める届出をすることによって、離婚の際に称していた氏を称することができます。
離婚復氏の原則を維持しつつ、あらためて別個の届出により離婚の際に称していた氏と同一の呼称の氏に変更できるとするもので、家庭裁判所の審判を要しない氏の呼称の変更です。
要件
離婚の日から3か月以内に離婚の際に称していた氏を称する届出をしなければなりません。
この届出をする者は、離婚によって復氏する者(またはした者)です。
離婚の日とは、協議離婚の場合は届出の日を、裁判離婚の場合には裁判が確定した日(調停の場合には調停の成立した日)を指します。
称する氏
この届出によって称することのできる氏は、離婚の際に称していた氏、すなわち婚姻中に称していた最後の氏です。したがって、婚姻中に養子縁組などの身分行為や戸籍法107条1項により、氏が変更されたのちに離婚する場合には、その変更後の氏を称することになります。
戸籍法107条1項
やむを得ない事由によつて氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、氏及び氏の振り仮名を変更することについて家庭裁判所の許可を得て、その許可を得た氏及び氏の振り仮名を届け出なければならない。
戸籍法107条1項との関係
離婚の際に称していた氏を称する届出をしたのちに戸籍法107条1項により婚姻前の氏への変更を求める場合、同項にいう「やむを得ない事由」を通常の場合よりもゆるやかに解すべきでしょうか。
この件に関しては、肯定する学説・裁判例が主流を占めているようです。
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